↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
命の糸は、君にだけ繋がっている  作者: YunCang


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
86/104

第86話 泣いたあと

 帰り道、カイはほとんど喋らなかった。


 俺も喋らなかった。


 北邸に戻って部屋へ入る。


 扉が閉まった瞬間、抱きしめられた。


 強い。


 でも痛くはない。


「ノア」


「いるよ」


「……ああ」


 それだけ。


 俺は背中へ腕を回す。


 しばらくして肩が震えた。


 顔は見ない。


 見なくても分かる。


 泣き終わるまで、ただ抱いていた。


 やがてカイが顔を上げる。


「見たか」


「何を」


「……泣いたところ」


「見てない」


「嘘だ」


「見えてない。肩しか」


「同じだ」


「違う」


 少し笑う。


 カイも笑った。


 俺の頬に手が触れる。


「ありがとう」


「何回目」


「知らない」


「もっと言っていいよ」


「調子に乗るな」


「もう乗ってる」


 キスされた。


 今度は俺からも返す。


 悲しみが消えるわけじゃない。


 でも悲しいまま、人に触れていていい。


 たぶん、それも生きてるってことだ。


 カイが泣き終わったあと、俺たちは床に座った。


 寝台まで数歩なのに動く気になれなかった。


「兄上が死んだ時」


 カイがぽつりと言う。


「俺は泣かなかった」


「泣けなかった?」


「ああ。戦闘が続いていた。指揮官だった」


「今回、四年分?」


「たぶん」


 俺は彼の肩に頭を乗せた。


「重い」


「どっちが」


「頭」


「失礼」


 カイの口元が少し上がる。


「でも、この重さは嫌じゃない」


「また急に言う」


「今なら言えると思った」


 俺は顔を上げた。


「じゃあ俺も」


「何だ」


「泣いてるあなた、嫌いじゃない」


「好きとも言え」


「欲張り」


「兄に似た」


 初めて自分からそう言った。


 俺は笑って、彼の頬に残った涙を親指で拭った。


 泣いたことを隠さなくなったあと、カイは急に疲れが出たらしい。


 床に座ったまま俺の肩へ体重を預ける。


「重い」


「さっきお前がやった」


「俺より重い」


「当然だ」


「そこ威張る?」


 笑いながら支える。


 数分後、本当に寝息が聞こえた。


「カイ?」


 返事なし。


 こんなところで寝るほど疲れていた。


 俺は毛布を引っ張って二人にかけた。


 寝台へ運ぶ力はない。


 翌朝、先に起きたカイが俺を抱えて寝台へ移したらしい。


「逆じゃない?」


「起きなかった」


「覚えてない」


「なら問題ない」


 こういう朝も、たぶん家族になる途中だ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。