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心が読める義弟は姉を離さない  作者: あお


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憑依者はお願いする

 尊敬するような眼差しでジェーンを見るアリスだが、ジェーンの気持ちは違う。


【王族に頭下げられて平然としてられるかってのよ!王妃になって同等の立場になるのならまだしも、婚約を破棄する気満々なんだから「あの時よくも謝罪を要求したな」とか言って恨まれたら溜まったもんじゃないわ!こう言うときって、ヒロインが関わったとしても記憶が捏造されて、私が悪いって展開になるんだもの。危ない芽は摘んでおかないと!】


 決して王族というシグルドの立場を考えたことではないが、結果的にジェーンは謝罪を拒否する。受け入れないという事ではなく、一度謝罪した以上する必要がないという事を伝えたことで、アリスを納得させた。


「そういえば、シャンデリアに仕込まれていた記憶媒体、あれには何が記憶されていたのですか?話に出てきませんでしたが……」


「パーティー会場の映像だ。特に不自然な部分が映し出されていないことから、証拠としての提出はしないことと判断している」


 シグルドはそう話したが実は違った。錬金術師が作った記憶媒体には拡大しても人の顔かたちが確認できる。そんな映像に、演奏中一人だけ不安そうにシャンデリアを見つめたセリアの姿が映し出されていた。


【あれは証拠にはなり得ない。知っているからこその反応と解釈もできるが、逆に言えば“グラスが割れることは知っていてもシャンデリアが割れるとは知らなかった。何故ならガラス製のシャンデリアなんて知らないし、共鳴現象にあたるガラスであることも判断することが私には出来ないからだ”と、下手をすれば言い逃れが出来てしまうからな】


 ガラス製のシャンデリアは王族が初めて依頼し完成したものであって、通常のシャンデリアとは全く形状が違っている。そこを掘り下げたことで逃げられるわけにはいかないというシグルドの考えを読んだカイラスは、そういうことかと一人納得していた。


「君たちの話というものを聞かせてくれるか?」


 シグルドからの話が終わったことで、今度はジェーンとカイラスが促された。

 二人はクリスやアリスに説明したことを話し、その話を聞いたシグルドは悩むように考え込んだ。


【あれ……?意外と否定しないのね?】


 王族として、根拠として弱い話に耳を貸すわけにはいかんと、速攻で断られると思っていたジェーンは思わず目を見開いて驚いた。

 そんなジェーンの視線に気づいたシグルドは不可解そうにしながらも、何かを察するとため息を付いて口を開く。


「今までは先入観から誤解していたが、今はそうじゃない。これでも私は君の知識量には尊敬しているんだ。すぐに異変に気付くことが出来る判断力、オオオナモミや薬品名など、書物を開くことなく答えた知識力。君は以前自分は頭がよくないと卑下していたが、私はそう思っていない。だからこそ、今の話もただ否定するのではなく、専門家への調査を依頼するための段取りを考えていた」


 まさかそんなことを言われるとはと驚くジェーンは「ありがとうございます?」と疑問形で答えることが精いっぱいだった。そんなジェーンにシグルドが苦笑するも怒りはしない。今まで誤解し疑ってきたのは自分で、ジェーンの戸惑いも当然だと受け止めていたからだ。


「殿下、専門家への調査依頼を考えることよりもまず、お願いしたいことがあります」


 決していい雰囲気になっていたわけではないが、それでも嫉妬心を芽生えさせるカイラスはジェーンを背に隠すようにして前に出る。

 そんなカイラスの行動にもシグルドは気に留めず尋ねた。


「お願いしたいこととは?」


「錬金術師への依頼です。王家が新たなる光源の開発を依頼したように、防寒対策としての暖房機についての開発を依頼していただきたいのです」


「確かに……、寒くなるとなれば木材が必要となる。そしてその期間も長くなれば木材もなくなり、熱を生み出すこともままならなくなった国で、餓死者だけでなく凍死する者が増える、ということか」


 シグルドは「わかった。依頼しよう」と約束すると「他は?」と問いかけた。


「王家の方でも備蓄を増やしてください。勿論根拠となる情報がないと難しいことはわかっていますので、専門家には学園内で私たちが見つけた白く変色している葉と、千年程前の一番古い資料から調べていくようにお伝えください」


「えらく具体的だな。その自信が来る情報の元をぜひとも聞かせてもらいたいところだが、………今はやめておこう」


 ジェーンはギョッとするものの踵を返すシグルドに安堵した。「大丈夫か?」と問いかけるカイラスに「平気平気、でもこれで対策もばっちりね」と指を二本立て二ッと笑う。

 普通の貴族令嬢には見られない言動をカイラス相手ではあるもののよくするジェーンは、それが原因で疑われていることを知らなかった。カイラスもまた、ジェーンに目を向けていることから、シグルドが何を考えてジェーンを見つめているのかを気付いていない。


【……ひょっとしてジェーンは……、いや、ありえないな。魔法は既に廃れ、召喚も出来なくなった現代に“通訳者”が現れるわけがないのだ】


 シグルドは「進展があれば共有しよう」と告げるとさっさと部屋を後にした。その後ろをギルバードが付いていき、アリスはその場に残る。

 そして簡単に書いた地図をジェーンに渡すと、指をあてながら食べられそうな野草が生えている群生地の情報を伝えていった。





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