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第7話 嫉妬じゃないなら何なんだ

 事件の調査は進んだ。


 進んだが、問題も増えた。


「ノアさん、こちらの資料も確認をお願いします」


「はい」


 王室警護局の臨時執務室。


 机の上に書類を積んだのは、第二調査隊のエリオットだった。


 二十六歳。明るい茶髪。よく笑う。仕事も早い。


 そして、俺の糸が普通に見える人間だ。


 青が二本。金が三本。赤が一本。


「恋人いるんですね」


「え?」


「いや、何でも」


「ノアさん、たまに怖いこと言いますよね」


「職業病です」


 エリオットが笑った。


「昼、一緒に食べません?」


「いいですね」


「新しい店できたんですよ」


「肉?」


「肉です」


「行きます」


「決断早いな」


 そのとき、背後から低い声がした。


「行かない」


 俺とエリオットが同時に振り向く。


 カイが立っていた。


「誰が?」


「お前」


「何で」


「午後、現場へ行く」


「昼くらい食べられますよ」


「移動する」


「一時間ありますけど」


「ない」


「時計見ました?」


「見た」


 エリオットが気まずそうに笑った。


「じゃ、また今度にします?」


「いや、行きます」


「行かない」


「閣下」


「何だ」


「俺、囚人じゃないですよね」


「知っている」


「じゃあ」


「弁当を用意した」


 沈黙。


「……何を?」


「肉」


「何の」


「牛」


 エリオットが俺を見る。


 俺もエリオットを見る。


「すみません」


「いえ。何か分からないけど、俺が負けた気がします」


 カイは無言で俺の襟首を掴んだ。


「引っ張らないでください」


「行くぞ」


「子供じゃないんだから」


 廊下に出たところで俺は腕を振りほどいた。


「何なんです?」


「何が」


「さっきから」


「時間がない」


「エリオットと飯行くの嫌だった?」


「別に」


「じゃあ何で」


「仕事だ」


「本当に?」


「本当だ」


 俺は顔を覗き込んだ。


「嫉妬じゃないなら何なんだ」


 カイの眉がぴくりと動いた。


「違う」


「即答」


「違うものは違う」


「なら今度、エリオットと夜飯行ってもいい?」


「駄目だ」


「ほら」


「護衛上の問題だ」


「屋敷に呼ぶ」


「駄目だ」


「何で」


「……」


 カイが黙る。


 俺は待った。


「お前が、あいつと話す必要はない」


「それを嫉妬って言うんですよ」


「違う」


「じゃあ何」


「気に入らない」


「何が」


「全部だ」


 乱暴すぎる。


 なのに、少し笑いそうになった。


「閣下」


「何だ」


「それ、もっと悪いです」


「知るか」


 昼の弁当は本当に牛肉だった。


 しかも俺が前日に美味いと言った香草焼き。


「これ、わざわざ?」


「厨房が作った」


「指示したの誰です?」


「俺だ」


「へえ」


「何だ」


「別に」


 口元が勝手に上がる。


 カイが不機嫌そうにパンをちぎった。


「笑うな」


「笑ってません」


「嘘が下手だな」


「誰かさんに似たんでしょうね」


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