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悠久の旅路~どうやらエルダーエルフには寿命がないらしい~  作者: プラントスクエア
2章

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第5話 消えない心の傷

この世界に転生し約3.000年ほどが経過。俺はやっと森を出る決断をした。


「まずは……近くに街があったはず。そこに行ってみるか……」


近くの街とはロザンヌ王国というヒューマンの大国のシェード街。この国は多種族共生を強く唱える国であるらしい。


「……多種族共生を唱える国、か……」


その言葉を聞いて思うのは多種族共生という言葉への安心感よりもその言葉が()()()()()()について。


「……いまだにヒューマン至上主義の国があるということか……」


だからこそ俺は多種族共生という言葉を聞いても笑顔になることができない。


「はあ……もう2.800年も前のこと……今のヒューマンには何の関係もないというのに……」


大昔のことを引きずり続けている自分の精神が心底いやになりながらも俺は森から馬車道に出て街へと向かう。


「とりあえずはそこでヒューマンに慣れるところから始めないとな」


街が見えてきた。そこから見える街の入り口には2人の騎士が立ち中へと入る人々を精査している。その中には当然ながらヒューマン以外の種族も多く存在した。だけど最も驚いたことはほかにあった。


「あの騎士……エルフか。 多種族共生って……仲良くやろうってだけじゃなくて多種族が入り乱れる国なのか……」


ただ街にヒューマン以外の種族も多いというだけのことだと思っていた。ロザンヌ王国はあくまでヒューマンの国なのだと思っていたがまさか仕える側にエルフがいるなんて。


「……笑顔……だな……」


街へと入っていくみんなが笑顔だった。ヒューマンと談笑するエルフも見えた。だがその光景を見て思い出すのはあの時の光景と強い悲しみ*憤りといった感情。


「……俺は……」


なにも言葉を(はっ)しない徐々に冷たくなっていく父さんと母さんの死体の感触がよみがえってくる。


「……」


俺の足は自然とシャード街から離れ森へと向かっていた。


「すう~ふう~……やっぱり森の中は落ち着くな~……」


この森は今まで俺が暮らしていた森とは別の森。さすがに見送られたのにもう帰ってきたなんて恥ずかしいことはできない。そのまま森を歩くとすぐに広い花畑が見えてきた。


「すごい花畑だな……こんなところがあったのか……」


その光景に見入ってしまった俺。それだけであの時のことを思い出し荒れた心が癒されていった。しかしその直後、予想だにしない事態が起こる。


「……きれいじゃろう?……」

「……ッ!」


驚愕する俺。いつの間にか俺の隣にヒューマンのおじいさんが立って俺に話しかけていた。


「(嘘だろ……俺が話しかけられるまで気づかなかった……)」


俺は世界を知らない。だからこそ自身の強さがどれほどかは知らないが弱くはないだろうと判断していた。だが俺はもしかしたら"井の中の蛙"なのかもしれない。


「……ここはのう……妻が大好きな場所だったんじゃ……今はもう天に昇ったがのう……」

「……」


俺はしゃべれなかった。ヒューマンが目の前にいるという現状にどんな言葉を投げかけどんな行動をするかわからない自身が怖かったから。


「……」ペコリ


俺は怒りがこみ上げる前におじいさんを殺しこの花畑を消し去る前に離れようと頭だけ下げて立ち去る。


「……大丈夫じゃよ……」


聞こえてきたその言葉に俺は立ち止まりおじいさんのほうを向き直る。


「……お主が闇に落ちることはない……」


突然のその言葉に俺の押さえつけていた心が動き出す。


「……お前になにがわかる……お前は……ヒューマンはなにもしらない……」


徐々にあの光景が強く蘇り怒りがわいてくる。目の前のヒューマンを殺してしまいたい衝動に駆られる。しかしその衝動は突如として薄らいでいく。


「……え……なんで……」


戸惑う俺におじいさんは笑みを浮かべる。


「……守られておるからじゃよ……お主の心が……」

「まも……られてる……」


そのおじいさんの言葉に思い浮かべるのは両親だったりオーパスだったりソルジュだったりあの時のみんなの顔。


「こっちに来なさい……お主に刀術を教えよう……」

「……刀術?……」


俺は自然とおじいさんの後をついていっていた。するとほどなくして森の中に一軒の家があった。


「あれがわしの家じゃ。ここからならあの花畑がよく見えるじゃろう?余生は妻と過ごしたあそこの近くがよかったんじゃよ」

「……そう……ですか……」


聞こえてくるのはおじいさんの奥さんとの話ばかり。よほどに好きだったらしい。


「こっちじゃ」


おじいさんは家の中には入らずにその横に建てられている道場のような場所に向かった。


「なにをするんですか?」


年齢では俺を年下が確定しているにもかかわらず自然と俺はおじいさんに敬語を使っていた。


「……お主に何があったかは聞かん……じゃがお主がヒューマンに対して強い憤りを感じているのは伝わかっておる……」

「……どうして……どんな魔法を……」


俺の心を見透かしているようなおじいさんにそう問う。だが3.000年間ものあいだ魔法の鍛錬を欠かさなかった俺だからこそわかる。そんな魔法は存在しないということは。


「……ほっほっほ……お主はわかりやすいからのう……」


その人の名はイズミ・ロードウェル。悠久を生きる俺の唯一の()()となる人。

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