戦場のメイドさん
※作品情報のあらすじと重複する部分がございます。
・本作はChatGPTの相方を「厳しいメイド長」にしたときにその人間性に惚れて執筆されました。
・「出目6」の意味は合計6人分のメイド長の設定にサイコロの目を割り振ったときに初期状態のメイド長設定が6番目となったからです。作中で書くかも知れませんが蛇足感もかなりあるので、筆者のChatGPT内の関連スレッドで本作の主人公メイドさんはこう呼ばれていると思ってください。
・本文執筆は(好きな文体で書けるので)筆者によるものですが、作品の根幹にAI使用があるとお考えいただき結構です。厳しいメイド長による誤字脱字修正とか本当に気持ちよくなってくるで
・本作はラブコメ(+シリアス……シリアル?)です。よほど好評でなければミリタリー色は第一章のみとなります。
・年上のお嫁さんメイド良いよね……
※筆者はオリジナル小説は初体験です。読みにくいところがあったら申し訳ありません。お詫びにメイド長がお尻を叩かれているところを一緒に鑑賞しましょう。
3日前にこの山の包囲は閉じられた。包囲する敵軍はおおよそ6万、越境してきたときは8万と概算されたから、それに比べればずいぶん減らしたものだ。しかしその残存戦力の全てを5千の初期兵力から打ち減らされ、残り2千となった部隊の包囲に当てるとは。その指揮官たる私がそこまで評価されているのか、それとも大きすぎる損害に小さな勝利でも得なければ国へ帰れないのか、敵将に聞いてみたいところである。
幸いにしてこの山はメイド団により緊急退避陣地として構築されている。予備の武器防具は十分にあり、兵糧も水も数ヶ月分はある。随分と粘れることだろう。この戦さの結末はお互い最後の一兵となった指揮官同士の一騎打ちになるかも知れぬ。そのときに聞けば良い…我ながら世界、いや他国にとっては非常識な想像に笑みがこぼれる。
この国境守備隊の損害は隣国軍の国境陣地帯への奇襲とメイド団指定陣地への撤退時に発生している。それでも我が隊は敵の数倍の戦果を上げてきた。そしてこの陣地に入ってからは数えるほどの兵しか失っていないのに、敵陣から悲鳴が絶えない。メイド団計画による罠の賜物だ。奴らがこの山に総攻撃を掛ければ、幾重にも重ねられた罠の数々も兵数に踏み潰されてしまうだろう。しかし、不思議な配置で兵がこもる穴が掘ってあったり、頑丈な柵が指定された状況で起こすだけになっているなど、さまざまな仕掛けが施されたこの陣地を攻略するには他国軍で30倍の兵数比は実に微妙である。
沈みゆく夕陽と対照的に賑やかな声が聞こえてくる。兵の間での勝敗の賭けは白熱しているようだ。兵士が胴元に「負けた場合はどうするんだ?」と聞くと、「負けに賭けた者のみに教える場所に埋めるから、生き残った奴がいたらそれを掘り起こせ!」と返す。ひたすら高配当を求める者が雄叫びを上げる。
そんな兵士どもの賭けの行方を決める要因はゆっくりと歩いて来た。難しい顔をしながら何やら書き付けているメイド服の美少女。彼女が陣地内をしずしずと進むのを誰かが見つけたときに賭けで盛り上がっていた兵士どもから悲鳴と歓声が同時に沸き立った。
「勝ちの札を持ってるのはこっちへ集まれ!負けに賭けた奴らはさっさと散れ!」
そんな騒ぎを気にせずにメイド殿は書き物を続け、いや手が止まっている。この陣地はそんなに厳しい状況なのか。メイド服を見た時の安堵はしぼみ、途端に湧き上がった恐怖心についメイド殿に声をかけてしまう。
「もし、王宮メイド団のお方ですかな。ご思案中に申し訳ない。私は当部隊の指揮官、マクシミリアン・フォワードである。その、貴女はこの陣地に派遣された参謀メイド殿ということでよろしいかな?」
これほど緊張する女性への声掛けは領地で浮き名を流した侯爵嫡男の彼にも初めての経験だった。
「これは申し訳ありません。申告が遅れました。わたくし、王宮メイド団のゼクスと申します。仰るとおり、本陣地への派遣を命じられました。こちらが命令書になります」
メイド殿が懐から取り出したのは、現在の王宮メイド団の長を兼任する王子による命令書である。封蝋を解いて開いた、その内容は「以下の者を派遣する。最大限の便宜を尽くせ。」という判子による定型文であるが、王子のサインを含めた手書きの追記部分を改めたマクシミリアンは夏だというのに背筋が凍った。
──この者は『メイド長内定者』である。
命令書と目前の美少女との間を視線が行き来する。
御年10歳という王子の年齢からすると早すぎるメイド長内定、彼女のすでに15は越えているだろう面相。この2つが示すもの、それは眼前の美少女が──
(化け物だ…!)歴戦のマクシミリアンの精神力はその思考を口に出さないことに成功した。
「あの、命令書のご確認いかがでしょうか?途中の山道で少し服が汚れてしまいまして、命令書は汚さないように気を付けましたが、汚れて読み取り出来ないようでしたら、こちらの印章で身分確認お願いします」6万の敵軍に包囲された山道を抜けた際に、スカートの端に僅かに泥を付けたメイドは申し訳なさそうに懐から王宮メイド団の印章を取り出した。
「いや、その必要は無い……しかし、確認したい。慣例によりこの命令書を君に見せるわけにはいかないが、王子直筆で君がメイド長内定者であると書かれている。これは事実か?」
その言葉にメイドは、いやメイド殿はぴたりと動きを止めた。夕焼けに照らされているというのに顔が紅く染まるのが分かる。目は泳ぎ口は言葉を紡がずもにょもにょと動くばかり。
(いかん、乙女の触れてはならんところに踏み込んだな)
フォローを入れようとしたマクシミリアンが口を開く前に、乙女の顔は平静を取り戻した。
「いえ、王子のお戯れにございます。私は一般メイドに過ぎません」
マクシミリアンは彼女が理外の生物ではないという回答に深い安堵を覚えたが、またしても顔を赤く染めた少女がうつむきながら続けた言葉に、眼前が暗くなった。
「そ、その……め、『メイド長候補者』としては認められております……」
メイド長内定者もメイド長候補者もたいして変わりがないではないか!王子がお気に入りを危険な任務に出すわけがない!それならば──
「……このいくさ、後の世に語り継がれるだろうな」マクシミリアンがやっとのことで絞り出した言葉である。
「……? はい、この国の戦闘は細大漏らさず、わたくしどもが記録しております」不思議そうな顔をして答える本物のばけもの。
「……分かった。それではメイド殿の業務を始めてくれ」全てを諦めたマクシミリアンは感情の抜けた声で促した。
「それでは早速、こちらの行動助言書にサインと該当部隊に配布をお願いします。いつも通りですが、指揮官さまのご署名によりこの助言書は命令書として機能します」
手に提げた鞄から耐久紙の束をいくつも取り出すメイド。書いてあることは明確なのに何がしたいのか全く分からない助言書にサインをしていく。ここで質問をしては本当に日が暮れてしまう。
「……こちらで全てです。お疲れのようですね、もしよろしければわたくしが指揮官代行をさせていただきますので、しばしお休みください」
「いや、これから楽をさせてもらうのだから、今くらいは意地を張らせてくれ。」マクシミリアンは最後の心残りを切り出そうとした。
「その…君がここに到着した際に書いていたものは何だったのかな?軍仕様の紙では無かったようだが」
メイドの顔がまたしても夕焼けよりも紅く染まる。
「王子殿下が……出発前に押し付けてきた、こい……いえ、そう、お手紙の返事ですわ」その表情は手紙の内容を推し量るのに十分な情報を有していた。
・「ゼクス」というのは「出目6」から来た名前です。おっさんである筆者にはかなり引っ張られる名前ですが使ってるうちに馴染んできました。
・前衛だからフォワード……なんと安直な
・王国のメイドさんに私らの軍事常識は通用しません。
・高配当いいよね……現実世界に作中のメイドさんがいたら金融市場壊れます。




