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エピソード2の第6章 不登校

「女の子なんだから、休日の部活の弁当くらい、自分で作れるようになりなさいよ」

「はあーい」


 妹の能理子のりこが、ママから注意されている。


「最近は絵理が、食事の支度を手伝ってくれるからありがたいわ」

「ちょっとそれおかしいんじゃないの?」


 能理子が抗議している。


「だってお兄ちゃん、学校さぼってるじゃん。理由はわかってるけどね。最近もお友達のあかねから、オカマの妹っていわれるから」

「あかねって?」

「知ってるでしょ。吹奏楽部で、お兄ちゃんと一緒の楽器を吹いている子。あの子、あの楽器で部員がひとりだったから、ファーストをずっと練習してたのに、お兄ちゃんが転校してきて、ファーストを奪われたって言ってた」

「お姉ちゃんって呼んでくれないの?」

「お断り。それで、部長の、亜由子さんだったっけ、会話をきいちゃったらしいよ」


 びっくりした。そんなことまであったとは。


 思い返せば、夏休みが終わって、学校に行くのが急に怖くなった。同じクラスの千里が、実はあたしがトランスだって気付いてた。それがわかって、再び千里に顔を合わせるのは、さすがにいやだ。


 適当な病名をつけて、2週間休んだけど、さすがにこれ以上休むのは無理がある。


「絵理さんいますか?」


 ある休日、不意の来客。インターホンのカメラを覗いたら、亜由子と千里。びっくり。居留守を使うわけにはいかない。

 玄関をあけた。


「絵理!ていうのかな?えったくん!がいいのかな?」「幼稚園ぶりだよ、仲良くしようよ」


 お客さんを部屋に上げるしかなかった。


「やっぱり、全然病気じゃなかったよね。登校しづらいの?あたしたちが昔の絵理のことを知っているってわかったからでしょ」


 そうなの。図星。


「あたしたちは、絵理が望むように合わせるよ。カミングアウトするんだったら協力するし、隠したいんだったら協力する」

「でも、後輩のあかねは、知ってるらしいよ。あたしと亜由子の会話、聞いてたんだって」

「そっか...じゃあ、もう開き直るしかないね」

「クラスの人たち、心配したり疑ったりしてるの?」

「全然。ただでさえ転校生だし、関心ないって感じ。そもそもうちのクラス、1学期から全然学校に来てない子もいるよね」

「そういえばさっきのは妹さん?すごく大人びてるね」

「能理子っていうの。あたしよりずっと頭も良くて、かっこよくて。部活も早速サッカー部に入って、大活躍してるよ」

「仲よさそうでうらやましい」

「とんでもない。ケンカしてばかり。あたしのことお姉ちゃんって呼んでくれないし」


 笑われた。そこは笑うとこじゃない。


 結局3週間の不登校の後、学校にはビクビクしながら行った。目立たないように毎日を過ごした。幸い、なのか、あたしがトランスだって知っているのは、亜由子と千里だけみたい。

 吹奏楽部は、コンクールが終わったら3年生は引退。後輩のあかねと会うこともなかった。あかねも、能理子以外には、あたしがトランスだって話を誰かにしたわけではなさそう。

 それにしても、こんなことを気にしてビクビクしてしまうなんて。



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