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心が読める義弟は姉を離さない  作者: あお


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協力者たちへの依頼




 店から出た二人は急いで学園へと戻った。服は普段着に着替えてしまっているが、流石にドレスもしくは学生服に着替える時間の余裕はない。

 パーティーが開催されたのは昼過ぎで、シャンデリアが落ちるという事件が起きたのがパーティー開催から一時間後。シグルドの意識を待っている間にも時間は当然のように過ぎ、店を出た今、空は既に赤く色づき始めている。


「殿下はもう王城に戻ってしまったかな……」


「そうかもしれない。怪我をしているとはいえ、起き上がれることが出来るのであれば、自らの口で説明しに行く可能性もあるだろうから」


「そんな……今は一刻も早く暖房器具の発明をしてほしいのに……」


【ぶっちゃけもう事件なんてどうでもいいのよ!】


 王家の影を借りるため人伝えに依頼してはいるものの、詳細を説明しなければ流石に陛下も動かないだろう。子を想う父親であればその可能性も考えられるが、シグルドの父親は一国の王である。手渡されていた紙は小さく、二人は中身を確認してはいないが事細かい情報が書かれているとは思えなかった。

 そしてこう言ってはあれだが、極寒期が近いうちに訪れるとわかってから、ジェーンにはもう、シャンデリアを落とした事件が故意であるものでも事故によるものとされてもどちらでもよくなっていた。

 事件が起きてすぐの時は、命を奪いかねない出来事に憤りを感じ、罪が暴かれ捕まって欲しいと考えていたのだが、国を揺るがす事態の規模に、どちらを優先するべきかという考えから、完全に極寒期への対策へと気持ちを切り替えてしまっていた。


(まあ僕はどうでもいいとは思わないけどな)


 一方カイラスは心を読むという能力から、確実にセリアが犯人であることを確信していた。

 子分のように付きまとっている取り巻き立ちの心からはシグルドを心配する気持ちしか読み取ることが出来なかったが、セリアの心には【聞いていないわよ!グラスだけじゃないの!?】という考えを読むことが出来たのだ。

 正直共鳴現象という現象を知らなかったカイラスには、その言葉だけではどういう意味かわからなかったが、今は違う。ジェーンの綾としての知識から、セリアは故意に共鳴現象を引き起こそうとしていた。対象がグラスだけだと考えていることを主張されてはどうなるかわからないが、それでも一番ひどいけがを負ったのがシグルドであることからなんらかの処罰は下されるだろうと考えている。


(今まで散々我慢してきたんだ。あの女には相当の処罰を受けてもらわなければ……その為にも第二王子には馬車馬のごとく働いてもらわなればな)


 不敬にも取れる様な事を考えているカイラスは、馬車から学園がある方向を眺めるジェーンに優しく微笑みかける。


「確かに急がなければならないという考えはよくわかるが、他にも出来ることはあるだろう?」


「例えば?」


「ランドール男爵に話をすることだよ」


「アリス様に?」


 不思議そうに首を傾げるジェーンにカイラスは深く頷いた。


「ノンカフェインコーヒーの製作拡大に関して、ランドール男爵の知り合いを雇用するという話があっただろ?第二王子だけでなく、男爵にも話をし、信じてもらった暁には僕たちの物資を与えるという提案をして、食材集めに協力をしてもらうんだ」


「……確かに、私も作中のストーリーを知ってるから植物について調べてきたからそれなりに知ってるけど、平民なら山にも詳しいから山菜についても知ってるかもしれないわね。寒くても自生できる食材の群生地を今から見つけておけばなんとかなるかも……」


【育てられるならそれもいいかもしれないわね、五年もあったら数も増やせるだろうし、その間に出来た食べ物は上げれば喜ばれるわ】

【山でも国の中にあるなら、殿下に話をして王家の所有地に出来たらすればいいし、そしたら王家も感謝するわよね】

【断罪ルートもほぼ回避できてるし、食糧不足で混乱する事態を未然に防ぐ対策に一役かってるってなったら、それこそ褒章ものかも……いやいや都合よく考えすぎよね】

【あー!本当に番外編も読んでおけばよかったわ!この極寒期を吹っ飛ばせるようなそんな展開もあったかもしれないのに!】


 ポンポンと吹き出しが出てくるが、カイラスの提案に思うことはないようだ。

 カイラスは「第二王子が王城に戻っていたら、ランドール男爵と話をするってことでいいか?」と問いかけると、ジェーンは「それでいいわ」と頷いた。


 そして学園に戻るとカイラスの言葉通り、シグルドはギルバードを連れて王城へと向かったばかりだった。

 二人は話した通りアリスの元へと行くと、クリスに話した内容を伝え、そして協力を要請した。

 クリスとは違い、実際に白く変色する葉を目にしたアリスはすぐに二人の話を信じた。自生する山菜だけでなく、動物の狩りも同時に行い、干し肉といった備蓄も平行していくと話すアリスに二人は喜んだ。


「他にはどのようなことが必要でしょうか?」


 その質問に対し、ジェーンは必死に頭を捻り情報を絞り出す。


【極寒期は氷河期のように雲が空を覆い、太陽の光が不足しちゃう。そんな状況が続いて骨が柔らかくなってしまう骨軟化症にかかる人が増えたのよね。だから解消するにはビタミン……なんだっけ?あと他の病気もあった気がする……ああああ、医療専門じゃないから全部同じに思えちゃう!】


「ジェーン様?」


 考え込むジェーンを心配そうにアリスは顔を覗き込んだ。ジェーンは視界に現れたアリスにハッと意識を取り戻し「魚やキノコ類があるといいわね!あと海藻もあるといいかもしれない!」と答える。


「キノコも探しますが、海鮮に関してはギルバード卿にお願いした方がいいですね」


「そうなんですか?」


「はい。彼の家であるマクレーン家は海沿いの領地を持っていると聞いたことがあるので」


 ニコリと笑いながら情報を教えてくれたアリスにジェーンは破顔した。


【すごいわ!破滅ルートを回避したから?なんだが運命が味方してくれているみたい!】


「ありがとうございます!ギルバード卿にもお話ししてみますね」


「ええ。では私はこれで。早速頼みに行ってきます」


「え、ですがもう夜ですよ?明日にしては……」


「思い立ったらすぐに行動!これが私の信条なんです。それにこの信条のお陰で殿下も助けることが出来たんですよ?」


 アリスはそう言って、闇色に染まり始める外へと出かけて行った。

 嬉しそうに頬を赤く染めたアリスは着実にシグルドへの恋心を育てている途中なのだろう。本当にアリスの恋が展開を速めているのならば止めたくもなるところだが、それを確かめる方法もない。

 今は嬉しそうに協力してくれた友達に、ジェーンは感謝をした。







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