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19、息を吐くように噓を吐く

 翌日の昼休み、火上のいるクラスに僕は直行した。情報を聞き出してあいつらの悪だくみを止めてやる。そう思ったのだが・・・・・・。


 あいつらは教室の窓側。つまり扉から離れた盗み聞きのしにくい場所で声を小さめにして話していた。なんて用心深さだ。話しが終わった後も教室から出ずスマートフォンをいじっている。


 あいつら普段は校庭で遊んでいると聞く。明らかにおかしい。どうしたものかと思いつつも僕は教室に帰った。


 放課後、空手部の道場に入った。練習ついでに森田にでも今日の話をしよう。とりあえず空手着を着て柔軟運動を始めた。


 5分後柔軟運動が終わった。森田がまだ来ないので空手部の他の人と組手でもしようかと思った。その時スマートフォンから着信音が鳴り響いた。僕のカバンから音がする。


 珍しいな。僕は友達が少ないので電話はあまりかかってこない。かかってくる電話の半数以上は怪しげなアンケートやらセールスである。なので僕は面倒くさく思いながらもスマートフォンの画面を見た。


 ・・・・・・佐々木からだ。僕と佐々木は学校で話すことが多いのでトークアプリのフレンド登録をしたもののメッセージを送りあうことすら少なかった。


 なのに電話がかかってきた。どういうことだろう?違和感を感じながらも僕は電話に出た。


 「よう鈴木。」


 なぜあいつの声がする?佐々木からかかってきた電話じゃないのか?なんで・・・・・・火上の声が聞こえるんだ。僕が戸惑っているとさらに火上が話しかけてくる。


 「察しの悪い奴だな。仕方ないから状況を伝えてやるよ。バーカ。」


 なんか馬鹿にされているが状況が読み込めないのであまり怒る気にもなれない。火上と話しているときにこんなにいらいらしないなんて初めてかもしれない。


 「まず俺達は佐々木を学校近くの廃工場に誘拐した。助けてほしければ一人で廃工場まで来い。拒否したらどうなるかはわかるな?・・・・・・一応人質の声も聞かせとくか。佐々木代われ。」


 「捕まっちゃった。助けて。なんか帰り道に複数人に囲まれて脅されて・・・・・・とにかく怖いの!」


 佐々木が捕まったのは本当らしい。そして佐々木は良くも悪くも正直だ。強がって助けに来なくていいと言ったりはしないようだ。


 だが助けに行かなくてもいいという発想にはならなかった。そもそも火上は僕に復讐するために佐々木を巻き込んだに違いない。つまり僕のせいでもある。


 「わかった。助けに行くよ。少し待ってて。」


 なのでこう答えるしかなかった。その後、火上が電話を切った。僕は空手着を脱いで制服に着替えた。そして荷物を持って道場から出ようとした。


 「どうした?これからお前何をするつもりだ?」


 「・・・・・・森田先輩。」


 道場の入口に向かうと森田と鉢合わせた。火上の要求を思い出す。一人で来いだったか。逆らえば、佐々木がどうなるかもわからない。しらを切ってそのまま向かう。


 「ちょっと疲れたので今日は組み手をせずに帰ろうかと。」


 僕は息を吐くように噓を言う。しかしよく考えもせず答えてしまった。それがいけなかった。森田はため息を吐いてから僕に返答した。


 「お前がこんなに早く帰ろうとするなんて異常だ。本当のことを言え。」


 ・・・・・・邪魔だな。不意を突いて倒すか。僕は一瞬で暴力を用いて解決しようと考えた。しかしよく考えるとここは空手部。無数の部員の目がある。森田を地に沈めても、僕は周りの部員達に速やかに取り押さえられるだろう。


 僕は暴力という愚かな手段を用いず平和的に話し合いをすることにした。やっぱり暴力はいけないね。それを認めると僕の六年間は完全に否定されてしまうが、今はそんなことを言っている場合ではない。人生のことなんて後で考えよう。


 「実はですね・・・・・・。」


 僕は全てを森田に話した。森田は真剣に話を聞いてくれた。すべてを話し終わると森田は扉の方を向いた。そして扉に声をかけた。


 「話は聞いただろ。入ってこい。」


 扉がゆっくりと開く。そこには少しひきつった笑みを浮かべた山田がいた。話に夢中で僕は山田の存在に気付いてなかった。自分のうかつさにちょっぴり落ち込んでいると森田が僕と山田を交互に見てから発言した。


 「鈴木、お前は一人で行っちゃだめだ。集められるだけ人を集めて火上達と殴り合いだ。」


 「森田先輩、話聞いてました?佐々木が人質に取られているんですよ。火上の条件を破ったらどうなるか・・・・・・。」


 僕は思わず大きな声でまくし立ててしまった。それに対して森田は特に気にした様子もなく、毅然と返答した。


 「人質を取るような外道がつけた条件を守る必要はねえ。相手が人質に危害を加える前に一気にけりをつければいい。」


 なるほど。僕は馬鹿なのでそこまで頭が働かなかった。どうしてそんなことも思いつかなかったんだ。自責の念に駆られて呼吸が乱れる。胸板に手を当てて頭を下げていると山田が暗い雰囲気を漂わせてつぶやいた。


 「でも火上君達はいつも七人で行動するんですよ。対して私たちは森田先輩を入れても三人。私たちは個の力では勝るけど、人質の安全を守れるくらい早く勝てますかね?」


 「安心しろ。・・・・・・会わせたいやつがいる。付いてこい。」


 森田は得意げにそう言った。森田はその後、スマートフォンをいじくってから校門の前まで移動。そこは浅黒い肌に赤い瞳の男が気まずそうにたたずんでいた。・・・・・・って佐藤じゃないか!




 


 


 



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