異世界から来たガイア 15
第十五章
ガイア
皇宮の衛兵たちが、玉座の間の重厚な木製の扉をゆっくりと開き始める。
蝶番がきしむ音を立てる。
マリクが私の手を取った。「大丈夫だ、ガイア。私のそばを離れず、話は私に任せておけ」
「はい。呼ばれた時だけ話して、前をまっすぐ見ます」 ここへ来るまで、彼は私に何度もそう言い聞かせてきた。
マリクは微笑み、うなずく。
うまくいけば、彼は皇后様にあの(没収された)上着の件を切り出してくれるはずだ。
扉が大きく左右に開け放たれる。
マリクは私の手を離した。
室内から、お香の香りがふわりと流れ込んでくる。
「閣下、背筋をお伸ばしください」 後ろからムルがささやく。
私は姿勢を正し、深く息を吸う。運が良ければ、皇后とは顔を合わせずに済むだろう。
マリクが最初の一歩を踏み出す。
私は彼に続き、その後ろをムルが歩く。
衛兵が私たちの到着を告げる。私のことを「閣下」と呼ぶが、他の者たちのように「イシュダー」とは呼ばない。当然だ、詳細な情報はまだ届いていないのだろう。
赤と白の小石が敷き詰められたモザイクの床を、彫刻の施された柱の列に沿って進む。
正面の、黒と赤の装飾が施された高い黄金の玉座の上で、皇帝が穏やかに微笑んでいる。その手には、穂先が稲妻の形をした槍を携えている。
その少し一段低い場所には、赤と黄色の布に覆われた、もう一つの空の玉座がある。まるで燃え盛る炎の舌のようだ。あれが、まさに「戴冠せし炎」と呼ばれる皇后の席に違いない。
彼女がいないのなら、あの上着の話も切り出しやすいかもしれない。
玉座へ続く階段の足元には黄金の香炉があり、そこから香の匂いが立ち上っている。二人の衛兵がそれを守るように立っていた。
思わず唾を飲み込む。大聖堂のような荘厳さに満ち、空間そのものが権威を放っている。
皇帝が手で合図を送った。
駆け寄る足音が響く。
私は思わず剣の柄に手を伸ばしかける。
「閣下、動かないでください」 ムルが鋭くささやく。
三十歳ほどの男が皇帝の前に跪いた。上品なチュニックをまとい、武器は持っていないようだ。脇には籐の籠を抱えている。
まるでピクニックの途中で抜け出してきたみたいだ。妹が見たら笑い転げるだろう。
「マリク」 皇帝の声は力強かった。叫んでいるわけでもないのに、権威と威圧感が空気を震わせている。
マリクが深々と頭を下げる。
私もそれに倣った。
「見事な勝利であった。多くの兵の命を代償としたようではあるがな」
その言葉には、かすかな批判の色が透けて見える。
「恐れ入ります、陛下。我々は皆、最善を尽くしました」
「大胆な策を用いたようだな。それに頼りすぎるな、さらに磨き上げよ」
「はっ、ご助言に感謝いたします、陛下」
若い男は籠を地面に置き、中から粘土板のようなものを取り出して、尖筆で何かを書きつけている。
なんてこと。ここでは楔形文字を使っているのね、メソポタミアみたいに。私の歴史学の教授なら、私の立場と代われるなら殺してでも望むような光景だ。そして、あれが仕事中の「書記」というわけだ。
「それにしても、私がすでに知っているはずの結果を伝えるためだけに、これほど急いで参上したわけではあるまい」
「戦場で起きたことをご報告するのは私の務めです。ゆえに、すぐに参上するのが最も適切と判断いたしました」
「怪我はないか?」
「かすり傷程度です。お気遣いありがとうございます」
「そなたは?……ガイア、だったか。記憶が正しければ」
名前を呼ばれ、私は一礼する。「ご明察の通りです、陛下。私もかすり傷程度でございます」
「見たところ、そなたも共に戦ったようだな」
「はい」 私はまだ血と埃と汗にまみれたままで、自分でもひどく臭うのがわかる。髪の状態も、人生でこれほど最悪だったことはない。
皇帝は深くうなずいた。
全身をきれいにするだけでも何時間もかかるだろう。良心の呵責という点では、どうかわからないけれど。
「この帝国において、女子が戦場に立つのは異例のことだが、これまでに戦の経験はあったのか?」
「いいえ、陛下。ですが弓の扱いには心得があります。私の国では何度も大会に出場し、そのほとんどで優勝いたしました」 少し話を盛ってしまった。でも、見た目以外の価値もある人間だと思わせたかったのだ。
「ほう、それは見事だな」 皇帝は顎髭をなでる。
私は、ただ見た目がいいだけじゃないの。……というか、そういえば彼が「服を着ている」私を見るのはこれが初めてだ。頬が熱くなる。そんなこと考えるべきじゃなかった。
私は視線を落とした。
完璧。これで控えめで内気な人間に見えるはずだ。
「陛下、ガイアの働きは驚くべきものでした。私と並行して騎兵突撃を指揮し、弓と剣で幾人もの敵を討ち取ったのです」
「目覚ましい活躍であったと聞き及んでいる」 声に嘲りはなく、純粋な賞賛が混じっていた。
もしかして皇帝は私の味方で、助けてくれるかもしれない。……あるいは、帝国にとって有用な「資源」として私を見ているのか。そうでないことを願うばかりだ。
横の扉が勢いよく開け放たれた。
皇后が優雅に歩み寄ってくる。まるで宙に浮いているかのようだ。ところどころ透ける淡い青色のチュニックをまとい、精巧に結い上げられた髪は高くまとめられ、二本の編み込みだけが胸元に垂れている。どうやってあれが崩れずに保たれているのか、私にはさっぱり分からない。
彼女は玉座へとたどり着き、それをそっと撫でる。腕には黄金の腕輪、首には豪奢な首飾り。それだけで家が一軒買えてしまいそうなほどだ。
彼女はあからさまな軽蔑の目で私を見る。まるで場違いな存在でも見るかのように。
ちくしょう。今の私は、あらゆる面で彼女に劣っている気がする。汚れて臭くて、ボロボロで、みすぼらしくて、胸だって小さい。どうしようもないこともあるけれど、せめて準備さえできていれば、ここまでひどい格好ではなかったはずなのに。
皇后が腰を下ろす。「この場と皇帝陛下の御前に対する礼節の欠如を、正当化できるだけの正当な理由があることを願っておりますわ」
「おまえ、麗しき娘の訪問が、いつから私への侮辱になったのだ?」
最悪だ。これで彼女が私を殺したがる理由が、また一つ増えてしまった。
「マリクをいつも庇うのはおやめなさい。何のことを言っているのか、分かっているでしょう」
「何のことだ?」 皇帝は顎髭を撫でる。
「見て見ぬふりをしないで……」
侮辱しているのは彼女の方に見えるけれど、これが二人にとってはいつものやり取りなのかもしれない。
でも、どうやって私の上着のことを切り出せばいいの?
「陛下が我々の服装について仰っているのであれば」 マリクが遠慮なく口を挟む。「戦いが終わったばかりで、本日の出来事を一刻も早く皇帝陛下にご報告するため、直ちに参上したからです」
「それで、このような露骨な無礼が正当化されるとは思えませんわ。その側室は、まるで戦ってきたかのような姿ではありませんか」
「まるで、ではなく、実際に戦いました。それも見事な勇猛さで」 マリクは胸を張る。本気で私を誇りに思っているらしい。単なる演技ではない。
皇后は苛立たしげに鼻を鳴らす。私が兵士と服を取り替えたとでも思っているのだろうか。
「それは私の情報筋も裏付けている」 皇帝は、本当に私を気に入ってくれたらしい。
「側室にふさわしい振る舞いとは到底言えませんわね」
「どういう意味だ、おまえ」
「この者は私に引き渡されるべきですわ。姫君としてはあまりに不適格。下品ですし、帝国に利益をもたらすような政治的後ろ盾も持っていない。マリクほどの王子には、最高位の側室と正妻だけが相応しいのです」
この性悪女! 確かに図星な部分もあるけれど、私をマリクから引き離して、後でゆっくり殺すつもりでしょう。言い返さないように、私は唇を噛む。
「おまえの言うことは間違ってはいない。だが、マリクがようやく自ら女性を選んだ今、その選択に口を出すつもりはない。むしろ、これをきっかけにより有利な縁談が舞い込むかもしれぬ」
「相変わらず楽観的ですこと」
「それゆえに私は帝国を刷新できたのだ。それに、それはおまえが常に好んでいた私の一面でもあろう?」
「ええ……」 皇后は視線を落とし、微笑む。けれど何かが違う。本物の感情がそこにあるような、そんな気がする。もしかしたら彼女にも心があるのかもしれない。
もしかすると、皇帝が助けてくれるかもしれない。皇后が私を元の場所へ帰すのを許してくれるように。
マリクが咳払いをする。「ガイアが理想的な姫の象徴でないこと、そして彼女の行動が姫にふさわしくないことは認めます」
どうもありがとう、マリク。
「ですが、それはイシュダーの使徒としては相応しいものです」 彼は胸を張り、顎を上げる。
皇帝夫妻は対照的な反応を示す。皇帝は髭の下で微笑み、皇后は呆然としている。どうやら彼女は私の戦いぶりを全く知らないらしい。
マリクは戦の経緯を語り、私の介入、そして敵の指揮官を倒したことを説明する。ただし、彼は私がその男を殺したことにしている。誰にも邪魔されずに尋問するためだ。
さらに、兵士や民衆が私をイシュダーと呼んだこと、そして自分はガイアが女神に遣わされた存在だと信じていることも語る。
「証拠は、彼女が実際に女神の加護を受けていることを示しています」 マリクはそう締めくくった。
「いかにも、注目に値する武功だ。一度も戦場に立ったことも、剣を握ったこともない者だということを考えれば、特筆すべきことだな」 皇帝はそう同意した。すでに報告は受けていたようだが、その内容はマリクの話と一致しているらしい。
「マリク、本当に誇張ではないのですか? 可愛らしい顔というものは、人の考えや意見を容易く変えさせるのに、この上なく説得力を持ちますからね」 この性悪女、信じないどころか、私をまるで娼婦同然に侮辱して……。
「可愛らしい顔に何ができるか、あなたこそが一番よくご存知のはずだ」 マリクは皮肉をそのまま突き返した。「いずれにせよ、私のガイアは弓も剣も使いこなし、指揮官としての才も示し、イシュダーの加護をも受けている。そして、それについてはさらなる証拠があるのだ」
「証拠? 何かしら」
「父上、ガイアの剣をご覧になり、そのうえでムルの話をお聞きください」
私は剣を抜き、マリクに教えられた通り跪く。掌を上に向け、まるで盆に載せるように剣を高く掲げて、床の一点を見つめた。
足音が近づき、一人の男の足先が視界に入った。彼は剣を取り上げ、皇帝へと手渡す。
「見事な刃だ、青銅ではないな」 皇帝は感嘆の声を漏らした。「そして、この赤みがかった斑点は何だ?」
「陛下、ムルの話をお聞きください。ご存知の通り、彼は率直で誠実な男です。ガイアに何が起きたのか、すべてを語ってくれるでしょう」
皇后が苛立たしげに鼻を鳴らす。いい気味だ。私をマリクから引き離そうとした結果、こうして私の小さな勝利を見せつけられているのだから。まあ、私自身は今のところ何もしていないけれど、それは些細なディテールだ。
ムルはすべてを語った。あの部屋での試練――皇帝やその兄弟たちでさえ課された試験――から、私が鉄の存在を知っていたこと、そしてこの刃の由来に至るまで。
「ガイア」 皇帝が私を呼ぶ。「お前の世界では鉄が一般的だから、それを知っているのか?」
「その通りでございます、陛下」
「この剣から特別な力は感じぬが、事実を見る限り、お前に何らかの影響を及ぼしたと考えるのが妥当だろう。そして何より重要なのは、お前のおかげで、我が軍にも鉄の武器を配備できる道が開けたということだ。ムルとその民の協力が得られるのであればな」
「お望みのままに、陛下」 ムルが深々と頭を下げる。
「ガイア、今日の功績に免じ、お前を正式に我が息子マリクの側室として迎え入れる。お前たちの結びつきに対し、今も、そして将来も、異議を唱えることは誰一人として許さぬ」
最後の一言は、今日の皇后の策略に対する決定的なトドメとなった。
私は一礼した。「ありがとうございます、陛下」 その感謝に嘘はなかった。
「では、私は失礼するわ」 皇后が告げる。「今日はもう十分に見聞きしたわ」
「くそ……」 マリクが押し殺した声でつぶやく。「頼みたい大事なことがあったのに」
「きっと明日の祝典まで待てる内容でしょう」 皇后は優雅に、そして高慢な態度で玉座の間を去っていった。
認めざるを得ないけれど、彼女には私には一生持てないような、圧倒的な魅力と女らしさがある。
けれど今は、皇帝に私の上着のことを頼むしかない。
「マリク、何を願い出るつもりだったのだ?」
「父上にお話しすべきことかどうか、迷っております」
「申してみよ。お前たちの仲が良くないことは知っているが、私が力になれるかもしれんぞ」
「わかりました」 マリクは上着のことを話し始めた。私がそれをまだ取り戻せていないこと、皇后が持っているはずだということ、そしてそれが私にとって大切な品であることを伝えた。元の世界へ戻るための道具だということは伏せて。
「ふむ。今日はその話をするには最善の機会ではないようだな。明日の夜の晩餐会で話そう。お前の兄弟、テルピンとザナンザも出席する」
「ザナンザもですか? 父上、彼を招いてくださりありがとうございます」 マリクは彼に会えるのが本当に嬉しそうだ。
「当然のことだ、ミルワンとの次の戦も控えているからな」
マリクはうなずいた。
「ガイア、お前のその衣については必ず返すと約束しよう。今日の働きに報いるだけの価値が、お前にはある」
「感謝いたします、陛下」
もしかして明日の夜、皇后が晩餐会に出ている隙に彼女の屋敷に忍び込めるかも。なんだかルパンの三世のエピソードみたい。
「当然、お前もマリクに付き添って出席するのだぞ」
私は目を見開いた。「え……ですが、私はただの側室です」
「現時点で、お前は王子の唯一の女性だ。それに、今日の勝利を祝う宴の一部はお前のためのものでもあるのだからな」
「ありがとうございます」 私は頭を下げた。どうやら「泥棒」の出番はなさそうだ。
「それに、お前のより女性らしい装いというものも見てみたいしな」 皇帝が豪快に笑う。
「父上!」 マリクも一緒になって笑った。
……これは、ショッピングに行かなきゃいけないってこと?




