憑依者は精霊と出会う
ドンッ
何かに押さえつけられる、そんな感覚がジェーンらを襲った。だがそれも一瞬の出来事。すぐに体は自由を取り戻し、ジェーンは顔を上げた。
激しく揺れていた地震も、既に収まっている。
そして
『お前がオレサマを起こしたのカ?それともあっちのお前カ?』
『なんだか普通の人間ネ』
『あれ、よく見てヨ。この人間の魂、カズマに似てル!』
『え?まじだ!本当だ!お前なんだ?カズマの仲間かヨ?!』
『それならそういって欲しいノ』
複数の小さな生き物が目の前を飛び交っていた。
「え、え、?よ、妖精?それにカズマって?」
ジェーンは目をパチパチと瞬きながらも問いかけた。
返事があると思っていなかったのか、小さな生き物はジェーンに興味を抱き周りに集まる。
そんな不思議な光景をカイラスはジェーンを抱きしめたまま、見つめていた。
『お前オレサマの言葉がわかるのカ!』
『うそ!本当カズマみたい!嬉しいワ!』
『また俺タチの言葉がわかる人間がくるとはナ!』
『起きてよかったかもしれないナ!ハハハ!』
「ジェーン、これは一体……」
「私にもわからないわ………」
困惑するジェーンだが、カイラスの様子にどうやら姿は誰にでも見れるようだと悟る。だとすれば問題は言葉である。
小さな生き物はジェーンに対し“言葉がわかるのか?”と問いかけていた。遺跡にほられた文字もジェーンにしか読めなかったことから、おそらく小さな生き物たちの言葉はジェーンにしか聞こえないものなのだと判断した。
ならば呆けているわけにはいかないと、ジェーンは気持ちを切り替える。
『それにしても仲いいネ!抱き合ってるなんてラブラブだわ!』
『お!子作りか!見ててもいいカ?』
『バカ!カズマだって見るなっていってたでしょ!人間は恥ずかしがりやなのヨ!』
「へ!?違うから!!」
【子作りなんてするわけないじゃん!!姉弟なのよ!】
ジェーンは咄嗟に否定するが、小さな生き物にじっと見つめられ、今自分がどんな体制にいるのかを自覚すると、突き飛ばすようにカイラスの胸を押す。だが体格の差から少しの隙間は出来たが、またすぐに抱きしめられてジェーンは赤面した。
【顔がイ……って違う!】
『何が違うのー!?』
『イチャイチャラブラブー子作りー!』
【それも違う!】
「だから違うって!」
楽し気に飛び交う小さな生き物にジェーンは叫ぶように否定する。わかっているのはジェーンだけであるが、カイラスはジェーンの心の言葉からある程度の予想をしているがために、少し嬉しそうに顔を綻ばせていた。
「……そろそろ私たちにも状況を説明してくれないか」
和気あいあいと楽し気な雰囲気の中に、ムッと眉を顰め割り込むシグルドにジェーンはハッとする。
【あ、そうだわ。結局この妖精たちが何者かをわからないと、そしてこの極寒期をどうにか出来るか、確認しないと!】
ジェーンはカイラスの胸をポンポンと叩き「離して」とお願いした。カイラスは渋々ながらも腕を解き、ジェーンを開放する。
ジェーンは立ち上がると小さな生き物の前に歩み寄り尋ねた。
「貴方たちは何者なの?妖精?それとも遺跡に書かれていた精霊?」
『何者かっていえば、オレサマだな!』
『バカ!それ質問の答えじゃないかラ!』
『カズマは私たちのこと精霊って呼んだヨ!』
『僕たちに固有名詞はないヨ、好きに呼んで』
「じゃあそのカズマっていう人と同じ呼び方をするね」
『オケオケ~』
『まあいいだろウ』
『アンタ本当素直じゃないわよネ。勿論いいヨ!』
『僕も異議なシ』
素直で可愛い小さな生き物は精霊であることがわかると、ジェーンの中にある希望が芽生えた。
それは世界に到来した極寒期である。遺跡の中は何かに守られているように温かさが保たれているが、一歩外に出れば目を開けるのも厳しいほどに吹雪いていることだろう。遺跡の言葉通り、世界の救済が可能であるか、ジェーンはごくりと唾を飲み込むと問いかけた。
「精霊さん、外は今吹雪が続き、人が暮らすには難しい環境になっているの。あなたたちはこの状況を改善、できるかしら?」
『出来るよーもちのロン!』
『僕たちが寝ている期間が長かったから少し時間がかかるかもだけど、環境を戻すことは可能ダネ』
『要は大気に魔力を満たせばいいんだからナ』
『簡単だけど………、でも、ヤダ。ヤリタクナイ』
「え……どうして?」
『人間はカズマを殺した。僕たちと話が出来る人間は貴重なのに、殺しタ』
『確かに。ここでまた魔力で満たしても同じことが起きる。人間は汚いカラ』
『それな。俺らの魔力が大気中に満ちているから魔法が使えるのに、その魔法でカズマを殺した人間はキライ』
『そう。だから手伝いたくなイ』
「今のままじゃ私も死んじゃうわ!」
『お前はここにいればイイ!ここなら暖かいだろ?俺たちの寝床だったし、これからは俺たちがいるんだかラ』
『そうだよ!それいい!ここで私たちとお喋りしようヨ!』
『意義ナーシ!』
『そうとなったら環境を整えなきゃネ!』
精霊たちはジェーンから離れると遺跡の中を飛び交った。キラキラとした粉末のようなものをバラまきながら飛ぶ様子に、シグルドとギルバードは驚く。
カイラスはジェーンに近寄ると問いかけた。




