異世界から来たガイア 37
第37章
ガイア
門が大きく開き、私は他の弓兵たちとともに最前列に立つ。
門の守備に残されていた三十人ほどの兵が武器を手に取り、陣を敷く。
しまった、大人しく安全な場所にいればよかった。
「イシュダー! イシュダー!」背後から声が上がる。
私を女神の使いだと信じ込み、祝福まで受けたことで、みんなの士気を上げすぎてしまったのかもしれない。
もう引くことはできない。
叫び声を上げ、数歩駆け出す。
他の弓兵たちも私に続く。
弓を引き絞り、目の前の数少ない敵に向かって放つ。弓兵の中で一番乗りだ。
無数の矢が敵の上に降り注ぐ。
盾の影に逃げ込めた者もいれば、間に合わなかった者もいる。
生き残りの一人が武器を捨て、私たちからも、自分たちの軍からも逃げ出していく。
「前進!」と叫ぶ。しまった、私に命令する権限なんて……いや、あるのかな?
私たちは小規模な拠点へと歩を進める。
持ち場を放棄する敵がどんどん増えていく。
弓を引き絞ったまま構える。
一人の男が立ち上がった。
放つ。私だけじゃない、敵の体に四本の矢が突き刺さり、彼は崩れ落ちた。
誰も動かなくなった。そこに転がっているのは死体か瀕死の者ばかりであることを私たちは確認する。大半は、隙を見て逃げ出していた。
「戦場へ向かって進みましょう!」弓で、マリクと皇后の兵たちの激突を指し示す。
ここからはマリクの姿が見えない。彼に何も起きていませんように。くそ、彼が死ぬなんて許されない。絶対に。
「閣下」一人の弓兵が近づいてきた。「実に見事な射撃でした」
「ありがとう」今は不安に駆られている場合じゃない。
私たちは戦いの中へと移動する。私は常に弓兵たちと共に先頭を歩く。
数人の敵が振り返り、こちらを指さしている。私たちの接近を上官に知らせているに違いない。
敵の戦列が崩れてくれればいい。ただの寄せ集めの兵たちがすぐに逃げ出し、私にもマリクにも何も起きないことを祈る。
弓兵たちが私の周りに集まる。部隊の最前面に横一列のラインを作り、私はその中央に位置する。
「閣下、射程に入り次第放ちますか?」
「後列を狙え! その後、弓兵は後退!」私は命じる。
最初の矢が放たれる。
盾を持っている者はその影に隠れるが、彼らの多くは私たちのものより小さな盾しか持っていない。
一人の男がこちらを向き、隣の兵を呼んで私たちを指さした。
彼に向かって放つが、矢は届かず手前に落ちた。
十人ほどがこちらを向く。背後を守るために反転し、盾を掲げる。
逃げ出してくれればよかったのに。
私たちはさらに距離を詰める。
二度放つが、どちらも盾に弾かれる。
周囲もあまり幸運ではないようだ。
一人の弓兵が歓喜の声を上げた。会心の一撃だったのだろう。
背後から歩兵隊が前進してくる。
「イシュダー! イシュダー!」連呼は続き、それは祈りというより行進の足並みのようになっている。
再び弓を引き、山なりに放ってみる。こっちの方が運がいいかもしれない。
矢は高く舞い上がり、放物線の頂点から敵の真っ只中へと突き刺さった。罵声が聞こえる。命中だ。
「閣下に続け!」隣の兵が促す。
「上空へ向けて一斉射撃! 全員!」これで前線を突破できるといいけれど。
矢が放たれ、敵の前陣の中へと消えていく。
後方を守っていた一人が、矢が突き刺さった肩を押さえた。
「効いてるぞ!」誰かが歓声を上げる。
左側で苦悶の叫び。
一人の弓兵が、矢が突き刺さった目を押さえている。彼は血に染まった自分の手を見つめ、よろめいて地面に倒れた。
別の矢がその隣の兵の肩を射抜く。
「閣下!」
左側の弓兵に肩を突き飛ばされる。なんとか踏ん張るが、体勢を崩しながらも立ち続ける。
さっきまで私がいた場所に、胸に二本の矢を受けた弓兵が立っていた。
彼は私を狙った矢から私を救ってくれたのだ。「ありがとう」
彼は微笑み、そのまま地面に崩れ落ちた。
身を守らなきゃ。「歩兵の後ろに退け! 最後の一斉射撃!」
私は矢を番えて闇雲に放ち、それから歩兵隊の方へ走る。
背後で風を切る音がした。外れたみたいだ。
「閣下、こちらです!」私の盾を持った兵士が声を上げる。
彼の方へ向かうと、最前線に隙間が作られる。
弓を肩に担ぎ、そこへ飛び込む。
私の後ろで盾の列が閉じられる。
数メートル走っただけなのに息が切れる。くそ、もっとトレーニングしておくべきだった。
誰かの手が盾を差し出してきた。「閣下、これを」
「ありがとう」持ち手になっている革のベルトに腕を通す。「うわ、重っ……」思わず本音が漏れる。
周囲の兵士たちがくすくす笑った。
最高ね。戦の女神どころか、ただの素人丸出しじゃない。
前列の盾が私の目の前で閉じる。
最初の衝突からは守られるだろうけど、激突の瞬間を想像するだけで胃がねじ切れるような思いだ。私は剣を抜く。幸い、こいつがある。
「それは何です?」隣の兵士が尋ねる。そうか、ここでは鉄というものを知らないんだ。
「私の剣よ。鉄でできているの」
「信じられない……」彼は呟く。
「さあ、全員戦闘に集中して!」私は叫ぶ。
「イシュダー!」
「イシュダー!」私も一緒に叫ぶ。
目の前の盾の上から、前方を確認する。
距離はどんどん縮まり、あと数メートルしかない。
敵の後陣が一種の三角形、あるいは楔形に集結する。盾の壁の向こうから槍が突き出している。
何をするつもり?
彼らは雄叫びを上げ、突進を開始した。
真っ直ぐ、私の正面に向かって。
足が震えて、私は立ちすくむ。
怖い。剣を持っていても怖い。みんながイシュダーと唱えていても、私は怖い。
叫び声がどんどん近づいてくる。
「閣下、盾の後ろに隠れてください」後ろの兵士が助言してくれる。
激突。
盾の木と籐が、互いに激しくぶつかり合う。
一本の槍が私の頭から一握りの距離をかすめていった。私は身を屈め、盾の上から目だけを出す。
楔の先端が私の右側を突破し、味方の兵士二人が槍に貫かれ、仲間の兵たちの間に仰向けに倒れ込んだ。
目の前の兵士が崩れ落ち、私の盾にぶつかる。彼は槍を体に刺したまま引きずられ、結果的に相手を丸腰にした。
私は剣を突き出し、相手の喉を突く。気管がバキッと砕け、ぐしゃりと潰れる。
剣を引き抜くと、真っ赤な血が噴き出した。
敵は両手で喉を押さえ、その場に崩れ落ちる。
「危ない!」
振り返る。
槍が頭を狙って突き出されてくる。
わずかに身をかわし、穂先が兜の表面をかすめる。
「ありがとう」
腕を伸ばし、私を突こうとした男の膝を横に薙ぐ。
ほんのかすり傷程度だった。しかし、後ろの列から伸びた槍が彼の下顎を粉砕した。血と歯がいたるところに飛び散る。
数人の敵がその後任に回る。
仲間が援護する中、彼らは私に狙いを定める。
なるほど、私が死ねば彼らの勝ちなんだ。
馬鹿な私は、自分からその仕事を簡単にしてあげている。
右側の男は後列の大きな盾に守られている。彼は剣で槍の一撃を受け流し、私の隣にいた兵士の腹部に刃を深く沈めた。
左側の男は槍の打撃によって足止めされる。かすった程度で実害はないようだ。
私は膝を折り、盾の後ろに低く身を隠す。
左の男が盾ごと私に体当たりしてきた。
衝撃を受け止めるが、そのまま後ろに押し込まれる。
「死ね、忌々しい女め」腐った食べ物のような臭いの息を吐きながら、彼は唸る。
彼の剣が籐と皮で作られた私の盾を貫き、腹部から一握りの距離を通り抜けた。
私は剣を振り上げ、彼の頭に叩きつける。
兜がひしゃげ、腐敗臭の男は朦朧として目を剥いた。
私の背後から二本の槍が、私の頭の右と左を通り抜け、どちらも男の顔面に命中した。
返り血が私に降りかかる。
右側の男はさらに別の兵士も片付け、今は他の二人を相手にしている。
私は盾を構え、彼の方へ向き直る。
別の男が、隙を突いて私に突進してくる。
さっきの男も私に気づき、他の二人を放って私を足止めしようと突きを繰り出してくる。
私は剣でその突きをいなし、盾で突進を受け止める。
味方の兵士が私の背後を通り抜け、最後のアタッカーの手首を鮮やかに切り落とした。
突きを放ってきた男は悪態をつき、血を噴き出しながら貫かれて地面に崩れ落ちる。
今回もまた、仲間に救われた。
隊列の中に侵入してきた男たちは、全員死んだ。
もう敵の前線は見えない。
両翼から進軍してきた味方の部隊が、私たちを覆うように前へ出たに違いない。
「何が起きたの?」近くの者に尋ねる。
「分かりません。ご無事ですか、閣下?」
私は血で汚れた自分の顔を指差す。「王子が、今夜は潔癖症じゃないことを祈るわ」
どっと笑いが巻き起こる。
私も彼らと一緒に笑う。
手首を斬り落とした男が剣を掲げる。「イシュダー!」
他の者たちも一斉に復唱する。
私もそれに加わる。
不思議だ。怖いけれど、感謝もしている。助けられたし、私も誰かを救った。彼らとの距離が、妙に近く感じる。
温かさと残酷さが入り混じったような感覚。
私たちは後方に取り残され、前には二列の兵が密集して、まずは私たちを守り、今は休ませてくれている。
私たちは再び移動を始める。
何も見えないので状況は分からないが、尋ねても無駄だろう。
ただ、マリクが無事であることを祈る。
再び衝突。前回よりも軽い。
敵の前線と接触したのだ。
私は前の者に寄りかかり、勢いを保つために押す。訓練で教わった通りだ。他の者たちも、そして二列目も一列目に対して同じように押している。
まるでファランクスだ。少なくとも、私の記憶にある大まかなイメージではそんな感じだった。
前線は罵詈雑言と怒号の嵐だ。けれど、どう転んでいるのかは分からない。理論上、今は私たちが優勢で、勝利は目前のはずなのに。
盾と盾がぶつかり合い、その隙間を槍や剣が飛び交う。
「王子は死んだ! 降伏しろ!」誰かが叫ぶ。
え?
腕の力が抜け、重く垂れ下がる。
マリク。
足の力が抜け、私はその場に尻もちをつく。
そんなはずはない。
「降伏しろ!」また叫びが響く。
視界がぼやけていく。
後ろから誰かの腕に掴まれる。
抵抗はしない。マリクがいないなら、もうどうなってもいい。
「マリクの首は我々が獲った! 降伏すれば命は助けてやる!」
彼が死んだなんて、ありえない。
私のせいだ。
涙が出る。嗚咽が止まらない。
ごめん、マリク。
もう何も見えない。
「どうする?」誰かが尋ねる。
「連れて行くんだ」と答えが返る。
私は抱え上げられ、重なり合う屍の山の中を歩かされる。
もう何も気にならない。
足を鉛のように重く感じ、引きずるように歩く。引きずってくれる誰かがいなければ、そのまま地面に崩れ落ちていただろう。
涙で目が見えず、心臓が止まりそうだ。
掴まれていた腕を離される。
乱闘から抜け出したのだろう。
「閣下……」その先は何を言っているのか聞こえない。慰めようとしても無駄だ。マリクがいなければ、もう全部終わりなのだ。
私は心を閉ざし、世界の音を拒絶する。
こんな結末になると知っていたら、ここに来るのを拒まなかった。あの恐ろしい牢獄で裁判を待つ方が、まだましだった。彼が私を見捨ててくれればよかった。そうすれば、彼は今も生きていたのに。
喉の限りに、精一杯叫ぶ。それなのに、何も聞こえない。
マリク、もう一度会いたかった。もう一度、あなたに触れたかった。
二度と会えないと分かっていたなら、もっとあなたを愛したし、喜んであなたと結ばれたのに。
マリク、ひどいわ。あなたに惹かれ始めていた私を、こんなふうに残していくなんて。
地面に泣き崩れ、空に向かってもう一度叫ぶ。
誰かが私の盾を外し、別の誰かが剣を鞘に収めてくれる。
何を言っているのか分からない。
マリク。
マリク、なぜこんな無意味な戦いで死んでしまったの。
私は拳で地面を叩く。まるで、私から大切な人を奪い続けるこの世界そのものが敵であるかのように。家族、やっと友達になりかけていたジェッスア、そして今はマリクまで。
体が揺さぶられる。
誰かが私の肩を揺らしている。
その力が強くなる。「閣下!」
手で目を拭う。
世界に色が戻ってくる。けれど、以前よりも光を失い、くすんで見える。三人の兵士が私を囲んでいた。
「閣下、失礼いたします」三人のうちの最年長が、優しく声をかける。「お伝えしたかったのです。我々は勝ちました」
もう、そんなことはどうでもいい。私は頷く。
彼は濡れた布を差し出してきた。「水です。血を拭ってください」
「どうでもいいわ」
「ですが、マリク王子がこちらへ向かっておられます」




