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令和鬼合戦:深淵の昇降機~人桃衆の遺産~

興味をもっていただきありがとうございます。

地下施設の隠し部屋で出会った研究主任・佐伯。彼が導く先には、人桃衆が最高機密として守り続けてきた「禁域」がありました。


重厚な鋼鉄製の扉が、油の切れた重機のような軋み音を立てて左右に開いた。

 現れたのは、戦車さえも数台は同時に収容できそうなほど広大な貨物用エレベーターだった。壁面には血管のようにのたうつ太いケーブルが這い回り、それらが脈動するたびに淡い紫色の光が点滅している。


「……みんな気を付けて。ここから先は、私たちの常識が通用しないかもしれない」


モモが端末を調整しながら警戒を促す。佐伯は震える指先で制御パネルを操作し、隠し持っていた特殊なバイパスチップを差し込んだ。電子的な承認音が静寂に響き、エレベーターは重い振動と共に下降を開始した。


「……かなり深いわね。移動だけでこれほど時間がかかるなんて」


 モモが端末の深度メーターを見つめながら呟く。デジタル表示の数字は、既に海抜を大きく割り込み、地下数百メートルを示していた。


「私も下のフロアにはほとんど行ったことがない。気を付けてくれ……着くぞ」


佐伯が不安そうにつぶやく。

下降が止まり、蒸気と共に扉が開いた。そこに広がっていたのは、見渡す限りの培養カプセルが整然と、かつ無数に並ぶ異常な光景だった。

 中に入っているのは、鬼とも人ともいえない実験体だ。鬼特有の負のエネルギーではなく、清浄で高純度な――まるで「極楽」を思わせる温かな光を放つ実験体も混ざっていた。


「……こいつら、性質がバラバラだ。こっちは鬼、こっちは……まるで人間だ。失敗作か?」


 九十九つくもが怪訝そうに、緑色の液体に浸かった実験体たちを覗き込む。


「いや、人桃衆にとってはすべてが『過程』だったのだろう。魂脈の性質を自由に書き換え、神の領域に近づくためのな。……しかし、なぜこれほどの施設を爆破しなかったんだ?」


羅夢多の問いに、佐伯が自嘲気味に笑い、血の付いた白衣を握りしめた。


「通常なら証拠隠滅で爆破する。だが、これだけの成果を捨てるのは惜しかったのだろう。彼らにとって、人桃衆の孤立は計算内だったがこれほど早く裏切りが露呈したのは計算外だった。だが、ばれた時の対策はあったはずだ」

「爆破がもったいない時は、そのまま回収させて、後から奪いに来る……か。なるほどな、ここのデータも全部必要ってことか」


 九十九が忌々しそうに床を蹴る。


(……あるいは、佐伯さんたちをあえて残したのも、後から回収しやすくするための『スパイ』なのかもしれないわね)


 モモはそんな不安を胸の奥にしまい込み、無線機を叩いた。


「不破さん、古関さん! 猿掌衆えんしょうしゅうの回線に繋いで。今から、超高度推論型AI『ミズチ』を同期させるわ。ここの全データを一気に吸い上げてもらうわよ!」


非常階段を上り、管理区域の重厚な扉をこじ開けた藤林たちは、異様な光景に足を止めた。

 無機質な廊下に横たわっていたのは、人桃衆の戦闘服に身を包んだ男たち。その外骨格は一般兵のものよりも精巧で、隊長・副隊長クラスであることを示していた。


「……おかしいわね。犬牙衆はまだ一人もこのエリアに侵入していないはずなのに」


 不破計良ふわ けいらが、クナイを構えながら周囲を警戒する。

そこには、外部からの侵入者と戦った形跡はなかった。あるのは、背後から撃たれたような不自然な倒れ方をした遺体と、血の海。


「おい、しっかりしろ!」


 藤林が、まだ微かに呼吸をしている男に駆け寄る。その顔を見た瞬間、藤林の瞳が激しく揺れた。


「……長谷川はせがわか? お前、長谷川なのか!」


そこに倒れていたのは、かつて藤林の部下として犬牙衆八番隊に所属していた男、長谷川はせがわ 健太けんただった。実直で真面目、曲がったことを嫌う性格が買われ、中忍に昇格した際に人桃衆の隊長へと出向していった男だ。


「……藤林……隊長……。何が……起きてるんですか……部下に……襲われ……」


 長谷川は腹部を深く裂かれ、意識を失いかけていた。隣に倒れている副隊長も、既に虫の息だ。


「どういうことだ!?人桃衆が裏切ったんだ。……いや、最初から俺たちを騙していた」

「そんな……馬鹿な。俺たちは……平和を守るために……」


藤林は悟った。人桃衆の現場を指揮する隊長や副隊長クラスは、主に犬牙衆から出向した「戦闘力と指揮能力」が認められた者。対して、その配下となる一般隊員たちは、強化手術により感情を削られ、知能を抑制された「強化人間」が大半だ。

 今回、人桃衆の上層部は、真実を知り正義感に動かされる可能性のある「隊長・副隊長クラス」を、「隊員」たちに襲わせ、口封じを行ったのだ。


「ずっと……信じていたのに……なんてことだ……」


 絶望に染まる長谷川の言葉を、藤林は拳を握りしめて聞くしかなかった。


「救護班を!急いでくれ!」

「とっくに呼んでます……日本中が戦っているので時間がかかるそうです」


 不破は地上の戦いの時に呼んでいたが厳しい状況にあるとすでに聞いていた。

できる手当をした一行は、データ管理室のメインサーバーに猿掌衆の特製デバイスを叩き込んだ。その時、モモから連絡があった。


「不破さん、古関さん! 猿掌衆えんしょうしゅうの回線に繋いで。今から、超高度推論型AI『ミズチ』を同期させるわ。ここの全データを一気に吸い上げてもらうわよ!」

「了解! ……猿掌衆回線、直結! 超高度推論型AI『ミズチ』。この基地の全システムを掌握、コントロールをすべて支配しなさい!」


管理室のモニターが一斉に猿掌衆のエンブレムに塗り替えられていく。

 古関は、力なく横たわる長谷川たちを見つめながら、ぽつりと呟いた。


「……何も知らずに正義を信じて働いていた者も、相当数いたのでしょうね。彼らもまた、被害者だったというわけですか……」


ミズチの解析が進む中、スピーカーから無機質な合成音声が響く。


『――警告。最下層にて、高エネルギー反応を確認。「結界鬼」のバイタル、急上昇。……対策班は大至急、向かってください』


藤林は最深部へと続くモニターに目を向けた。そこには、羅夢多たちが今まさに直面している、神話の化身が映し出されていた。


第六十九話をお読みいただきありがとうございました!

上層チームが直面した、現場の「正義」が切り捨てられた悲劇。

現場で戦う者たちが抱いていた誇りは、上層部の冷徹な計算によって踏みにじられていました。

そして、地下での異常事態。

いつも応援ありがとうございます!ペースを整え、より濃密な物語をお届けします。次回の更新もお楽しみに!

週3回(月・水・金)の更新になります。

面白かった、続きが気になる!と思っていただけましたら、ぜひ【評価】や【ブックマーク登録】をよろしくお願いいたします!

※AIとの共同執筆作品となります。


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