第4話 悠久の旅路へ
ちょうどいいので短めになっています。
--転生から3.000年--
「あれから……随分と立ったな……」
どれほどの年数が経とうとも俺の中で悲しみは完全には消えない。あの時の光景を思い出すだけで怒りが湧き上がってくる。
俺はあれからずっと同じ森の中の村で暮らしている。最近…といっても1.000年ほど前だが数人のエルフが村を出て外に旅立つこともあった。彼ら彼女らは外の世界を知りたいとキラキラした目で旅立っていった。そんなキラキラはもはや俺の中からは失われた感情だったが。
「風よ、小さき針となって突き刺され──風針」
プス
バタン
俺は暴れまわる巨大な4本の牙のイノシシ(クアトロラージボアという名前らしい)を風針で仕留める。
「大丈夫だったか?ケガはないか?」
エルフの子供たちが襲われそうになっていたため俺が対処した。だが見たところケガらしいケガはなさそうに見える。
「すげえ……クアトロラージボアを簡単に……」
「上級の魔物が……雑魚みたいに……」
どうやら無事らしいのでこの子たちを周囲のエルフに任せて村に戻ることにする。ちなみに上級というのは魔物のランクのこと。これは1.000年ぐらい前にできたと思う。たぶん。それよりも前だったかもしれないけど。ランクは上から超級→上級→中級→下級となるらしい。
「ふう……今日はなにしようか……」
もう3.000年も生きていればやることもなくなってくる。魔法の鍛錬という名の魔法研究もなにをやればいいか思いつかないし。
そんな時に村に戻っている俺に慌てた様子で1人のエルフが走ってくる。
「た、大変です!?エルダーエルフ様!?長老が!?」
長老とは老いたとあるエルフのことを指す。名前はソルジュ・メイビスというこのエルフは平均寿命が500歳といわれるエルフの中でなんと3.000年近く生きている異常者。たしかに寿命が上振れて500年よりも長生きするエルフは今までもいたが3.000年近くも生きるのはこいつが初めてだ。
そんなあの悲劇を経験した唯一の理解者もこの世を去る時が来たらしい。
ガラ
俺はソルジュの家の扉を開ける。すると中には布団に寝かされたソルジュがいて周囲にはエルフが多くいた。
「このような姿で……申し訳ありません……アル様……」
「……いくのか……お前も……」
俺はソルジュの横に座る。すると周囲が気を利かせて俺とソルジュの2人としてくれる。
「……申し訳……ありません……」
「……ソルジュと知り合い約3.000年か……ほぼ生まれた時からお前のことは知っているが……まさかここまで生きるとはな……半分はエルダーエルフなんじゃないか?」
「ほほほ……かも……しれませんな……」
悲劇を共に生きた最後の友がこの世を旅立とうとしている。
「眠れ……最後まで俺が隣に居てやる……」
「それは……それは……。あの世での……自慢となりますな……」
そして最後の言葉をかわす。
「向こうで父さんと母さんによろしく言っておいてくれ」
「……アル様は……1人ではありません……常に……我々が隣で……見守って……おりますよ……」
「……ソルジュ……」
それが最後の言葉となってソルジュはこの世を去った。そしてそれが契機となりずっと村に引きこもっていた俺はとうとう村を出る決意を決めた。
「本当に行かれるのですか?エルダーエルフ様?」
ソルジュに代わって長老の地位に就いたソルジュの子孫ボルジュがそう俺に問いかけてくる。
「ああ……いつまでも大昔のことを引きずるのもな……いつかは変わらなくてはと思っていたがまさかこんなに年数が経とうとは……我ながら情けない……」
「そんなことはございません!我々には伝え聞く過去の出来事でもエルダーエルフ様にとってはそれほどまでの大きすぎる悲劇ということ!なにも情けないなどということはございません!」
「ふふっ……ありがとうボルジュ。 それじゃあ行ってくるよ……お別れだ……」
俺はおそらく数十年とか数百年とかでここに帰ってくることはない……そんな気がする。そういう気持ちを込めての言葉はどうやら正しくボルジュに伝わったらしい。
「行ってらっしゃいませ……今まであなた様にお仕えできたこと楽しく誇りに思っておりました。どうかアル様の悠久の旅路が光り輝くものでありますように……」
そうして俺は前世にて死亡し転生してから約3.000年。外の世界を見るための旅が始まった。
キリがいいので少々短いですがここで終わらせていただきます。次回からは2章となります。
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