第49話 君にだけ繋がっている
事件後の処理は続いている。
断糸教団の残党は各地にいる。
エドガー・セインの研究記録も、まだ半分しか解読できていない。
ラウルは正式に裁判へ送られた。
王宮の屋上。
風が強い。
「これで終わり?」
俺が聞く。
「一つはな」
「残党いるし」
「ああ」
「俺の能力も、まだ全部分からない」
「ああ」
「俺たちの糸も」
「ああ」
「全部ああで返すな」
「聞いている」
「感想」
「腹が減った」
「最低」
「昼を抜いた」
「俺も」
「帰るか」
「そうしよう」
歩き出す前に、カイを見る。
糸が増えた。
国王へ。
部下たちへ。
ラウルへさえ、細い青が残っている。
全部、まだ薄い。
十年分の傷は一晩では戻らない。
それでいい。
「何だ」
「糸見てる」
「戻ったか」
「うん」
「お前とのは?」
「ある」
「……そうか」
「気になる?」
「かなり」
以前なら「少し」と言っただろう。
「見たい?」
「見えるなら」
俺は手を取った。
「目閉じて」
「なぜ」
「いいから」
カイが目を閉じる。
俺も閉じる。
共鳴。
暗闇に一本の光が浮かぶ。
銀赤。
カイが息を呑む。
「見える?」
「……ああ」
「これ」
「俺とお前か」
「そう」
十年前、十四歳の俺が結んだ一本。
でも、今はあの時とは違う。
太さも、光も。
途中に小さな結び目がいくつもある。
「何だ、あれは」
「たぶん、選んだ跡」
「選んだ?」
「喧嘩して戻った時。二人で結糸した時。昨日も増えてる」
「昨日」
「言わせるな」
暗闇でも笑われたのが分かった。
「これからも変わる?」
「たぶん」
「切れることも」
「あると思う」
カイの気配が硬くなる。
「嫌そう」
「嫌だ」
「でも一人じゃ決められないよ」
「なら二人で決める」
俺は笑った。
「うん」
目を開ける。
光はカイにはもう見えない。
「消えた」
「あるよ」
「お前が見えるならいい」
「俺が嘘ついたら?」
「その時は聞く」
「前は『嘘が下手』って言ったのに」
「お前が、決めつけるなと言った」
また変わった。
俺はその変化が好きだった。
手を繋いだまま、屋上を降りた。
階段の途中でカイが一度だけ握り直す。
俺も同じだけ強く返した。




