異世界から来たガイア 39
第39章
ガイア
本当に、くたくた。
近くにあるこの大きな浴槽に入る気力さえ、まだ湧いてこないほどに。
今日一日だけで、あまりに多くの出来事と感情に満ちていた。命がけの戦い、まるで本当に魔法の力があるかのように私を称える兵士たち、マリクの死を聞かされた時の目の前が暗らむような絶望、そして彼を再び見つけた時の喜び。けれど考えれば考えるほど、彼へのこうした想いが、警報のように頭の中で鳴り響く。
まったく、カラアルが香油で背中をマッサージしてくれているというのに、寝台の上で完全にリラックスすることさえできない。
幸いなことに、今回はどこも怪我をしていなかった。あちこちぶつけた程度。本当に運が良かった。本当にイシュダーが守ってくれているのかもしれない。
いずれにせよ、私の居場所はここじゃない。もうすぐ18歳になる女の子には危険すぎるし、怖すぎる。私の死を望む人間が多すぎる。それに、いつだってマリクという「危険」がつきまとう。今日感じた感情は何かを意味しているけれど、それが気に入らない。あまりに強烈な警報だ。私は家に帰れなくなるかもしれないなんて、一瞬たりとも考えなかった。ただ、もう二度と彼に会えなくなることだけを考えていた。
どうせあと数日もすれば会えなくなるのに、死んでいるのと生きているのとでは、天と地ほどの差がある。そのことに気づきながらも、まだ別の何かがあるのではないかと怖くなる。
そんなの全然嬉しくない。きっと、ひどく苦しむことになる。この世界から持ち帰る一番深い傷は、剣でつけられるものじゃない。マリクによって刻まれる傷だ。
彼を基準にしてしまったら、他の男の子なんてみんな消えてしまう。ああ、前にデートしていた男の名前さえ、もう思い出せない。
マリクのせいで、頭がおかしくなりそう。これだけは確かだ。
彼と一緒にいられるのは、あと数時間。その後は家族の元へ帰り、しばらくは恋愛も弓を引くことも、もう真っ平だ。
それに、ここで起きたことを誰にも話せないということも覚悟しなきゃいけない。さもないと、一生精神科をたらい回しにされる。
戻ったあとの言い訳なんてまだ考えていないけれど、宇宙人に誘拐されたと言うほうが、今の現実よりよっぽど信じてもらえそうなことだけは分かっている。
カラアルが首筋を揉みほぐしてくれる。「あとで、髪も洗われますか?」
「ええ、お願い。」きっとひどい状態だわ。
「卵黄もあります。赤い髪には良いと聞きましたわ。」
結局、オイルと卵で、私はマヨネーズで洗われているようなものだ。足りないのはレモンくらい。でも彼女はずっとこの仕事を続けてきたのだから、信じるしかない。「いいわよ。」
「それに今夜はようやくマリク様と過ごせるのでしょう。今のうちに休んでおかれたほうがよろしいですわ。」
そう、私たちの最後の夜。あの「制約」さえなければ、どうなるかなんて迷う余地もない。きっとマリクも私と同意見なはず。絶対に後悔すると分かっているのは、マリクと愛し合わなかったこと。彼がただ美しいからだけじゃない。彼の優しさ、触れ方、そしてただ存在しているだけで私を震わせるあの感じ。彼のように私を欲情させてくれる人なんて、もう二度と現れない気がする。
「ありがとう、カラアル。」
「どういたしまして、閣下。」
「ううん。世話をしてくれたことにお礼を言いたいの。ただ義務だからじゃなくて、なんというか、愛情を持って接してくれたことも分かっているから。」
「申し上げたでしょう、閣下。あなたはマリク様を救ってくださる。そんな方を慕わずにいられましょうか? それに、あとのことはあなたご自身の心根ですわ。」
「あなたが知らないかもしれないことが、一つあるの。」
「お聞かせください。」
もう決めた、言わないわけにはいかない。「私にとって、ここで過ごす夜は今夜が最後になるわ」
カラアルが私の髪に指を差し入れる。その手は濡れていて、油が馴染んでいた。彼女は痛くないよう優しく髪を一房ずつ引き、何も言わなかった。
「つまり、明日ハトゥシャに戻ったら、私は自分の世界……家族のところへ帰るということよ」
「そして、もう二度とお会いすることはない。存じております。マリク様もそのことを隠してはおられませんでした」
「あなたと別れるのは寂しいわ」
「私もです。結局のところ、私はあなたのことが好きですから。あなたは、お母様を亡くされて以来マリク様が身に纏ってきた鎧を、揺り動かしているお方です」
「どういう意味?」
「あの方が常に多くの女性を側に置いていることはご存知でしょう? ザナンザ様のようなタイプではなく、もっと刺激や冒険を求めるような……それでいて、決して深入りはしない関係を」
「ええ、いろんな人から聞いたわ」
「ですが、あなたが来てからは、あの方は他の誰一人として求めてはおられません。断言できます、ただの一人もです」
「側室を娶ったばかりだから、行儀よくしていなきゃいけないんでしょ」
「いいえ。私はそうは思いません」彼女は私の頭皮をマッサージする。本当に指使いが巧みだ。「あなたなのです、閣下。あなたが、他の女たちを皆、価値のないものに見せてしまったのです。あの方の時間や関心を向けるに値しない存在に」
「それはいくら何でも言い過ぎよ」
「お二人の間にある惹かれ合いを否定なさるのですか? 誰の目にも明らかなのに」
「いいえ。それは否定できないわ」……まったく、バレバレなのね。「でも、それ以外に共通点なんてほとんどないもの。同じ理想を持っているわけでもないし」……ありえないわ、住む世界が違うんだもの。
「閣下は戦争がお好きですか?」
「いいえ。あんなの、恐ろしいだけよ」
「平和な時代を望み、国同士が戦うのではなく対話することを望まれますか?」
「ええ、もちろんよ」
「それがマリク様の夢なのです。あの方は皇帝となり、ドゥルカン帝国を誰もが恐れる強国にしようとしておられます。あらゆる紛争を抑止し、平和な時代を保証するために」
「そんな話、一度も聞いたことがなかった」……私は感銘を受けた。それは途方もなく野心的だが、正しい目標だ。
「さらにあの方は、貧しい人々の暮らしを向上させたいとも考えておられます。私の見聞きした限り、その点でもあなた方には共通の理解があるはずです」
「ええ、当然よ」
「ですから、私の浅はかな意見ではありますが、今のところあなたこそが次期皇后に最も相応しいお方だと思っております」
私は笑った。突飛すぎる話だ。「悪いけど、それは不可能よ。私にはそんな大役は務まらない。向いていないし、そもそも……ここは私のいるべき場所じゃないの」
「左様でございますか」
カラアルはそれ以上追求せず、黙って私の髪を洗い続けた。
どれだけマリクに情が移り、カラアルやイヌアのような人たちのことを大切に思うようになっていても、ここには残れない。家族の元へ帰らなきゃ。ママもパパも、私に何が起きたか分からなくて、きっと打ちひしがれている。学校を卒業して、大学を選んで、もしかしたら運良くオリンピックにだって出られるかもしれない。
あと数日もすれば、それが再び私の人生になり、私の現実になる。
旅を終えて、泉に身を沈めれば、これらはすべて終わる。
マリクと結婚して皇后になる夢を見ることはできるけれど、現実には決してなれない。そう、時々見るだけの、ただの夢。
マリクにはもっと相応しい女性がいるはずだ。彼の夢を真に理解し共有できる、それを実現するために必要な威光を与えられるような女性が。
カラアルが手鉢で手を洗った。「閣下、終わりました。もう少しお休みになっていてください」
「わかったわ」私はほんの一瞬だけ、目を閉じた。
***
一本の指が、腰から始まってうなじの方まで私の背中を滑っていく。ちょっと「何?!」私は飛び起きた。
「こんばんは、美しい人」マリクが私の隣にいた。半裸で、腰に布を巻いただけの姿で、片手を私の背中に置いている。私の体は腰のあたりに布を当てているだけだった。
「マリク、どうしてここにいるの?」
「裸やそれに近い姿を見られても、もう恥ずかしがらなくなったな。いい兆候だ」
「その段階はもうとっくに過ぎた気がするわ」
マリクは私を露わにし、その布を目の前でひらひらさせた。「なら、これはもう必要ないな」
私はそれを取ろうと手を伸ばす。「返して」
マリクはそれを遠ざけた。「いや、返さない」彼はそれを背後に投げ捨てた。そしてまた、私は彼の前で裸になる。
「でも、さっきの質問に答えていないわ」
「お前がなかなか戻ってこないから、様子を見に来たんだ。カラアルが動揺しているようだったしな。彼女がお前のところを去ってから、かなりの時間が経っている。何かあったのか?」
最後に本当に眠り込んでしまったみたい。「彼女に、行かなきゃいけないって伝えたの」
「だろうな。言わないわけにはいかなかっただろう」
「ええ」
「初めてお前を俺の家へ連れてきた時から、彼女には最初からそう言い含めてあった」
「じゃあ、私が残らないことは分かっていたはずなのね」
「現実は、それが気に入らないものであるほど、受け入れるのが難しいものだ」
「そうね」……それはカラアルのことだけじゃない。きっと彼自身のことも、そして結局のところ、私のことも言っているのだと思う。
「だが約束した通り、お前を家へ送り届ける」
「ありがとう」涙が目に溢れた。ただ喜ぶべきことなのに、どうしても悲しさがこみ上げてくる。
「目を閉じろ」
「どうして?」間違いなく何か企んでいる。
「いいから閉じろ、俺を信じろ」
「まあ、私の意志に反して戦争に連れて行かれるより酷いことはされないでしょうしね」
「戦場にはかなりうまく適応しているように見えたがな」
「本当は大嫌いよ。なくなればいいのに」
「俺もだ。だが、自分を欺くことはできない」
「カラアルが言っていたわ。あなたは平和な時代を望んでいるって」
「ほう、そうか?」
「ええ。夢としてとても尊敬しているわ。私の意見なんて大した意味はないかもしれないけれど、私も同じ気持ちよ。特に、戦うことがどういうことか身をもって知った今は」
マリクは顔が私と同じ高さになるまで身を低くした。
私たちは互いの瞳を覗き込む。最初は疑念や、私の方には少しの軽蔑さえあったけれど、今はそこには賞賛と愛情がある。かつての彼にとって、私はただの赤い髪をした異国風の女だったかもしれないけれど、今の彼にとって、私はそれ以上の存在だ。
そして、その「それ以上の存在」であるという事実こそが、私たちを苦しめることになる。
マリクは私の髪を持ち上げ、額に口づけをした。「なら、そう思っているのは俺だけではないということだな」
「ええ」
「だが今は目を閉じろ」
「私を浴槽に放り込む気?」
「この俺がか? まさか」彼は笑った。
どうなるか分かっていながら、私は目を閉じる。
きっと私と一緒に湯浴みをするつもりでここに来たに違いない。それに、もし彼がそうしようとしなかったら、どこか寂しく感じていたはずだ。
マリクが私を抱き上げる。
彼は上半身裸で、私はその首に片腕を回し、もう片方の手で彼の下半身を確認する。こちらも裸だ。
「覗き見するなよ」彼は注意する。
「してないわよ」
マリクが跳んだ。
私は目を閉じたまま。
水はひんやりとしていて、一瞬で意識が冴え渡る。
私たちは抱き合ったまま、一緒に水面に浮かび上がった。
マリクの髪は顔に張り付き、まるで黄金の兜のようだ。整えられた髭は、前よりも短くなっている。
私は彼を撫でた。その髭が少しだけチクチクする。「水に放り込まないって言ったじゃない」
「ああ。二人で一緒に飛び込んだんだ」
私はわざと拗ねたような顔をする。彼はまだ私を腕の中に抱いていて、私も降りるつもりなんてさらさらなかった。
マリクが口づけをする。私たちは唇と手で互いを愛撫しながら、ゆっくりと動く。
私の手は彼の首と顔を包み込む。
彼の手は私の背中とお尻を支えている。
熱い感覚が弾け、全身に広がっていく。
こんな男を置いていかなきゃいけないなんて、あんまりだわ。
少し落ち着かなきゃ。そう、本当は落ち着きたくないけれど、冷静さを取り戻さなきゃ。
私は身を離した。まだ、彼からちゃんと聞けていないことがある。「裁判がどうなったのか、まだ詳しく聞いていないわ」
「あとでゆっくり話してもいいだろう」
「でも、どうやって私の無実を証明して、あの上着まで取り戻してくれたのか、知らないままなのは嫌だもの」馬車の中で彼が話してくれたのは、それだけだった。
マリクはすべてを語ってくれた。皇后が約束を半分しか守らなかったこと、タロムの果たした役割、ザナンザの怒り、そして四人が協力してチャネイとその夫を有罪に追い込んだ経緯を。マリクは二人が死刑になることを確信していたが、その事実は私を悲しくさせた。彼らの罪がどれほど重くとも、私は死刑を解決策として受け入れることができなかったが、それをマリクに伝えることはしなかった。
「ありがとう、マリク。あなたたちがしてくれたこと、すべてに感謝するわ」
「お前は奇跡を起こしたんだぞ。俺たち四人が同じ目的のために協力したことなど、記憶にない。……まあ、もっとましな状況で実現してほしかったがな」
「ええ。でも、結局のところ彼女はあなたの妹だったんですものね」彼がどんな思いでいるのか、私には想像もつかなかった。
「とっくに、あいつを妹とは見なさないと決めていた。誰よりもエンラーの影響を強く受けていたからな」彼は指先で私の太腿の内側をなぞった。「だが、もうこんな話はやめよう」
「あなたがそうしたいなら」今度は、私の方から彼に口づけをした。




