第2話 他種族狩り
エルダーエルフは半精霊のため寿命がない。そのために成長が著しく遅く500年という長いが確かな寿命が存在するエルフのほうが魔法の扱いにも長けておりエルダーエルフよりも強い。これが普通であるし常識。しかしここにその常識を覆した男がいる。当然その男というのがアルベール・シュヴァイクこと俺である。
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--転生から200年--
そこは森の中。この世界は魔法のある異世界ということで森の中には獰猛な魔物が存在する。
「我、雷となりて音を超え光を超えん!」
「ガアア!」
1体の四本腕のある熊の魔物が俺を引き裂こうとする。しかしそれよりも俺が詠唱を終えるほうが早かった。
「雷迅!」
ギュン!
熊の攻撃は誰にもあたることなく空を切る。
「グガア?」
熊は目の前にいた俺が突然にいなくなったことで困惑している様子。どうやら一瞬で背後に移動したことには気が付いていないようだ。
「風刃!」
ザン!
コロコロコロ
俺の風の刃によって熊の首は切り飛ばされ戦闘は終了した。
「ふう……詠唱破棄でもあの切れ味になったか。いい感じだな」
最初は子供の熊が相手でも効果を発揮しなかった風刃も今では詠唱破棄しても首を刎ねることができるまでに成長。俺は確実に強くなっていた。
パチパチパチパチ
「さすがだなアル」
俺は拍手とその言葉に振り替えるとそこには親友のオーパス・リュディエスが立っていた。オーパスは年が百数十年単位で離れているが一番年が近くてよく遊ぶ親友だ。
「来てたのかオーパス。声をかけてくれたらよかったのに」
「師匠の戦いを見るのも勉強のひとつだろ?」
「まあその通りだな!弟子よ!」
オーパスは俺が魔法の修業をしていると興味を持ったのか俺に教わりに来た珍しいやつ。
「……すごいよな~アルは……」
「なんだよ急に?」
村へと帰還中にオーパスが突然そう言ってきた。
「俺たちは基本ゆっくりな奴が多いだろ?のほほんとしてたりぼうっとしてたり」
「俺が変わり者なんだよ。エルダーエルフの異端児って感じだな」
「でもその異端児が今ではエルフをも超える強さを手に入れたんだ……俺たちはすべての成長が遅い。才能がある奴でもエルフに比べたら成長なんて微々たる早さだ……それでも諦めずに毎日鍛錬を繰り返せばいつかは強くなれるってアルが証明してくれた……」
「どうしたんだよオーパス?なにかあったのか?」
いつもは冗談を言い合う事の多いオーパスの真面目な言葉に少し戸惑う俺。問いかけるとオーパスは恥ずかしそうにその意味を答えてくれた。
「俺……今度結婚するんだよ……」
「マジか!?おめでとう!? そうか……だから最近は鍛錬に一層のやる気が感じられたのか……」
「ああ……もし子供が生まれたときに守れる強さが欲しいから……」
「それじゃあその子に俺が魔法を教えてやるよ」
「ハハ!その時は頼むよ!」
そうした和やかな雰囲気はこの日で終わりを迎える。
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『そう言えば村長にアルを急いで呼んできてくれって言われてたんだった』
という森からゆっくりと歩いてもうすぐ村に着くという段階になり思い出したかのように言い出したオーパス。"急いで呼んできてくれ"って言われたのなら真っ先にそれを言えよと思う。
「すいません遅くなりましたー!」
村長の家の中へと入るとそこには父さんをはじめとした長く生きている人たちやエルフの中でも実力のある者たちが集められている。そしてその雰囲気はなにやら物々しいものがあった。
「父さん?それにエルフの人たちも……村長なにこれ?」
「よく来てくれたなアル。ロジェ……いいな?」
「……はい……わかりました……」
村長の問いかけに頷く父さんの表情は苦しみを抱いていた。そして村長から村の危機を教えられた。
「……ここにヒューマンが大挙して押し寄せてきているという報告が上がっている……」
「ヒューマンが?大挙してって……どうしてそんな……」
ちなみにこの世界の種族はエルダーエルフにエルフ。そのほかにはヒューマン・ビースト・ドワーフ・オーガなんかも存在するらしい。まあ森から出たことがないからほかの種族なんて見たことないけど。
俺の質問に答えたのはエルフの人たち。
「奴らはディアント帝国……あの国はヒューマン以外の種族の存在を許さずに他種族狩りを行っていると聞いたことがあります……」
「おそらく今回の目的もまた我々の抹殺にあるのかと」
「……ヒューマン至上主義の国ってことか……」
部屋の中には重い空気が流れる。
「村長……敵の人数は?おおよその到着日数は?」
「敵は……少なく見積もっても100万規模の兵士が明日には押し寄せるだろう……」
「なっ!?100万!?」
いくらなんでも多すぎるだろ。こんな数十人しかいないような村を殲滅するのにそんな大人数での行軍とか常軌を逸している。
「しかも明日……逃げましょう村長!そんな規模はさすがに無理だ!」
しかし俺の言葉に村長は首を横に振って否定する。
「無理だ……奴らは徹底している……すでに逃げ場がないように二重三重の巨大な人の輪で包囲されている……」
「仮に突貫し包囲網を突破したとしても次の包囲網が出来上がるだけだ……我々は戦うしかない……」
こうして俺たちは100万規模のヒューマンを相手に数十人で戦うことを余儀なくされた。父さんが苦しそうにしていたのは村で最も強い俺を最前線で戦わせることへの葛藤だったらしい。
そしてこれが俺の"大いなる悲劇"の始まりだった。
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