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心が読める義弟は姉を離さない  作者: あお


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ヒロインに芽生える感情

『もうわかってると思いますけど、殿下の想い人はアリス様ですよ。好きな人が現場とはいえ危ない場所に行くとなっては休めるものも休めません。アリス様はここで、殿下の看病をするのが一番いいんです』


 かかとを下ろしアリスの目を合わせたジェーンは「ね」と片目を閉じる。

 アリスは何を言われたのか理解していないように反応を見せないが、次第に徐々に頬が赤く染まり始めた。

 その様子を見たジェーンは少し驚いたように見つめている。


【あれ?アリスが殿下に恋するのはもっと先の筈なんだけど……、もしかして殿下が落ちたシャンデリアからアリスを守ったことで、恋心のきっかけになったのかな?】


 それならばどうアリスに恋心のきっかけを与えようかと頭を悩ませていたが、それも考えなくてよくなったと悩みの種が減ったことに喜んだ。不謹慎な話ではあるが、それでも友人が恋をしたのだ。喜んでも不思議ではない。

 ジェーンは小さく笑うと今度こそ退室した。後を追ってくる様子もないことから、アリスはシグルドの傍にいることを選んだのだろう。


 ジェーンとカイラスはまず会場へと向かった。シグルドの話では記憶媒体となるものがシャンデリアに仕込まれているとの話である。二人はまずは壊れたシャンデリアに近付くとしゃがみこんだ。


「ジェーンは近寄っちゃだめだ。危ない」


「そうだね……ドレスだし…。私はあっち探してみるよ」


 ジェーンはそう言って会場の端の方に向かった。シャンデリアに仕込まれていたという事は、割れた拍子で離れた場所に飛んでいる可能性もあるという事。

 正直、この世界の記憶媒体がどのようなものかジェーンは見たことがないが、シャンデリアに仕込まれてのだから小さいものだろうという事は見当がついた。

 キョロキョロと辺りを見渡し、ジェーンはパーティー会場にはあっては不自然なものを探す。すると黒いチップのようなものが目に留まる。前の世界でもよく目にしていた品物だ。


「これ……」


【マイクロSDじゃない】


 明らかにこの世界には合っていないその存在にジェーンは一人納得した。


【はぁ~ん、これが錬金術ね。まるで現代製品が世界を越えて生み出されたみたい。ということは、このSDカードを差し込む機械があるということよね。本当にSDカードなら再生機能はないはずだもの】


 ジェーンはそう考えたが、この世界の錬金技術を良く知らないジェーンは、SDカードのようなチップがジェーンの知るカードであることを結び付けられずにいた。

 ひとまずシャンデリアの落下周辺で探し続けるカイラスに、見つけたことを伝えようとジェーンは振り向くが、既にカイラスは別の場所にいる。そこはオーケストラたちが演奏をしていた場所であった。


「カイ?どうしたの?」


 ジェーンは近づくと、カイラスを覗き込んだ。カイラスの手には細くて長い糸のようなものが乗せられており、キラキラとまるでガラス細工のように美しく輝いている。


「見てくれ、ここにも破片がある」


「そうね……でも、シャンデリアの破片ではなさそう……この場所からすると、……もしかして楽器?」


「そうかもしれない」


「じゃあ、やっぱりこの件は意図的ね……」


 ジェーンの言葉にカイラスは頷いた。

 ジェーンは「戻りましょう」と告げると、アリスたちのいる部屋に向かう。その道中、二人は互いの考えている意見を交わしあう。


「……どうして“彼女”たちはこんなことをしたのかしら……、下手をすれば殿下まで巻き込んでしまうことは予想できることなのに」


「さあ、だが弦楽器を手配したのはバーネット公爵令嬢の取り巻きだ。公爵令嬢としては自分は罪を問われないと踏んでいたんじゃないか?」


「でも錬金術師に依頼できるのはよほど財力に自信のある家柄か高位貴族なだけよ。しかも殿下もシャンデリアを頼んでいたし、数が少ない錬金術師なら横のつながりはあるものじゃないの?共鳴反応なんて考えればすぐにわかりそうなものなだけに、危険だと判断は出来なかったのかしら?」


 頭を悩ませるジェーンだが、考えても悪事を働く人たちの考えなんてわかるわけがなかった。バーネット公爵令嬢がどのような言葉を使って楽器を依頼したのか、その依頼理由によっては錬金術師も受け持っても問題ないと考えるからだ。


「そう難しく考えなくてもいいんじゃないか?僕は共鳴現象の仕組みについてはわからない。きっとあの女たちもそうなんだと思う。どこかしらから聞いた話で、音によってグラスが割れるというだけの認識だったのならば、シャンデリアを見ても危機感を抱かなかったんじゃないか?」


「そうね……」


 だがそれでは本当に“事故”で片づけられてしまうだろう。ジェーンは無理やりにでもセリアたちを捕まえてほしいわけではなかったが、以前からジェーンの髪飾りを盗み、それをアリスに擦り付けようとしたこと、馬に仕掛けをしアリスに被害を及ぼそうとしたことから考えても、ここら辺で何らかの罰を受けてほしいと考えていただけに事故として片付けられてしまいそうになることがもどかしかった。


【“知っていた”ことが録画されていればまだ変わるかもしれない……】


 ジェーンは手に収まる記憶媒体に目を向けながら祈る。そしてそんなジェーンの気持ちに、カイラスはやり切れない思いを抱いた。





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