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23、殺してでも奪い取る



 学生寮に帰ってから僕は適当に着替えて、リュックに水筒を入れて街に出る。


 リュックは両手が空いて、荒事の時にすぐトンズラできるし、水筒は熱中症にならないよう持っておいたほうがいい。


 服装は無難なものにしたつもりだが、ダサいかもな。服装なんて動きやすければ他はあまり気にならない。


 薬を探すことを考えるとこの街が輝いて見える。薬への期待が僕にそうさせるのだろうか?


 僕はいつもより眩しい街を歩き、ガラの悪い奴を探す。自然と目に力が入る。目が破裂しそうなぐらいにな。


 その時、僕は見知った顔を発見。・・・・・・火上だな。あいつは僕を恨んでいる。


 薬探しの邪魔になりそうだ。普段は見るたびにあいつを殴りたくなる。だが今は避けて通りたい気分だ。


 しかしそうは問屋がおろさない。火上は僕の方に顔を向けて、身を見開きこちらに向かって走ってくる。


 逃げるのはなんか負けた気がするし、あとで揶揄われそうなので僕は棒立ちである。


 火上は僕のすぐ近くで急停止。細かく体が痙攣し、あちこちを目で追う。


 周囲を確認している?やましいことでもあるのだろうか?警察に職務質問をされそうな火上は小声で僕に話しかける。


 「いい話がある。」


 僕は上体を倒してバランスを崩したふりをする。そうして火上に接近。そのまま膝を抱え上げて腹に膝蹴りをおみまいする。


 「おいおい嘘つくんじゃねえよ。つい転んじまったじゃねえか。」


 「・・・・・・うう。ふざけんなよ。話を聞く前に攻撃しやがって。」


 喧嘩の最中は興奮しているから痛みを感じないだろうが、突然攻撃したから結構効いたようだ。


 それでもすぐ話し始めるとはなかなか根性がある。あんまり認めたくないが。


 「鈴木。今回はお前も得をするかもしれない話だよ。」


 僕は前足で火上の脛に横蹴りを入れる。そのあと少しフラフラして周囲の目をゴマカス。


 「息を吐くように嘘をつきやがって。間違えて足が当たっちゃった。」


 「す、鈴木。嘘つきはお前だろ。お前、俺がいい話を持ってくるわけないって思ってるだろ。」


 「当然だよ。お前を信用するわけないだろ。」


 「そうだろうな。でも今回はいい話だ。」


 火上はそう言ったあと距離を取った。僕が攻撃しようとしているのを察したのだろう。


 おとなしくしておいて欲しいね。不快感を強める僕を見ながら火上は懐から金色のカプセルが入ったプラスチック包装を取り出した。


 なんだこれ?戸惑う僕を見ては不敵に笑い語りかけてくる。


 「これは『超凡チャオハン』だよ。」


 なんだと。殺してでも奪い取ってやる!僕の思考が暴力に汚染されていく。


 「おいちょっと待て。ここは人混みだ。場所を変えよう。それにこの薬が本物か確かめるには俺の向上した能力を見たほうがいいんじゃねえのか?」


 ・・・・・・言われてみれば。火上の言ったことだからあんまり認めたくないけど。そうするのが正しい。


 とりあえず僕と火上は路地裏に移動。路地裏に行く途中、僕の見ている世界はいつもと違った。


 その辺に落ちているゴミ、大して大きくないビル、赤いよくあるはずの自販機。全てに妙な存在感を感じる。


 ・・・・・・そろそろだな。僕は人気が少なくなってきたところで、火上を奥足の横蹴りで蹴っ飛ばした。


 大事な薬だ。万が一にも負けて、手に入らないなんてことがあっちゃいけない。


 火上はすぐに立ち上がる。そして水の球をいくつも浮かべる。


 水の球は小刻みに揺れ動き安定しない。制御ができていないようだ。


 だが制御のことを考えないでヒョウカすれば三級くらいの異能だろう。


 正直言って勝ち目は薄い。諦める気には全然ならんがね。火上が水の球を飛ばす前に接近。


 左ストレートを火上の顎に叩き込む。水の球は弾けて液体になり、路面を濡らす。


 制御が甘いから集中を乱してやれば、異能を使うことができない。そう予想した。


 このまま無力化して薬を奪う。火上は後方に何度もジャンプする。距離を取って水の球で僕を一方的に攻撃するつもりだろう。


 ここは路地裏、横に広くないから回避は困難。絶対に逃してはいけない。


 僕は火上が後方に下がろうとしているのはお見通しだった。僕は身を低くして爆発的に加速。


 短距離走のようだが、少し違う。主に相手の反撃を意識しているところが短距離走と異なる。


 身を低くしているのも相手の反撃に備えているからだ。

 

 火上は着地後に水を生成して球状に整形していく。だが遅い!僕は火上にすでに追いついている。


 肘から火上のみぞおちに体当たり。火上は衝撃を受け止めず、足を曲げて路地裏の奥へと飛んでいく。


 僕の突進の威力とジャンプにより結構な距離を火上は稼いでいる。


 それでも火上は満足ではないらしい。火上は僕に背を向けて走り出した。待て!


 火上は僕が走るのを見ると、今までの戦闘でできた水たまりの水に干渉した。


 水たまりが動く。水たまりから水が吹き出し、僕の顔に向かって飛んでいく。


 水がかかった。くそが!目が見えねえ。なんとか目を開けたその時には火上は準備を終わらせていた。


 水の球が数個、一気に僕に放たれる。水の球は僕の身体に衝撃を与え、ついでに服も濡らす。僕は膝をついて、そこから力が抜けてうつ伏せに地面に転がった。


 身体が動かない。山田の風の球も普通の奴は一、ニ発くらえば動けなくなるし、耐える奴でも四、五発当たればおしまいだ。


 薬が手に入らないのが惜しい。火上に負けたのが悔しい。自分の能力が劣っているのが許せない。


 虚しい、悲しい、妬ましい、ムカつく、気にいらない、こんなはずじゃ・・・・・・。


 火上は満面の笑みを浮かべて近づいてくる。そして僕の頭の上に足を乗せる。そして明るく語り出す。


 「俺の勝ちだ。薬は手に入らない。残念だったな。お前が不意打ちしてきたとき、俺は腹が立たなかった。」


 「どういうことだ?」


 「鈴木、お前は期待を裏切らなかった。勝つために一切の手段をえらばない、いつも通りのお前に安心感を覚えた。本気のお前じゃなきゃダメなんだ。」


 「なっ、なぜ本気にこだわる?倒せるんならどんな状態の僕でも良くないか?」


 純粋な疑問だった。僕は火上が落ち込んでいようが、元気だろうが敵意は同じだ。


 だから本気の僕じゃなきゃダメだという火上のこだわりは全く理解できない。


 「アハハハハハハハハハハハハ!」


 「火上、お前どうかしている!薬の副作用か?」


 急に笑い出した火上を見て不気味に感じた。化けの皮が剥がれた?こんな火上は見たことがない。


 確かに僕を痛めつけて火上は楽しんでいた。でもこんな笑い死にそうな火上は見たことがない。今もゲラゲラ笑っている。


 これから僕はどうなる?今の火上なら何をしてもおかしくない。身体を動かさなくては!


 

 


 

 



 


 


 

 

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