異世界から来たガイア 27
第27章
マリク
タロムが私の執務室に入ってきた。「おはよう、マリク。元気?」彼はジルバムに気づくと付け加えた。「ジルバム、君もおはよう」
「おはようございます、陛下」
私は弟に歩み寄り、その両肩を掴んだ。「会えて嬉しいよ」 彼の背丈はもう私とほとんど変わらない。まだ十五歳だ、これからもまだ伸びるだろう。
「僕もだよ。本当は君の宮殿まで会いに行って、君の側室に会ってみようかと思っていたんだけど、そんなことをしたら母上が二ヶ月は外出を許してくれなかっただろうからね」
「母上は彼女をあまり快く思っていないだろうからな」 実のところ、母は彼女を殺したがっている。
「そうだね」 タロムは視線を落とした。
「まあ座れ」 私は椅子を指した。「ワインもあるぞ。会うのはどれくらいぶりだ? 一ヶ月半か?」
「ありがとう」 彼はスツールを引き寄せ、そこに腰を下ろした。「だいたいそのくらいかな。ちょうど先週アミンナから戻ったばかりなんだ。最高だったよ」 占星術の話になると、彼の瞳にはいつも輝きが灯る。くそ、色も形もあの女(母親)と同じなのに、彼女には一度も見たことのない光が宿っている。
「戻ったらすぐに母上のところへ行くのかと思っていたが」
「理屈ではそうすべきなんだけど、あそこにいると閉じ込められてしまうし。それに、戻った途端に山ほど浄化の儀式をさせられるのは目に見えているから」 彼はため息をついた。
「分かっているよ」 彼は母親を尊敬しすぎており、彼女が自分の目的のためにいかに彼を操り、囲い込もうとしているかを見抜くには、まだ純粋すぎるのだ。そして彼女もまた、彼が皇帝になどなりたがっていないことに気づいていない。
「それにしても、兄上には驚かされたよ」 彼は微笑んだ。
「何にだ?」
「女性を囲ったことさ。それに隊商から聞いた話では、彼女、兄上と一緒に戦ったそうじゃないか」
「ああ、あれは……まあ、偶然が重なっただけだ」
「偶然なんて存在しないよ。僕たちは神々の手の中にいて、神々は時として僕たちを導き、あるいは僕たちを相手に賽を振るんだ」
「それなら、私には勝ち手を残しておいてほしいものだな」
「イシュダアに気に入られたのかもしれないね」
「そうだといいが」 ガイアをイシュダアに結びつける話は、予想以上に広まっている。本来は彼女を宮殿に留めるための口実だったというのに。
タロムは肩掛けの鞄から粘土板を取り出した。
神々の寵愛を失ったと思わせずに、どうやって彼女を元の世界へ送り返せばいいのか。
「君に会いに来たのはもちろんだし、最近観測したいくつかのことについても話したかったんだ」
「聞かせてくれ」 タロムはこの数週間、昼も夜も占星術と神意の研究に没頭していたに違いない。それが彼の情熱なのだ。
「まず、イシュダアの星が、この七年の記録よりも二日早く昇ったんだ。最初の数日はかすかな光だったけれど、それでも女神がどれほど僕たちに関心を寄せているかを象徴しているよ」
「なるほど、アミンナの観測所のアーカイブにもアクセスできるようになったのか」
「そうなんだ、その試験にも合格したよ。あと二年もすれば占星官になれると思う。そうすれば、君やテルピンの力になれるから」
「そんなことをしなくても、我々はお前を愛しているぞ」 時折、彼は我々に認められたくてこれほど勉強しているのではないかと思うことがある。
「重荷にはなりたくないんだ。母上だって、いつまでも僕を閉じ込めてはおけないだろうし」
私なら、お前のために、あの女から何マイルも遠くへ送り出してやるんだがな。「だが、勉強のしすぎで目を悪くしないよう気をつけろよ」 私は笑った。
「ジルバムは視力に何の問題もないよ。それでも彼は、僕の知る中で最も博識で賢い人の一人だ」
私は横目で書記を盗み見た。彼は視線も鉄筆も仕事から離さず、満足げに微笑んでいた。「ああ、だが彼は例外だ」
「それと忘れないで、兄上。僕は星が好きなんだ。君や父上のような偉大な戦士にはなれないし、君とザナンザ兄上の間にあるような強い絆も僕にはない。けれど、僕もみんなや帝国の役に立つことができるはずなんだ」
一方、あいつの母親は我々を葬り去ろうと躍起になっている。その息子が母親とは正反対の性格だというのは、実に皮肉なものだ。「それで、イシュダアについてはどう言っていた?」
「さっきも言った通り、女神は僕たちを見守っていて、手を貸そうとしてくれているんだと思う。しるしを遣わしてくださることは分かっていたんだ」
「ガイア……」 その名を口にするだけで、胸の奥が苦しくもあり、同時に温かくもなる。
「彼女、そういう名前なの?」
「ああ、異国の女だ」
「噂は聞いてるよ。赤い髪に緑の目、それに女の人にしては背が高いってね。北のほう、灰の海の丘陵地帯になら、そういう人たちがいるけれど」
「ああ、だが事情はもう少し複雑なんだ」 彼の母親が何をしようとしたのか、すべてを話すわけにはいかない。少なくとも、今はまだ。
「星々によれば、しるしは『遥か遠方』から来ると出ていたんだ。だから、灰の海からではないと推測しているよ」
「その通りだ」 私はジルバムに目をやった。彼は頷く。彼も、教えても構わないと考えているようだ。「彼女はイタリアという場所から来た」
タロムは瞬きをした。「聞いたことがないな」
「非常に遠い場所なんだ」
「僕は、そのしるしが一足の長靴からやって来ると視えたんだけど、あまり関係はなさそうだね」
私は笑った。「それは意味が分からんな」
「だよね」 タロムも笑う。「とにかく、話を聞かせてよ」
私は深く息を吸い込んだ。
ガイアがいかにして現れ、私がいかに出会ったのかを彼に語った。彼の母親が、私や兄弟たちを殺すための生贄として彼女を使おうとしたことは伏せておいた。彼は、母親의そうした側面を受け入れるにはまだ若すぎる。
タロムは私の話にすっかり聞き入っていた。ある意味では、彼が不憫に思える。母親のせいで、彼は戦い方や戦車の操縦、狩りさえも学ぶ機会を奪われてきたのだ。アミンナでの留学中以外、女性と接したこともほとんどないに違いない。
「彼女を家に置くことにしたのは正解だよ」 話し終えると、タロムは断定するように言った。
「つまり、お前の母上は間違っていたと思うか?」
「ああ。神々にしるしを求めたのなら、生贄の候補が送られてくるなんてことはまずあり得ない。神々からのメッセージの解釈には慎重さが必要なんだ」
「確かにな。それに、あの方はそれを行うために相当な力を使ったはずだ」
タロムは考え込んだ。
彼の中に少しは疑念を植え付けられただろうか。何しろ彼は占星術や祭祀の知識に長けている。魔術についても心得があるはずだが、それを口にすることはないだろう。
タロムは舌を鳴らした。「もしかしたら、そのことがイシュダアの星の出現に影響したのかもしれない」
「そこまでか! しかし、それはお前の母上が極めて強力な術を使ったということになるぞ」
「何日も続けて儀式を行ったのなら、不可能じゃないよ。もちろん、それには魔術を熟知した高位の祭司が必要だけど、母上ならできるはずだ」
「だが、それならなぜすぐに彼女を犠牲にしようとしたんだ?」 これで少しは、自分の母親がどのような人間なのか、彼も疑問を抱だろうか。
「僕にも説明がつかないよ。もしかしたら、そうすることで来たるべき戦争に向けて帝国を浄化し、強化できると考えたのかもしれない」
「かもしれんな」 いや、お前は完全に見当違いをしている。
「あるいは、戦士や特別な遺物を期待していたのかも」
「ガイアは鉄を見つけたんだ」
タロムは勢いよく立ち上がった。「何だって!?」
「ああ。彼女の国ではありふれた素材らしい」
「とてつもなく豊かな国なんだね」
「ともかく、我々は鉄の武器の製造を始めている。少なくとも将校用にはな」
「疑いようがない。彼女はイシュダアの使いだ。彼女をそばに置いておけば、世界の半分を征服できるかもしれないよ」
「私は世界に平和をもたらしたいんだがな」
「君が恐れられ、無敵になれば、平和をもたらすことも可能だよ」
それは私の夢でもある。
「もう一つ頼みがあるんだ、タロム」 私はガイアのジャケットの特徴を伝え、それを探してほしいと頼んだ。彼女を帰すために必要だとは言わず、彼女にとって大切な品なのだと嘘をついた。
「いいよ、調べてみる。見つけたら必ず君に届けるよ。あんなの、母上が持っているべきものじゃない」
「その通りだ。あの方はもう十分すぎるほど服を持っているからな」
「そうだね。じゃあ、もう行かなくちゃ」
「寄ってくれてありがとう」 私は彼を抱きしめた。彼のような人間が弟でいてくれるのは幸運なことだ。このまま善良な人間でいてくれることを願う。
彼も私を抱き返した。「それじゃあ行くよ。何かつかんだらすぐに知らせる」
彼は部屋を出て、背後で扉を閉めた。
「これは事態を複雑にしますね、陛下」
「何のことだ?」 ジルバムは一言も聞き漏らしてはいなかった。
「ガイア様がイシュダアから直接遣わされたという点です」
「それが、彼女を手放すべきではないという理由になるのか? 彼女を元の世界へ帰す代わりに」
「左様です。いかなる事情があろうとも」
「そんなことはできん。私は彼女を家に帰すと約束したんだ」
「慎重に検討すべき事案ですな」
ああ。そして、私はなぜ自分がこれほどまでに彼女に惹かれているのかを理解しなければならない。
***
浴槽の縁に背をもたせかける。
ひと泳ぎし、湯に浸かって今日の出来事を考えれば、もう少し冷静になれる気がした。ワインを一口含み、杯を縁から離れたところに置く。
目を閉じ、しばしの静寂と安らぎを味わう。
一日中ガイアを避けていた。そのことや、他にも諸々のことに罪悪感を抱いている。彼女に許してもらう方法を見つけなければならない。だが同時に、深入りしすぎないようにもしなければ。タロムは厄介な難題を突きつけてくれたものだ。もしガイアが神々に遣わされたのだとしたら、彼女は「生きた護符」として、俺に絶大な幸運をもたらす存在なのかもしれない。
カサリ、と音がした。風だろうか。
いや、この音は別なものだ。誰かが水に入ってきた。
目を見開く。
ガイアが、俺と同じ水の中にいた。灯りに照らされた彼女の姿は、人間というより、どこか神秘的な顕現のように見える。弟の言葉に影響されているせいもあるのだろう。
彼女は微笑み、こちらへ泳いでくる。「お邪魔でしたか、陛下」
彼女の声がこれほど艶っぽく聞こえたことはなかった。
唾を飲み込む。「いや、ちっとも」
彼女が間近に寄り、俺の肩に手を置く。
滴が彼女の顔を伝い落ちる。見惚れるほど美しい。
その腰を抱き寄せようと、手を伸ばす。
彼女は裸だった。「今夜は大胆だな」
「そうでなくては。そうでもしないと、今夜もわたしを求めてくださらないのではないかと怖かったのです」
「ばかだな」彼女の脇腹を軽くつねる。「昨夜は死ぬほど肝を冷やしたんだ。……だが、誰にも言うなよ」
「ジルバムやカラアルにもですか?」
「特に、あの二人にはな」彼女の裸の背に手を滑らせる。
ガイアは唇を噛んだ。何かを言おうとしているかのようだ。
謝るべきだろう。「昨夜、一人にしてしまって悪かった……」
ガイアは信じられないといった様子で、眉をぴくりと動かした。
今すぐその口を塞いでしまいたい。「昨夜は動揺していたんだ。お前を守れなかった。もしお前に何か起きていたら、自分を許せなかっただろう」
「でも、わたしは一緒にいてほしかったのです」
「気づかなかった。俺が愚かだったよ」そして、俺の中の別の部分も、明らかに激しく昂ぶり始めていた。
「ええ。本当に、愚かです」
片手で彼女の尻を掴み、もう一方の手で彼女をさらに近くへ引き寄せる。
ガイアがその腹部を俺に擦りつけてくる。俺の興奮は確実に彼女に伝わっているはずだ。
顔が触れそうなほど近くにある。「昨夜、お前のところへ行かなかったのは間違いだった」
「ひどいです。わたし、また安心したかったのに……それなのに、あなたはいてくれなかった」
抗いきれず、彼女に口づける。強く抱きしめる。彼女が恋しかった。さらに深く絆されてしまうのは愚かなことだと分かっていながら、それでも、彼女の唇がたまらなく欲しかった。
彼女の両手が俺の項を包み、濡れた指先が髪の間を通り抜ける。
女の指先に触れられて、これほど心地よいと感じたことは一度もなかった。
ガイアがわずかに唇を離す。「……じゃあ、もう一人で寝かせたりしませんか?」
「お前がいいなら、一睡もさせないつもりだが」
彼女に耳を引っ張られる。
「痛っ、痛いよ!」見え透いた嘘をつく。
「何のことか、分かっているくせに」
「ここにいる限り、もう一人で寝かせることはない。お前がいいなら、俺がずっとそばにいる」――頼む、拒まないでくれ。
「ありがとう」彼女が軽くキスをくれる。「一時的なものだと分かっています。でも、あなたがいないと怖いのです。こんなこと初めてだけど……この世界で、あなたはわたしの心の拠り所になったのです」
愛の告白のように聞こえた。それは俺が応えてはならないものだ。俺たちに、そんな余裕はない。「……俺に惚れるなよ」
ガイアはため息をつく。「あなたに惹かれていっているの、マリク。それに昨夜のことはもう許したわ。結局のところ、あなたもあなたなりにあの出来事を消化していたのでしょうから」
「だが、俺は今日一日、自分を許すことができなかった」
ガイアは俺の肩と首の間に頭を乗せる。「それじゃあ、わたしに飽きてしまったわけではないのね」
「それを心配していたのか?」
「ええ、もしかしたらって。それに今日、ゲッスアに不安を吹き込まれたし」
「ゲッスアがここに来たのか?」
「ええ」
「あいつ、嫉妬して俺のことで疑念を植え付けようとしたのか? お前、あいつに何を話したんだ?」
ガイアはゲッスアとの面会と、そこで何を話したかを俺に語る。なかなかの立ち回りだったと言うほかない。疑いを持たせることなく魔法の名を出し、彼女の理屈も、俺のそばにいる以上はザナンザに興味などあるはずがないということを示すものだった。
「よくやった」 俺は彼女に口づける。
「ありがとう」 彼女の手が俺の股間をまさぐる。
俺も同じように彼女に触れる。彼女は全く拒まない。彼女は俺の肩に頭を乗せ、喘ぎ始めた。そして、俺のそれをしっかりと掴む。
昂っているのは俺だけではないらしい。
彼女が手の動きを速めると、俺もそれに応える。
俺は理性を失いそうになる。
彼女が俺に口づけ、その接吻で互いの喘ぎ声を封じ込める。
俺たちは共に快楽の頂点へと達し、接吻を交わしながらその絶頂を分かち合った。
ガイアは再び俺の肩に頭を預け、息を整える。
彼女は何かを呟いたが、聞き取れなかった。
「安心しろ。これからはもう、お前を一人にはしない」
もし彼女が帰郷を諦めてくれるなら、このまま手元に置いておけるのだが。




