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22、成長する友人、変わらない自分

 六月中旬、外にいるだけで汗が滝のように流れていく。しかしこの街の不良共は元気に暴れている。とても鬱陶しい。


 不規則に蠢いていた細い稲妻がようやく収束され、不良の手のひらから放出される。


 制御が下手とはいえ凄まじい速度。見てからでは避けられないだろう。


 だから能力発動を察知できた瞬間に動く。僕は手のひらが僕の方向に向くと同時に、屈んでいた。そうして稲妻を回避。


 屈み終えた瞬間に腰を回して鳩尾に右ストレートを一発。それに対して電気使いの不良は両手で鳩尾を押さえてしまう。


 電気は手のひらから出しているはず。つまりこの電気使いは今この瞬間、能力を発動できない。


 僕はその隙を逃さない。右の掌底で電気使いの顎を揺らす。そして電気使いは地面に崩れ落ちた。


 でもまだ山田が戦っている。そう敵は今倒した電気使い含め3人いた。すぐに加勢せねば。


 僕は山田の方へ身体を方向転換。不良二人と山田が向かい合っているのが確認できた。


 距離は遠い。拳も蹴りも届かないくらいに。その間合いで行われるのは異能の撃ち合い。


 山田が出現させた風の球が一人の不良に放たれる。山田が打ち出す風の球は速い。


 回避は困難。威力も高い。不良は一発で戦闘不能。もう一人の不良は仲間の脱落を見ても慌てない。

 

 最後の一人の不良は小さな氷の塊を生成し高速で打ち出した。


 しかし氷塊は山田があらかじめ展開していた緑の壁に当たって砕け散る。


 あれは山田が空気を圧縮させて作った壁。その防御力は高く、生半可な攻撃を寄せ付けない。


 そして山田を守っていた壁が消えると同時に風の球が氷使いの腹に命中。


 氷使いは地面に蹲った。・・・・・・これで終わりか。加勢する必要がなかった。なんなら僕がいなくても問題なかった。


 戦いを終えて二人で寮に向かって歩き始める。その間に僕は考え事を始めた。


 廃工場での後、山田の異能は三級へと成長。でも僕は何も変わっていない。


 成績は低いままだし、格闘技術は変化なし、背は伸びてるがそれは周りもそうだ。僕は無価値だ。教域に来る前も来た後も・・・・・・。


 「鈴木君?」


 「なんでもない。」


 思考が止まる。山田の声で。僕は咄嗟に返事をした。その返事は嘘か?いや落ち込みがちなのはいつものことだ。


 僕は大丈夫だ。いや大丈夫じゃない。どっちだ。どっちなんだ。


 「鈴木君?本当に大丈夫ですか?具合悪そうですよ。」


 「いや今回は戦った相手が全員能力者だったよな?最近、能力が喧嘩で多く使われてない?」


 僕は話を逸らす。強引な話題の切り替え。こういうところが僕がどこにいても嫌われる原因なのだろう。


 どこにいても僕は溶け込めない。これまでもこれからも・・・・・・。


 「そうですね。今回の相手は全員四級くらいの異能を使っていました。」


 ああいかんいかん。自分で始めた話だ。しっかり聞いておかねばならない。


 「四級以上ってそんなにいないよな。半数は六級だし。」


 なんとか返答できた。山田は額に手を当てて声を絞り出した。


 「暴れたいのは六級だけではないということですかね?いやそれにしてもおかしい。まるで六級がいなくなったかのような・・・・・・。」


 山田はそのあとも何か考えることがあったのかあまり喋らなくなった。僕は山田の考えていることが気になりつつも寮に戻った。


 昼休みに僕は学校で佐々木とお話をする。佐々木は廃工場の一件以来、剣道部に入ったらしい。


 前よりさらに少し脂肪が落ちてきている。本人曰くまだ落とし足りないらしい。もう普通に可愛く見えてきた。・・・・・・いやこいつとは友達だし、いきなり手のひら返してがっつくのは気持ちが悪いだろう。


 「どうしたの鈴木君。不良の異能の話はそっちから振ったんでしょ。しっかり話聞いてよ。」


 まあこうして話す分には何も問題ないだろう。それより異能の話だ。


 「最近の不良が能力を使って喧嘩売ってくるんだよね。喧嘩売られる機会も増えたし、異能の質も良くなっている。面倒くさくてたまらない。」


 「でも本当は楽しいでしょ?」


 僕は面倒くさそうに不良共の愚痴を言った。しかし佐々木は呆れたようにそう返してきた。


 「そんなわけないだろ。僕は喧嘩を無理矢理売られるから渋々買うだけ。本当は平和主義者なんだ。」


 「喧嘩の話をしている時はめちゃくちゃ楽しそうだったし、火上君を殴り倒している時も顔がにやけているよ。」


 そうかな?僕はムキになって言い返したが佐々木は僕が喧嘩好きだと確信しているらしい。とりあえずこの話はやめよう。


 「それは置いといて最近多くの不良が四級くらいの異能を使ってくるんだよ。異能の制御はあまりできていないみたいだけどね。なんでだろう?」


 「・・・・・・あの噂は本当なのかな?」


 僕に冗談を言っていた佐々木の薄い笑みが消えてなくなる。代わりに佐々木の目が大きく開き真剣な表情になる。


 マスクと眼帯で表情がわかりにくいはずなのにしっかり真剣さが伝わってくる。非常に話しかけにくいが今は遠慮している場合ではなさそうだ。


 「あの噂とは?知っていることがあったら教えてくれ。」


 「・・・・・・超凡チャオファンという異能を強化する薬が最近評判なんだ。私はどうせ効果がないと思ってた。異能を変える薬もあるとか聞くけど。そんなのは嘘だ。そう決めつけてた。」


 佐々木の目の焦点が合わなくなった。チャーハンだかなんだか知らんがそんな夢みたいな薬の存在に気づいたら正気ではいられないのだろう。


 特に僕たちみたいな学生は使える異能を持っていない。使える異能が手に入るなら僕は全裸で街を一周したって構わない。


 僕たちを襲撃してきた奴らは使える異能を手にして調子に乗ったということか?


 それなら襲撃の頻度が増えたのもわかる。不良のことに文句はつけられない。僕もその辺のやつを異能の実験台にしようとするだろう。


 よしそうと決まれば今日は部活はバックれてやる。コツコツ格闘の腕を磨くなんてやってられるかよ。


 これからは薬物で強くなる時代だ。とりあえず森田と山田に部活には行けないとのメッセージを打っておいた。


 うちの部活はゆるいから勝手に休んでも良さそうだが、いちおう連絡はする。寮に帰って準備してから適当に街でガラの悪そうなやつから情報を吐かせてやるぜ。


 


 


 


 


 

 


 


 




 

 


 

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