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七日目までに

 ユリウスの身体は、目に見えて薄くなっていた。


 指先から白い粒が落ちる。


「あと何日?」


「五日」


 リヒトが答える。


「安定法は」


「銀赤以外なら、原始糸核を使う」


「それ何」


「北のさらに奥にある」


 嫌な予感。


「先に言わなかった理由は」


「取りに行くとたぶん死ぬから」


「お前」


 カイの声が低くなる。


「だから言わなかった」


「説明」


 俺が促す。


 原始糸核は、戦争中に発見された巨大な命糸結晶。

 死者の残留縁を吸い込み、保存する性質がある。


「教団はそれを研究して、RETURN計画を作った」


「今もある?」


「ある。雪峡の地下」


 マティアスが顔を上げる。


「雪峡は封鎖地です。戦後、崩落で三十人死んだ」


「本当に崩落?」


 リヒトが笑う。


「違う。糸核が暴走した」


 カイが地図を見る。


「往復三日」


「ユリウスさんは?」


「ここに残した方がいい」


 俺はユリウスを見る。


「俺も行く」


「駄目です」


 珍しく俺とカイが同時に言った。


 ユリウスが眉を上げる。


「息ぴったりだな」


「そこ喜ぶところじゃない」


 結局、ユリウスはレグナに残る。


 俺、カイ、リヒト、マティアス、騎士四名。


 出発は夜明け。


 残り五日。


 出発前、ユリウスはカイに古い短剣を渡した。


「覚えてるか」


「兄上の予備剣」


「お前が十三の時、勝手に持ち出した」


「……覚えていない」


「嘘だな」


 俺は笑う。


「また嘘下手って言われてる」


「兄上まで」


 ユリウスは短剣を俺へ向けた。


「ノアが持っててくれ」


「俺?」


「こいつ、感情的になると剣を増やすから」


「どういう理屈」


「止める時に使え」


 カイが深くため息をついた。


 俺は短剣を受け取った。


 柄には小さく兄弟の頭文字が刻まれている。


 KとJ。


「返ってきたら返します」


「いい。君にやる」


「高そう」


「そこ?」


「大事」


 ユリウスが笑った。


 その笑顔を残して、俺たちは雪峡へ向かった。

 出発前の作戦会議では、雪峡の地図を三枚並べた。戦時中の軍用図、戦後の測量図、リヒトの記憶から描いた地下図。三枚とも入口の位置が違う。


「一番信用できないのは?」


「僕の記憶」


 リヒトが即答した。


「器を替えるたび、距離感が少しずつずれる」


 リヒトは自分から記録簿を差し出した。俺は受け取り、頁の端に折り目をつける。


 出発前、カイは往復三日の行程に五日分の食料を積ませた。


 「多くない?」


 「雪山で予定を信じるな」


 兄の残り時間を見ても、準備だけは削らなかった。


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