第1話 転生
俺は転生者。だが普通の転生ではないらしい。
「きゃああ!!ちょっと見てよロジェ!!この子もう立ってるわよ!!」
「ああ見ているよクロエ!!10年で立つなんて!!なんて成長が早いんだ!!この子は天才かもしれない!!」
俺が居眠り信号無視トラックに轢かれて転生し早10年。前世では小学4年生ごろだが今世では10年が経ってやっと立つことができた。前世の感覚があるぶん成長の遅さにイライラする。
「(う~ん……エルダーエルフか……寿命がないってのはうれしいけど……成長が遅いんだよな~……)」
エルフの上位のような種族で半分精霊らしくそれ故に寿命がない。ある一定の年齢になると成長が止まり以降は老化が起こらないというのがエルダーエルフらしい。
「(半面として子供が生まれにくいとか、生涯で1人とか、エルダーエルフ同士じゃないと子供ができないっていう制約があるらしいけど)」
そんな制約だらけの子作りだから俺が生まれた時は村中で大喜び。ちなみに森にあるこの村ではエルダーエルフはエルフと共に暮らしておりエルフからは敬われながらも共に良き隣人として支えあいながら暮らしている。
今世の両親の名前はロジェ・シュヴァイクとクロエ・シュヴァイク。ちなみに俺の成長が早いというのは親バカでもなんでもなくどうやら事実らしい。
「(本来は立つのに20年を要するって……前世では大人の年齢が今世では赤ちゃんか。 そりゃあ半分を切ったら大騒ぎはするか)」
どうやら騒がれてるらしいけど俺は今世で取り繕うつもりは微塵もない。
「(どうせならせっかくの異世界!楽しまないと損だもんな!)」
だけどそんな俺をエルダーエルフの弱点が襲い掛かってきた。
「(っていうか一向に魔力の扱いが上手くならないんだけど!?赤ちゃんチートができないんだけど!?)」
魔力は大岩を子供が動かすかのように微動だにしない。それでも諦めずに起きているうちは毎日動かしていると10年ほどが経過してようやく最近になって少しづつ動かせるようになってきた。
「(これって俺が才能がないのかそれともエルダーエルフの成長が遅いことが関係してるのか……たぶん後者だよな……はあ……)」
永遠を生きるエルダーエルフが故の成長の遅さは身体だけではなく魔力面でもそうらしい。
「(気長に頑張るしかないか)」
こうして俺=アルベール・シュヴァイクはエルダーエルフに転生した。
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--転生から80年--
俺は80年が経過してやっと小中学生ほどまで成長できた。80年経って身長は140cm前後。エルダーエルフの成長の遅さに当初はイライラしたりもしていたがそれも最近では慣れてきた。
「すう~ふう~……すう~ふう~……」
現在は日課の魔法の訓練。80年が経ったことでなんとか魔力は自在に操作できるようになってきた。これでもエルダーエルフとしたら早いほうだがまだちゃんとした魔法は扱えないでいる。
「風よ、刃となりて切り刻め!風刃!」
パシュン
俺が放った風魔法は数m先の木に当たっただけで消滅。木の表皮を少し削っただけに終わった。
「うし!ちゃんと成長してる!日々努力!日々努力!最初は発動すらしなかったんだから!大きな進歩だろ!」
だけど俺が目指すのは異世界に来たのなら誰もが目指す最強の魔法使い。こんなので満足できるわけがない。
「魔法とは……魔力を練りながら精霊への感謝を込めて放つもの……だからこその詠唱魔法……故にこそ詠唱破棄も無詠唱も威力が落ちていく……不完全な魔法だからこそ……」
目をつぶり村の大人たちに教えられたことを思い出しながら深呼吸。
ちなみに魔法とは火水風土雷氷の六属性が存在し人それぞれに得意属性と不得意属性が存在する。どうやら俺は風と雷が得意属性らしい。
「すう~……ふう~……」
ちなみに魔力は使えば減るのだが自然と回復していく。特に深呼吸などはする必要はないのだがなんだが習慣になってしまった。
「よし!次は火魔法をやってみよう!」
そんな毎日数時間の日課の魔法の訓練をする俺はすっかり村の変わり者扱いとなってしまった。時々こう言われることがある。
「なにをそんなに生き急いでいるんだ?まだ生まれてたったの80年だろ?」
たったの80年。前世の感覚がある俺としては80年は人間の平均寿命でありたったと表現する年数ではない。
「別に無茶をしてるつもりはないんだけどな?魔法の訓練は長くても3時間を毎日してるだけだし」
エルダーエルフは寿命が関係してるのかのんびり者が多い。そんな中で見たら毎日の訓練は珍しく映るのかもしれない。
「微々たる成長だけど確実に上手くなっているのがわかるからやってて楽しいんだよな~。いつかは外に行ってほかの種族と触れ合ってみたいな~。今はやっとお金の概念が生まれたほぼ原始時代っぽいけど……もうちょっと成長したらかな~」
どうやら俺は異世界の原始時代に転生したようだ。そんな時に村のはずれで魔法の訓練をしていた時のこと。俺に危機が迫っていた。
「グガアア」
それは熊のようだった。しかし腕が4本ある普通ではない熊。
「な……っ!あれってまさか……魔物……」
「……グガア……」
森から村に滅多に出てくることがないと言われる魔物。そんな危険な生物が俺の目の前にやってきた。そいつは俺を視界に入れると獲物として狙ってくる。
「グガア!」
ドシドシドシドシ!
「くそ……っ!か、風よ、刃となりて切り刻め!風刃!」
パシュン
しかし俺のそんな魔法など熊の魔物の毛皮の前には効果なし。弾かれ熊の魔物は俺の目の前にやってきた。
「グガア!」
「く……っ!」
俺は死を予感して目をつぶる。しかしその痛みは訪れなかった。
「グガア……!?」
その熊の魔物の悲鳴を受けて目を開けてみると腕に矢が突き刺さっていた。
「大丈夫ですか!アル様!」
それは村の治安を守るエルフだった。どうやらその人が熊の魔物に矢を射かけたらしい。
「(ただの矢があいつに突き刺さるわけがない……たぶん魔法で強化されてるんだ……俺だって80年欠かさずに頑張ってきたのに……こんなにも違うのか)」
異世界の恐怖知った。エルダーエルフの弱さを知った。それでも俺は一層に強さを求めた。
「この世界で生きていくためにも……強さが欲しい……今度は俺が助けられるように……」
俺は守るための強さを欲して一層の鍛錬を積むことにした……しかしこの時の俺はゆっくりと静かに終わりが近づいていることに気づいていなかった……
エルフとエルダーエルフはほとんど姿は変わらず。しかしエルフは直感で理解可能。
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