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悠久の旅路~どうやらエルダーエルフには寿命がないらしい~  作者: プラントスクエア
1章

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第3話 悲劇

100万規模のヒューマンとの戦闘。こちらは数十人しかおらずまともに戦えば俺を含めて全滅は必至(ひっし)。ならばと俺はとある作戦を提案した。


「1人で戦うだなんて!?そんなのダメだ!?」

「そうよアル!?考え直して!?」


俺が提案したのはみんなには森に罠を張りながら戦ってもらって俺が1人で戦場を駆け回るという作戦。これは俺たちが生き残るための作戦。


「100万もの規模なら総大将はよほどの人物がしているはず……ならそいつを殺してほかの指揮官級も殺して回れば敵も撤退するかもしれない……」

「しかしアル……その作戦を実行すれば一番危険なのはおまえ自身だ……いいんだな?アル?」

「うん……それが……力を持つ者の使命だと思うから……」


最後まで父さんも母さんも必死に反対し引き留めようとしたが最後は俺の背中を押してくれた。


「アル……父さんはお前が誇らしいよ……帰ったら秘蔵の果実酒をともに飲もう……」

「秘蔵の果実酒って……そんなの隠してたんだ……母さんに怒られるよ?」


まるで最後の言葉を交わすように父さんと冗談を言い合う。だけど母さんはいまだに泣きながら俺を見つめる。


「アル……どうか無理をしないで……あなただけでも生き残って……」

「ありがとう母さん。でもそのお願いは聞けないかな……。大丈夫だよ……俺は強いから」

「……アル……」


これが父さんと母さんと交わした最後の言葉だった。


「行ってきます!父さん!母さん!」


俺は泣くのを必死に我慢しようとしてるけど涙が流れている父さんの顔と涙ながらに最後は笑顔で見送ってくれた母さんの2人の顔は一生忘れないと思う……たとえ悠久を生きるエルダーエルフだとしても……

/////

ドドドドドドドドド!!!!


森からはだいぶ離れた地点にて俺はポツリと立っている。すると地響きが聞こえてきた。それが俺の開始の合図となった。


「千の(いかづち)よ、降り落ちて大地を焦がせ」


敵国がここに至りやっと俺を認識。


「ロッゾ隊長!1人なんかいます!」

「ああん?命乞いでもしに来たか?かまわん!ぶち殺せ!エルフ*エルダーエルフともに一匹たりとも生かすなとのコウソン国王陛下のお言葉だ!」

「もったいねえな~。エルフもエルダーエルフも全員が美形揃いなんだろ?ちょっとぐらい遊んでから殺してもバレねえんじゃねえか?」

「バ~カ。この人数だぞ?そんな時間があるわけねえだろって」


【男たちは知らなかった……目の前にいる男の強さを……(たゆ)まぬ努力を……狂気となった守護者の恐ろしさを】


落雷(サンダーボルト)


バヂン!!!!!


ディアント帝国の大軍勢の上空から一斉に千もの雷が落ちる。先ほどまで楽しそうに会話をしていた男たちは自身でも気が付かないうちに地面に横になっていた。


「これであと……99万9.000……」


ディアント帝国は触れてはならないパンドラの箱を開けたことを後悔することになる。

/////

「なにをしている!?敵はたったの1人なんだぞ!?さっさと殺≪ザシュ≫・・・」

「ブーマー隊長!?」


また1人の隊長を殺した。指揮を出す隊長以上は馬に乗っているようでそいつらを重点的に殺して回っている。ここにはもう隊長クラスはいないみたいだし次に行こう。


竜巻(トルネード)


ブオオ!


詠唱破棄にて4つの竜巻を起こして周囲の雑兵を上空へ吹き飛ばす。


ディアント帝国の兵士は革の装備を着用し主に闘気を使用する。闘気とは魔力とは違って身体能力を高めることに特化したチカラ。一度父さんに聞いたことがあったから知っている。たまに魔法が飛んでくるけど大多数は闘気での攻撃になる。


そんな相手に俺は無詠唱や詠唱破棄を交えながら敵を殺し時間を稼いで詠唱にて多くの敵を一度に殲滅するという手法をとっている。


「どけ!俺様がやる!」


そう言って1人のデカブツが大剣を手にやってきた。


「来たー!グーラ大隊長!やっちゃってください!」


ドン!


その体格に似合わない高速で一瞬にして俺に急接近。その速度は俺が常時発動している雷迅(ライトニング)と同格だった。


「死ねえ!!」


ドザン!


大剣が振り下ろされ俺は真っ二つとなる。


「へっ!つまらねえ!もっと歯ごたえのある奴だと思ったのによ!」

「さっすがグーラ大隊長だぜ!史上最年少で将軍も夢じゃねえですね!」

「んなこたぁどうでも……っ!」


しかしそこで男は気が付いた。真っ二つにしたはずの俺の死体が存在しないことに。


「しまっ!?『風刃(ウィンドエッジ)』・・・」


俺が死んでいないと最後に気が付いたようだがすでに遅い。俺は風魔法の蜃気楼(ミラージュ)によって偽物の俺を見せて隙だらけとなった男に詠唱をした風刃(ウィンドエッジ)を放った。俺の本気の風刃(ウィンドエッジ)は鉄さえも楽々と切断する切れ味がある。たとえ闘気によって身体硬度を上げていようともその首を切断できる。


「ぐ!?グーラ大隊長!?」

「む!?無理だ!?」

「逃げろー!?死ぬぞー!?」


その後も俺は殺して回る。指揮官を失った雑兵たちは我先に逃げ出すので忠誠心などはないらしい。しかしディアント帝国の兵士の中にもたまに俺の足を止める奴らは存在する。そいつらは決まって大隊長や将軍と呼ばれていたりするがそいつらと戦うたびに俺の動きが洗練されていくのが自分でもわかる。


「無駄だ!お前の速さはもう見切った!」

「たった一人でここまでよくやったと特別に褒めてやろう!」

「だが我々疾走四天王を前に速度で挑んだ愚かさを思い知れ!」

「安心しろ!貴様の家族や友人ともあの世で会えるだろう!」


俺が常時発動している雷迅(ライトニング)は戦争当初よりも速さが数倍は上がっている。にもかかわらず疾走四天王と名乗る4人の男たちは俺の速度に適応しすぐに対応して見せた。身体が傷だらけとなった俺を4人は囲い一気に殺しにかかる。数も速度も向こうが上で近接戦闘の技術も負けている。ならばどうすればいいのか。


「……もっと速くなればいい……」


バチン!!!


今までとは違う黒い雷が俺に落ちる。


「なに?自滅か?」

「しかし今の雷は黒くなかったか?」

「黒い雷など聞いたことがないが?」

「どうやら敵の手にかかるぐらいならと自害したか」


シュン


次の瞬間、男たちは首を傾げたい気持ちとなった。なぜ()()()()()()()()()()()のかと。


「「「「あれ?」」」」


それは俺が覚醒した証。雷は黒く風は緑に輝く。俺はより速くより多くの敵を殲滅しながら駆け回る。


「(すごい……これが魔法の極致……魔法の深淵。 これなら……いける!!)」


俺の速度は一層早くなり黒い流星となって目指すはディアント帝国軍の最後方。より壁が分厚く将軍や大隊長が密集しているエリア。


ギュン!


俺は周囲の敵には一切目もくれずにそこだけを目指す。


「この先は!?いかん!?突け!射ろ!切れ!なんとしても陛下のもとには行かせるな!?」


その指示によって俺を止めようと攻撃が殺到。それは避けようとすれば無傷で目的の場所に行くことはできた。しかしそれは最短ルートではない。


「(俺の傷なんてどうでもいい……俺がやるべきことは一刻も早く敵を退かせること)」


それだけの思いで俺は突き進む。ケガを考慮に入れない最短ルートなため時々傷を負いながらも逆に速度を上げながら目的の場所が視界に入る地点までやってきた。そこにいるのはとても戦場には似つかわしくない豪奢な衣装を身にまとった一団。おそらく先ほどの言葉からも国王や側近の貴族たちだろう。


「わかりやすくて助かる。雷撃砲(レールガン)


ドゥオー!!


通常の雷がレーザー砲のように発射。それは今までの俺の雷魔法の中でも最高威力の魔法だったがそれを3人の将軍の手によって払われた。


「「「フン!」」」

「よ、よくやったぞ将軍らよ!さっさとそやつを殺せ!人間になれなかった不要物を処理するのじゃ!」

「「「ハッ!かしこまりました!」」」


しかし俺は雷撃砲(レールガン)を詠唱破棄すると同時に別の詠唱を始めていた。


「大気を巡る(みどり)の理よ、いま我が手に集え。さざめく風は軌跡を描き(はし)る矢は光となる。その輝きは森羅を貫き、いかなる障壁すらも留められぬ。それは風の極み──翠矢(ジェイドアロー)!」


翠に輝く弓矢から放たれた矢を再び三将軍が弾き飛ばそうと力を入れる。


「「「フン!」」」


ザシュ!


しかし今度は先ほどと同じとはいかずに三将軍は弾けず身体を貫通し死亡。矢はなおも速度を落とさずに延長線上にいた貴族たちを貫き殺した。


「なっ!?馬鹿な!?あの将軍らが!?」

「百戦錬磨の将軍らがこうも一方的に!?」

「陛下!?ここは撤退を『そうはいかない』……っ!……上か!」


俺は風魔法の飛行(フライ)にて奴らの斜め上空に浮遊している。そしてもうすでに詠唱は済ませてある。あとは魔法名を唱えるだけ。


「貴様らには二度と我々に手を出せないほどの恐怖を植え付けてやる……雷極(ヘルボルト)天槌(ミョルニル)>」


ドゴオオオオオオ!!!!!!


それは天の怒りのように黒い雷が束となって広範囲の大地をいっぺんに焦がした。それによって国王や貴族などのディアント帝国の中枢の人物たちは物見遊山の気持ちで訪れた戦場にて死亡。その光景は反対側にいた兵士たちにも見えていた。だからこそ俺がひとたびそちらへと視線を向ければ我先にと逃げ出していく。


「に!?逃げろーーーー!?」


ドタドタドタドタ!!??


1人が逃げ出したことがきっかけで堰き止められていた水が放出されたかのように一斉に逃げ出していく。それを止めようとする者もおらず止める側の人間もすでにあの世。こうして俺は奇跡を起こすことができた。


「は、はは……やった……やったんだ……」


バタン!


さすがに疲労困憊で身体中も傷だらけ。現在の魔力もそんなに残っていない。あれ以上の戦闘は無理だっただろう。


「そうだ……早く……父さんと母さんを……安心させないと……」


しかしそれは叶わない願いだった。俺の目に映るは死屍累々の惨劇のみ。


俺が村にたどり着いた時にはすでにエルフは半分以上が死亡しエルダーエルフにいたっては生きているものは誰一人としていなかった。それはもちろん父さんも母さんも同様に。


「うああああああああああああ!!!!????」


俺はこの世界でたったひとりになってしまった。

読んでくださりありがとうございます!


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