異世界から来たガイア 38
第38章
ガイア
マリク? じゃあ、生きてるんだ。
涙を拭うけれど、私はまだ地面に座り込んだままだ。「本当に無事なの?」
「はい、戦車でこちらへ向かっています。失礼します」兵士が濡れた布で私の顔を拭ってくれる。押しつけないように丁寧で、慎重だ。まるで、すぐに壊れてしまう人形を扱うみたいに。
誰も何も言わない。今日は助けられてばかりだ。最初は戦場で、今は、マリクの前でボロボロの姿を見せないよう、私の欠片を繋ぎ合わせてくれている。
あと少し。もうすぐ彼に会える。「どこにいるの?」待ちきれない。
彼らは、戦場を移動しているマリクの旗印を指差した。
「どうして生きてるって言えるの?」
「閣下、もし亡くなられていれば、旗は下ろされていますし、動きもしません」
じゃあ、もしかしたら怪我をしているのかも。重傷を負っていて、だから死んだと思われていたのかもしれない。
私は体を起こす。
年配の兵士が、助けようと手を差し出してくれる。
その手を取る。「ありがとう。親切にしてもらって」まだ足元はふらついているけれど、私は再び立ち上がる。
他の二人のうちの一人が、地面に唾を吐いた。
「閣下の前で何をしている」年配の兵士が彼を咎める。
「歯が抜けたんだよ」
「なら、そんな不作法な真似をするより、いっそ飲み込んでしまえ」
「次はそうするよ」
「お許しください、閣下。近頃の若い者は礼儀を知らなくて」
「いいのよ、気にしないで。もっとひどいのも見てきたから」それに今は、マリクに会うことしか頭にない。数歩踏み出すが、よろけてしまう。さっきのパニックで、すっかり力を使い果たしてしまった。
「最後にもう一つお願いがあるの」
「なんなりと、閣下」
「王子のところへ連れて行って」
「ご安心ください」歯の抜けた兵士が私を安心させるように言う。「もうすぐあちらから来られますから、その必要はありませんよ」
「バカ、お前は女の気持ちってものが分かってないな」ずっと黙っていたもう一人の兵士が彼を叱る。「閣下は一刻も早く王子に会いたいんだよ」
私は微笑む。
「お供いたします、閣下。いつでも準備はできています」
三人の兵士に守られながら、平原を歩く。誰も話さないし、私も彼らのことは気に留めない。頭にあるのはマリクのことだけだ。周囲には横たわる死体、捨てられた武器や盾が散乱している。一歩進むごとにその惨状に胸が締め付けられるけれど、それでも進む。彼に会わなきゃいけない。確かめなきゃいけないから。
彼がいなくて、本当に寂しかったから。
たった二日ほどのことなのに、一週間くらい経ったような気がする。
兵士たちがマリクを称える声を上げる。
私は死体に足を取られた。
付き添いの兵士が支えてくれた。彼は私に微笑みかけるが、何も言わない。
「ありがとう……」私は囁く。感情があふれ出し、一人きりで眠れぬ夜を過ごした疲れがどっと出た。本当に一人きりで、自分はどうなるのか、彼はどうなってしまうのかという不安に置き去りにされていた。
戦車が旋回し、兵士たちの群れの向こうに姿を現す。
キクが操る戦車の上に、彼はいた。兜の隙間から髪がはみ出し、髭も少し伸びたようだ。生きている。そして、無事だ。
「マリク……」呟く。
私は走り出す。どこにそんな力が残っていたのか自分でも分からない。
マリクは戦車が止まるのも待たずに、そこから飛び降りた。
私に向かって走ってくる。
私たちは道の真ん中で出会い、彼は私を腕の中に受け入れた。
血に染まった鎧のことなど気にせず、私は彼の胸に頭を預ける。「マリク……死んだと思ってた」
「殺されかけたが、私はまだここにいる」彼は私の髪を優しく撫でた。
目を閉じ、深く息を吸い込む。いつもの彼の匂いは、砂埃と馬の臭いにかき消されていた。「怖かったわ」
「私もだ。お前を失うのが。なぜ戦うなどと決めたのだ?」彼は怒っているのだろうか。
私は彼をより強く抱きしめる。「一人だったから……気が狂わないように、街で手伝いを始めたの」
「そのようなことは兵士の役目だ」
「自分だけが甘えているようで。あなたがいない間、不安と焦燥に苛まれていたの」
「私がここにお前を置き去りにするとでも思ったか?」
そんなこと、一度も思っていない。「あなたが、何か酷い目に遭わされるんじゃないかって、そればかり考えていたの」
彼はもう一度私を撫で、指に一房の髪を絡ませる。「安心しろ。むしろ心配なのは私の方だ。たった二日目を離しただけで、命を懸けて剣を振るうお前を見つけることになるとはな」
「言ったでしょう、気が変になりそうだったの。何かしていなきゃいけなかった。だから見張りの当番をしたり、手伝う口実で新兵と訓練したりしたのよ」
「そんなに私が恋しかったか?」
私は彼の目を真っ直ぐに見つめる。そこにあるのは怒りではなく安堵の色だった。彼もまた、ひどく疲れている。「ええ」頬が熱くなる。「とても」
マリクは私の顎を捉え、口づけをした。
優しいキスだった。どちらも舌を使おうとはしない。ただ「寂しかった」と伝えるための、純粋な口づけ。無事でよかった、元気な姿を見られて嬉しいという。温かくて、生きていて、確かな実感を伴うもの。
二人ともここにいて、どうにか無事でいる。
マリクが唇を離す。「それにしても、戦うのは避けられたはずだ」
「私も衛兵の一員だったのよ。拒否なんてできなかったわ」
「拒否すべきだった。もしお前に何かあったら、私はどうすればよかったのだ?」彼の瞳には、心配だけではない別の感情が宿っていた。
「それは私だって同じよ」
「それは違う。私の役割だ」
「でも私、戦いの前に演説までしなきゃいけなかったんだから」
「本当に?」
私は頷く。「矢を射るよりも、あっちの方がずっと怖かったわ」
マリクが笑う。「どちらにせよ、訓練が役に立ったというわけか」
「慣れないままでいたいこともあるわ」
彼は私の頬を撫でる。「私も、お前がこんな危険な状況に慣れることなど望んでいない」
私は彼の胸に頬を寄せた。「怪我はないんでしょう?」
「かすり傷だけだ。お前は?」
「私も同じ。運が良かったし、たくさんの人が助けてくれたから」
「彼らもか」
「ええ……あなたが死んだと聞いた時、私は……」
「もういい、大丈夫だ」彼は私の背中を撫でる。その手の感触が愛おしく、鎧越しにさえ感じ取れる気がした。
「皆に心から感謝する。必ず褒美を取らせよう!」マリクが、私を助けた三人の兵士に向かって叫ぶ。
「陛下、このお方は真に素晴らしい女性でございます」老兵が、恭しくも大きな声で言った。
今更ながら、何百人もの人々に囲まれていることに気づく。
戦いが終わった今、勝者たちは敗者に止めを刺し、捕虜を連行している。
ジル・ロムが近づいてきた。片腕には血が滲んだ布が巻かれている。
彼は兜に拳を当てる軍礼を私たちに向けた。「陛下、我らは全力を尽くして閣下をお守りいたしました」
「お前が衛兵隊長か?」
「はっ、陛下」
「なぜ女が戦うのを止めなかったのだ?」
ジル・ロムが私を見る。言葉を慎重に選んでいる。
「マリク」私は割って入る。「彼のせいじゃないわ。むしろ止めようとしてくれたの」
「本人から聞きたい。お前が危険に晒されたのであれば、それは彼の責任でもある」
なぜそんな態度をとるのか理解できない。ただ全てがうまくいったことを喜んで、残りのことは気にしないでいられないのだろうか。
「陛下」声のトーンは決然としていた。「私は閣下をお止めしようといたしました。そして今日の戦いにおいても、我ら全員で閣下をお守りいたしました。安全を確保するため、全力を尽くしました。しかしながら」
それ以上言わせてはダメだ。言い訳のように聞こえてしまう。「マリク、悪いのは私なの。彼じゃないわ」
マリクは耳を貸さない。
「しかし陛下、ガイア閣下は、愛の女神のみならず戦の女神でもあるイシュダーによって遣わされたお方です。我らには閣下をお止めすることはできませんでした。そして今回の勝利は、閣下の存在とその祝福のお力があったからこそなのです」
彼は、私が常に階級を盾に彼を押し切っていたことには触れず、何とか自分の責任を果たそうとしてくれた。
マリクは微笑んだ。「感謝する。幸い今日は最善の結果になった、少なくとも我々にとってはな。負傷者を回収し、治療に当たれ。死者を埋葬する者たちを残し、その後は、お前が自ら捕虜を街の牢へ連行してほしい」
「はっ、陛下」
ジル・ロムは再び敬礼した。「閣下と共に戦えたこと、光栄でした」
私は目を丸くした。彼に認められたんだ。「ありがとう。私も同じ気持ちよ」
彼はためらう様子もなく、命令を遂行するために立ち去った。
「良い兵士だ」マリクが断言するように言った。
「そう思うわ。私にもよくしてくれたし」
「よくしすぎたくらいだ」
「どういう意味?」
彼は私の額に口づけた。「気が狂いそうで見張り番を始めたと言っていたな。彼は衛兵隊長として反対することもできたが、お前の命令には逆らえなかった。何と言っても、お前は皇族の一員なのだからな」
「そうね」
「だから彼は、他の兵士たちの前では体裁を保ってお前を特別扱いせず、同時に危険を最小限に抑えるよう取り計らったのだ。お前が戦場にいると知って、彼がどれほどの不安を感じたか想像もつかないな」
私が最前列にいたことは、まだ知らない方がいいだろう。少なくとも今は。「私の演説の後、兵士たちを鼓舞したのは彼よ。祝福の話を匂わせるように提案したのも彼だし」
「非常に賢いな」マリクは頷いた。「そうやって軍の士気を高め、同時にお前を満足させたわけか」
「褒美をあげるべきよ」
「そうだな。だが、お前も褒美に値するのは間違いない」
息をつく暇もなく、彼は激しく私に口づけをした。
今度のキスはさっきよりもずっと情熱的で、唇がぴたりと重なり、彼は私を強く抱きしめた。まるで、私が腕の中から滑り落ちてしまうのを恐れているみたいに。
私は夢中で応えた。彼の首に腕を回し、指先を兜の縁に滑らせる。もう片方の手はさらに下へ、彼のお尻にそっと触れた。誰に見られていても構わなかった。
マリクの舌が私の口内へ入り込む。
私たちは貪るように互いを味わい、触れ合い、このキスの中に身体が溶けていくようだった。
マリクが支えてくれていなければ、足がもたなかったと思う。
「イシュダー!」
放っておいて。今は、彼とのキスを堪能させて。
ああ、心の中で「彼氏」って呼んじゃった。自分でも信じられない。あと二日、もしかしたらそれ以下で、私はここを去らなきゃいけないっていうのに。
マリクが舌を引いたけれど、私は承知しなかった。
今度は私の方から舌を差し入れる。
全身が熱い。こんな不釣り合いな場所で、こんなキスをするなんて。でも構わなかった。今はこれでいい。
「イシュダー!」
再び叫び声が響く。でもそれは私を呼ぶ声というより、祈りのように聞こえた。
マリクが唇を離した。私の唇を軽く噛む。その瞳には、もう見慣れ始めた欲望の炎が宿っていた。あの甘噛みは、あとで続きをしようという合図のようだった。「兵士たちが君を称えているぞ」
私は世界のことをすっかり忘れていた。
周囲では兵士たちが私たちを見つめ、まるで新婚夫婦のキスを見守る招待客のように歓声を上げていた。
なんて最悪な例えだろう。私たちの運命は、その真逆だというのに。
冷たい何かが胸を締めつけ、息が詰まった。
明日が最後の日。そして今夜が、最後の夜。
「イシュダー! イシュダー!」歓声は続く。
「彼らに祝福を与えてやったらどうだ……」マリクが囁く。
「どうやって?」ローマ教皇みたいにすればいいの?
「見本を見せてやろう」マリクは軽くキスをして離れると、両手の人差し指と中指を唇に当ててからキスをした。なるほど、そこまでは分かった。それから彼は腕を伸ばし、指先を群衆に向けた。
兵士たちがどっと沸く。
私も彼の真似をした。
「帝国で最も素晴らしい側室だ!」誰かが叫ぶ。
「なんだかファンができたみたい」私はマリクに微笑んだ。
「ファン?」
しまった。そういえば、彼はこの言葉を知らないんだ。「ええと、追随者というか、自分を尊敬してくれたり憧れてくれたりする人たちのこと」歌手や俳優に例えられる存在がいるのかは分からないけれど。
「なんとなく分かった気がする」
街への帰還は凱旋そのものだった。私とマリクはキクの操る戦車に乗って進む。背後では兵士たちが家族や友人の群衆に手を振っていた。想像していたような厳かな軍隊の姿ではなく、まるで仮装カーニバルの参加者のようだった。冗談を言い合い、歌い、時には市民と一緒に踊っていた。
ヴェルパの市民の損害は極めて少なかったため、街全体が祝祭ムードに包まれていた。
それでも私は、何度も後ろを振り返ってしまう。
目の前の光景が、どこか不安で恐ろしかったから。
そして実際、その通りだった。
「彼らに加わりたかったか?」私が何度も振り返るのを、マリクは見逃さなかった。
「ううん、あなたと一緒にいたいの。いられる限り」
マリクは私をさらに強く抱きしめた。その仕草は、言葉以上のものを語っていた。結局、彼も分かっているのだ。私たちに残された時間はもう多くないということを。




