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命の糸は、君にだけ繋がっている  作者: YunCang


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第14話 二十一日しかない

 王都には、およそ二十万人が住んでいる。


 二十万人分の糸を一度に切る。


 普通なら不可能だ。


「普通なら、な」


 会議室で教授が言った。


「灰月事件で使われた術式は試作だった。十年かけて完成させた可能性はある」


「止め方は?」


「核を壊す」


「核って?」


「知らん」


「役に立たないな」


「わしに言うな」


 俺は机に突っ伏した。


「二十一日」


 カイが地図を広げる。


「黒い糸の収束地点は?」


「旧王都地下」


「灰月礼拝堂か」


「たぶん」


「なら行く」


「今?」


「今だ」


「罠ですよ」


「知っている」


「じゃあ」


「罠でも行かなければ何も分からない」


 正論。


 腹立つ。


「俺も」


「お前は残れ」


「は?」


「今回は危険すぎる」


「俺がいなきゃ黒い糸見えないでしょう」


「他の方法を探す」


「二十一日しかないのに?」


「それでもだ」


「嫌です」


「命令だ」


「直属でも聞かない」


「ノア」


「俺の能力が必要だから呼んだんでしょう」


「状況が変わった」


「何が」


「お前を失う可能性が高すぎる」


 部屋が静かになった。


 教授が「あー」と言って立ち上がる。


「茶でも飲んでくるかの」


「教授」


「若い者同士で決めろ」


 逃げた。


「カイ」


「駄目だ」


「聞いて」


「聞いても変わらない」


「俺はあんたに守られるためだけにいるんじゃない」


「分かっている」


「分かってない」


「分かってる!」


 初めて怒鳴られた。


 俺も黙る。


 カイが拳を握る。


「分かっているから怖いんだ」


 声が低い。


「お前は必要なら自分の手を裂く。知らない人間の糸まで繋ぐ。自分が死ぬかもしれなくてもやる」


「……」


「だから連れていきたくない」


 俺は息を吐いた。


「それ、ずるいですね」


「何が」


「そんな言い方されたら怒れない」


「怒っていい」


「じゃあ怒る」


「勝手にしろ」


 俺は机を回り込んだ。


 カイの前に立つ。


「俺も怖いですよ」


「何が」


「あんたが一人で行くのが」


 彼の目が揺れた。


「十年前みたいに、また糸が全部消えたらどうする」


「俺は――」


「俺だけ残ればいいとか言うなよ」


 先回りした。


 カイが口を閉じる。


「俺はあんたの最後の一本になりたいわけじゃない」


 言いながら、自分でも意味が分かった。


「ちゃんと、全部取り戻したい」


 家族。


 友人。


 部下。


 誰かと喧嘩した記憶。


 誰かと笑った時間。


 俺だけじゃなく。


「だから一緒に行く」


「……頑固だな」


「誰かさんに似た」


「似てない」


「似てます」


 カイが額を押さえた。


「絶対に俺から離れるな」


「努力します」


「約束しろ」


「約束する」


「勝手に糸を触るな」


「状況による」


「ノア」


「はいはい。なるべく」


「信用できない」


「じゃあ繋いどきます?」


 手を出す。


 冗談だった。


 カイは本当に握った。


「ちょっと」


「お前が言った」


「今から地下まで?」


「嫌か」


 その聞き方はずるい。


「……嫌じゃない」


「なら行くぞ」


 教授が扉の隙間から顔を出した。


「終わったか?」


「見てたんですか」


「茶がまだ沸かん」


「絶対嘘だ」


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