異世界から来たガイア 33
第33章
マリク
私は衛兵所の執務室の床を、もう何度目か分からないほど行き来している。ヴェルパがエンラアによって包囲されたと知ってから、どうしても落ち着くことができない。まるで、私がガイアを罠に誘い込んでしまったかのようだ。暗殺者や逮捕の危険から彼女を遠ざけたかったのだが、ここにいた方がもっと守れたのではないか。くそ、また彼女を守ることに失敗してしまった。
「陛下、もう少しで床が抜けてしまいますよ」ジルバムが私を宥めようとする。
「抜ければいい!……すまない、お前に怒鳴るのは筋違いだった」
「皇后は、我々に罠を仕掛けたのだと思われます」
「私も同じ疑いを持っている」そして、おそらく一つの結論に辿り着いた。
「よろしければ、私の推理を述べさせていただきましょう」
「言ってみろ。私の考えと同じかどうか確かめよう」
「では。我々が知る限り、皇后はガイアを必要としています。それも生きたままで。ザナンザに彼女を襲わせようとしたのは、彼女をここに縛り付けるためでしょう」
「皇后がその詳細まで知っているかどうかは分からないぞ」
「確かに。ですが、知っていると仮定しましょう。それにしても、失礼ながら、陛下が彼女といまだに関係を結んでおられないことには驚かされますが」
「そのことについては、兄弟たちに散々からかわれているんだ」
「私はただ、陛下の健康面を案じているだけですよ」
「地獄へ行け」
「後で伺うことにしましょう」
「ともかく、エンラアはその詳細については知らないはずだ」私はそのことに思い至っていなかった。
「なぜそう断言できるのです?」
「ガイアが生贄にされるのを防ぐために、彼女はもう処女ではない、それは私のせいだ、と確信を持って宣言したことを覚えているか?」
「ああ、なるほど。もし皇后がその事実を知っていれば、ガイアを泉(源)から遠ざける必要はありません。ただ良い機会を待てば済む話ですから」
「そうだ。彼女はタロムとは別のルートで情報を得たのだろう」
「その可能性は高いですね。ですが、話が逸れました」
「その通りだ。続けろ」
「では、ザナンザを操ろうとした件に戻ります。もし成功していれば、今頃ガイアを確実にここに留めていたはずです。ですが私は、皇后の目的はあなたとザナンザ、そしてガイアの関係を壊すことにあったと考えています」
「つまり、我々を分断することか」
「その通りです」
「だが、どうやってゲッスアを操ったのだ? 彼女は部外者だぞ」
「確かに。しかし彼女は嫉妬深い。そして、あつらえたように誰かからザナンザとの間に起きたことを聞いたのです。ここに一人の容疑者がいます」
「チャニーか。何らかの方法で、エンラアが彼女を味方に引き入れたのだな」
「二人は同じものを望んでいるのでしょう」
「それは疑問だな」二人が権力を分け合えるとは思えない。
「なぜです? あなたが死ねば、彼女たちが喜ばないとでも?」
「……お前の言う通りだ」
「チャニーがゲッスアにガイアの悪評を吹き込み、様子を探らせるためだけでなく、彼女を自宅に招かせるよう仕向けたのです。宮殿での会合がどのような結果になろうとも、ゲッスアの家で接触する機会は用意されていた」
「そして、もしガイアがそこにチャニーがいると知っていれば、決して行かなかっただろう。そうなれば計画は台無しだ」
「その通りです。ガイアは生きたまま必要であり、あなたから引き離さなければならなかった」
「エンラアとチャニーがいなくなったことで、彼女は安全だと思い込み、我々は皆、油断してしまったのだな」
「ええ。タロムだけでは不十分でした。残念ながら」
そして、彼はそれを自分自身で許せずにいる。「あまりにも巧妙に仕組まれた罠だった」
「回避する唯一の方法は、ガイアを送り出さないことだけでした」
「ああ」
「いずれにせよ、ガイアは逮捕されることになったでしょう。もし彼女が牢に残っていたなら、皇后は何らかの方法で彼女を連れ出し、利用したはずです」
「だが、私の方が一歩早かった」
「幸運でしたな」
「つまりお前の考えでは、私が彼女を遠ざけることまでも予測されていたということか?」
ジルバムは微笑む。ここまでの話は、私自身が抱いていた疑念を裏付けるものだった。「もし、あなたのお父上である皇帝陛下や皇后が逮捕を命じていたのであれば、あなたに拒否する権限はありませんでしたから」
「その通りだ。それが彼女を遠ざけた理由の一つだが、場所まで言い当てられたのは本当につきすぎている」
「ええ、ですがよくお考えください。言い当てたというよりは、彼女たちの後をつけた可能性の方が高いでしょう」
筋が通る。すべてにおいて完璧に筋が通る。エンラアは私を完全に出し抜いたのだ。ガイアを尾行させ、即座に軍を動かした。
「そして、容疑が晴れない限り、私は自分の軍を動かしてガイアを救出することはできない」
「左様でございます。しかし、エンラアとチャニーを同時に罪に問うのは、少々無理があるかと」
「チャニーだけを告発したとしたらどうだ?」
「そちらの方が現実的ですが、エンラアが彼女を庇うでしょうな」
「ああ、毒の件についてはまだテルピンからの知らせを待つ必要があるが、もしエンラアに逃げ道を与えてやれば、彼女にはチャニーを切り捨てる十分な動機が生まれるはずだ」
「同盟者を一人失うことになりますが」
「その通り。だが、代わりの選択肢は自分自身も裁判に直面することだ」
「それは、なかなか難しいことでは」
「もしタロムがチャニーの侍女について、自分がどうやって眠らされたかを証言すれば話は別だ」
「なぜです?」
「考えてみろ、ジルバム。もしタロムがその場にいて何を見たかを証言すれば、エンラアは何を犠牲にするか選択を迫られることになる。ガイアの従者であるタロムか、あるいはチャニーかだ」
「なるほど。あの時点でタロムはガイアの従者でしたから、もし彼が毒を盛ったということになれば死罪は免れませんし、エンラアは戦う大義名分を失うことになります」
「その通りだ。さもなくば、彼女はチャニーを見捨てるだろう」
「しかし、もしテルピンがそれらを一般的な成分だと確認すれば、エンラアはいずれにせよ身の潔白を証明できてしまいます」
彼の言う通りだ。「それならそれでいい。彼女を利用して、あの上着を取り戻すことができる」
ジルバムは微笑んだ。「それは完璧ですね」
「だが、すぐに動かねばならない」
「テルピンが必要ですね」
「ああ、分かっている。わざわざ言わないでくれ」今この瞬間も、私はただガイアのもとへ駆け出したいのだ。
「少し落ち着かれることをお勧めしたいのですが……今のあなたの精神状態では、それも無理でしょうな」
「その通りだ」
「彼女のことが、よほど大切なのですね」
「ガイアを好きにならない奴などいるか? 彼女の身に起きたすべてのことを考えてみろ」
「おっしゃる通りです。しかし、もし彼女がこのままここに残ることになったら、あなたは悲しまれますか?」
ああ、そうなれば決して嫌ではない。むしろ、その方がいいとすら思う。だが、それでは問題を先送りにするだけだ。「彼女は、自分の家に帰らなければならない」
「仰せのままに」
もし自分の望み通りにできるなら、事態はまるで違っていただろう。「戴冠せし炎」のことから、ガイアをどうするかまで。くそ、あの娘は女に関する私の主義をすべて台なしにしている。彼女がただ好きで、そばにいてほしいというだけで、何がどうあろうと手放したくないと思ってしまうのだから。
二時間ほど経った頃、テルピンが雪のように顔を真っ白にし、息を切らしてやってきた。今日だけで一ヶ月分は運動したに違いない。
「テルピン、まずは息を整えてから話せ」
テルピンは時間をくれと手を上げた。実のところ、情報を待つこの時間が、私の心をかき乱してやまない。
テルピンはようやく背筋を伸ばし、息を吐いた。「よし。何人かの医師や薬草師に当たってみた。残念ながら、エンラアやチャニーに関係する者が毒やその化合物を買ったという証言は得られなかった」
「くそ……まあ、予想はしていたが」
「もっと徹底的に調査すれば、何か見つかるかもしれません」
「だが、時間がないと言ったはずだ」
「分かっています、兄上。ひとまず当たれるところは当たって、すぐにここへ来ました。今は私の従者たちに、さらなる調査を続けさせています」
「それで、化合物の正体については何か分かったのか?」
「はい。あいにく、どれも一般的な材料ばかりでした。ですが、熟練した知識を持つ者が調合すれば、毒になり得ます」
「そう語った者たちは、証言してくれるか?」
「ええ。ですが、それがエンラアを決定的に断罪する決め手になるかどうかは疑問です」
「それは後で考える。いずれにせよ、これで動ける」
私は剣をベルトに差し込み、扉へと駆け出した。「エンラアと話してくる!」出て行く際に、そう宣言した。
***
エンラアの宮殿にアポイントなしで到着したが、予想通り義母は在宅しており、すぐに私を迎えざるを得なかった。私は空の卓の周りを歩き回る。彼女は、どちらが強者かを知らしめるために、あえて私を待たせることに決めたのだ。
今日勝つのは、私だ。
エンラアが苛立ちを露わにし、香水の残香を漂わせながら入ってくる。「あなたの訪問を受けるなんて、何のご用かしら?」
「ただあなたに会いたくなった、ではいけないのか?」
「マリク、あなたが私を訪ねてきたことなど一度もないわ。何か理由があるはずよ」
「時間を無駄にするのが嫌いなだけだ」
「それは私も同じよ。なら、はっきりおっしゃい。何か飲む?」
「やめておこう」下手をすれば私まで毒殺して、自分の問題を一挙に片付けるかもしれないからな。「ヴェルパを包囲するために、お前が軍を動かしたと聞いたぞ」
「当然のことよ。あそこには殺人容疑者が隠れているのだもの。危険な女を、この……」彼女が私を指差す。「あなたが逃がしたのよ」
「逃がした、ではなく、逃がしてやった、と言いたいんだろう」
「それならなおさら質が悪いわね」
互いに攻撃の隙をうかがうかのように、どちらも腰を下ろそうとはしない。「ガイアが犯人ではないことは、二人とも分かっているはずだ」
「証拠はそう言っていないわ」
「彼女の有罪を証明する証拠も存在しない」
「彼女が最も疑わしいことに変わりはないわ」
「そうか? では聞こう。彼女がどうやって、存在すら知り得ないはずの毒を手に入れたというんだ」
「さあね」
「私や、お前や、状況を知る者なら誰でもその答えに辿り着けるはずだ」
「あの子は鉄の扱いに長けているだけじゃなく、他にも隠れた知識があるのかもしれないわよ」
「軽口はやめろ、エンラア」
「そのつもりはなかったけれど」
「こちらでも独自に調査を進めた」
「でしょうね」彼女は椅子に座り、脚を組んだ。
「ウルグの襲撃についてもだ。あれがチャニーとその夫に唆されたものだということは知っているな?」
「どういうことかしら、理解できないわ」
「生き残った者たちがそう自白した、というのが事実だ。明日の謁見では、ガイアの無実を証明する証拠とともに、彼らを父上の御前へ連れて行くつもりだ」
「それは重大な告発ね」
「だが、お前はすでにすべてを知っているはずだ」
エンラアは笑い声を上げた。「それで、私を裁判にでもかけるつもり?」
「可能であればな。そしてお前の犯した罪で、お前を断罪する」
「私が犯してもいない罪で?」
「それが嘘だということは分かっている」
「法の裁きの上ではどうかしら。私は有罪判決なんて受けていないもの」
「チャニーに手を貸し、ザナンザに薬を盛り、ゲッスアを毒殺する方法を教唆したのはお前だ」
エンラアは拍手した。「つまり、これらすべての背後に私とあなたの妹の計画がある、と見たわけね?」
「その通りだ」
「狂ってるわね。独創的だけど、やっぱり狂ってる」
「どうも。ウルグの証言に関しては、何が起きたか俺たちはよく分かっている。あいつが断罪されるのを避けることはできないぞ」
「たかが数人の証言で?」
「重要な証言だ。実は、俺は奴らの首領を捕らえていたんだ」
「死んだのではなかったの?」
「嘘をついた。公式な報告ではなかったから、俺は何の罪も犯していない。じっくりと、かつ確実に尋問するために、自分の捕虜として確保していたんだ」
「あなた、被害妄想が激しいって言われたことはない?」
「最近は誰もがそう言うよ」
「あなたは最低の君主になるわね」
「タロムの方がマシだ、とでも?」
「あの子がそれを自分の運命だと決めたならね。ええ、あなたよりずっと優れた君主になるわ」
「そうなってくれることを願うよ、俺よりも優れた者に」そうであってほしい。あいつは偉大な人物になれる素質をすべて持っている。幸いなことに、彼女にはあまり似なかった。
エンラアは微笑んだ。
「ところで、タロムはどこ? 戻ったと聞いたから、挨拶をしたいのだけれど」
「寝ているよ。昨夜はずっと星を見て起きていたからな」
「じゃあ、あの子の勉強は順調なのね」
「ああ、驚くほどにな。あいつは昔から非常に聡明だった」
「そうね」
「だが、今は休ませてやりたい。お前も気を悪くしないだろう?」
「ええ、ちっとも。家に帰った時に挨拶するわ」
「何だって?」
「お前にとって、嘘をつくのは呼吸をするのと同じくらい簡単なことなんだな」
彼女の顎がわずかに震えた。自分の息子がどこにいるのか分かっていないのだ。
許してくれ、タロム。お前の母親はお前にいっそう厳しく当たるだろうが、お前に自由を返すために全力を尽くす。「ガイアが、ゲッスアに毒が盛られた時に従者を連れていたのは知っているな?」
「聞いたわよ。口の利けない従者だったとか。毒を盛ったのはその者に違いないわ。何しろ口が利けないのだから、白状することもできないものね」
「では、なぜその者は逮捕されなかったんだ?」
「私の知る限りでは、逃げおおせたと聞いているわ。誰か他の者に雇われていたのかもしれない。それを話して、あなたの側室の無実を証明しようというの?」
私はにやりと笑った。時間を稼いでいやがる、この女。「いや。とんでもない。俺はその従者のことも、お前のこともよく知っている。毒を盛ったのはあいつではなく、チャネイの侍女だとはっきり分かっている。それから彼女は、計画が台無しにならないように別の毒であいつを気絶させたんだ。仕事中に眠り込む従者の言うことなど、誰が耳を貸すと思ったのか、あるいは別のことでも考えたんだろうな」
「その本人から聞いたのね」
「ああ。その従者というのは、変装したタロムだったんだ」
エンラアは目を見開き、顎も手も震えだした。
「タロムはここ数日、俺の屋敷にいる。彼はガイアがどうやってここに来たかを知っているし、自分なりの予測も立てているぞ」
「あの子にあなたの側室の護衛を強いたというの!?」彼女は激昂していた。これほど感情を剥き出しにする彼女を見るのは稀なことだ。
「あいつが自分から志願したんだ。面白そうだとな」
「それで、私の息子を使って私を脅迫するつもりね」彼女は低く唸った。
「いや、お前を脅そうとしているのはあいつ自身だ。チャネイを見捨てて彼女を断罪させるか、それともタロムがガイアの従者として認識され、死刑を宣告されるか。選択はお前次第だ」
「自分のしたことの報いを受けるがいいわ」
「代わりに二つのことを要求する」
「一つはもう求めたはずよ」
「それは当然のことだ。別の二つだ。一つ目は、ヴェルパに送ったお前の手下たちを呼び戻すこと。二つ目は、お前が持っているガイアの衣を俺に返すことだ」
「何のことか分からないわ」
「明日の朝、父との謁見の前にそれを持ってこい。そこで会おう」
私は外へ出た。すまないタロム、俺の目的のためにお前を犠牲にした。いつか必ず、この借りは返す。
明日、ガイアは自由になり、家に帰ることもできるだろう。そして私は敵を一人減らすことになる。




