表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】最弱レイドボス『アシュラ』に転生した俺、討伐対象になったけど人類を滅ぼす気はないんだが?  作者: 一終一(にのまえしゅういち)
最終部 エンドコンテンツ編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

49/51

第49話 最終決戦3・解放

 灼熱(しゃくねつ)奈落(ならく)。岩盤が焼け(ただ)れ、空気は()ぜるように震え、ただ存在するだけで肉体を()がす世界。


 そこに俺と本物のティターンだけが立っていた。


「仲間は……(はい)れないな」


 上方を見上げれば、壊れたステージの(ふち)に皆が心配そうな面持(おもも)ちで立っているのがわかった。降りてこないのは紅黒い結界が(うず)を巻き、外からの干渉を拒絶しているからだ。


「アシュラ様!」

「負けないでくださいワン!」

「お前ならやれる!」


 声は届く。けれど入ることは不可能。もちろん俺が出ることも。


「絶体絶命、か」


 でも元々ひとりで戦うつもりだったし、それほど動揺はしていない。


 声援を背に受け、俺は両拳を構えた。


「……行くぞ、ティターン」


「覚悟を決めたか。さぁ来い。()の力をもって貴様を焼殺(しょうさつ)してやろう!」


 ティターンが巨腕を(かか)げると、黒炎が広がり奈落を(おお)う。


「《修羅扇(しゅらせん)》!」


 俺は六本の腕を広げ、嵐のごとき拳風で炎を切り裂く。しかし黒炎は風を喰らい、逆流するように俺へと(から)みつく。


「どうしたどうした! もっと攻撃してこい!」


 ティターンの拳が(せま)る。俺は拳をぶつけ返した。


「《連環(れんかん)多重撃(たじゅうげき)》!」


 幾重(いくえ)もの衝撃波が弾け、奈落全体が揺らぐ。それでもティターンは(ひる)まない。


「お前の力はその程度か!」


「まだだ!」


 俺は小型化スキル《縮躯転位(しゅくくてんい)》を解除する。


 体が膨張(ぼうちょう)し、三つの顔、六本の腕、塔のような巨躯(きょく)顕現(けんげん)する。


「これが俺の本当の姿だ!」


 火口を揺るがす咆哮(ほうこう)。拳と拳が衝突するたび、岩壁が崩落(ほうらく)する。しかし。


「ふん、小さき仮面を外したところでこの程度か!」


 ティターンの黒炎が俺の巨体を()み込む。炎の衝撃は俺の骨をきしませ、皮膚を裂いた。


「ぐぅ……っ!」


 押し負ける。巨大化してなお、圧倒的な力の差があった。


「まだ、マダァ!」


 俺は一拍(いっぱく)置いて、全ての腕に命令を送った。(こと)の音のようなものが体内で鳴り響く。直後、六腕が一斉に形を変える。皮膚に鋭い刃が生え、指先が鉤爪(かぎづめ)へと変貌(へんぼう)する。


「《赫腕断滅(かくわんだんめつ)》、発動!」


 声と同時に、紅蓮(ぐれん)の光が体を(つらぬ)いた。腕の刃が光を帯び、互いに連鎖して回転を始める。俺は一点を指し示す。ティターンの胸奥に眠る(かく)だ。


 腕が刃となって一列に折り畳まれ、まるで百の大鎌が同時に振り下ろされるような軌道を描く。だが一撃で終わらせるのではない。まずは切り裂き、次に縛り、最後に()つ。三段の連携が瞬時に流れ、炎の巨体を階層的に破壊する。


 一段目、刃が黒炎を斬り裂き、炎の流れを断ち切る。音は()ぜ、空気が裂ける。


 二段目、(くさり)となった腕が炎の(かたまり)を拘束し、封じる。炎が自由を奪われ、(ゆが)む。


 三段目、全ての腕が一点に凝集(ぎょうしゅう)し、拳のように固まる。その拳が核へと突き刺さる瞬間、全ての振動が爆発的に同期する。


 その一連の動作を瞬時に(おこな)う。それが《赫腕断滅(かくわんだんめつ)》。アシュラ最強の技だ。


「終わりだ、ティターン!」


 拳が核を貫いた。内側から黒い炎が噴き上がり、亀裂が一瞬で蜘蛛の巣のように走る。核の周囲で魔力の渦が逆巻(さかま)き、吸い込まれるように()がれていく。しかし。


「勝った、と思ったか?」


「な……!?」


 ティターンの体は時間が巻き戻るかの(ごと)く再生していく。


()の再生力を甘く見ていたようだな」


「うそ、だろ?」


 俺はその場に(ひざ)をついた。《赫腕断滅(かくわんだんめつ)》は大ダメージを与える代わりに膨大(ぼうだい)な体力を消費する諸刃(もろは)(つるぎ)。体が動かない。完全に終わりだ。


 ティターンは黒炎で巨大な剣を作ると、両手で持ち、天高く(かか)げる。


「サヨナラだ、アシュラァァァ!」


 今にも黒炎の剣が振り下ろされようとしていた。


 その瞬間、仲間たちの声が耳を突き抜ける。


「アシュラ! 立てぇぇ!」

「王子様ぁぁぁ!」

「負けるでないッ!」


 声が光となって胸に(とも)る。


 そして奥底で眠っていたものが、音を立てて目を覚ました。


【スキル《百腕神顕(ひゃくわんしんけん)》の特殊条件“(しん)窮地(きゅうち)(おちい)る”を満たしました】


 俺はここに来る前、スキルツリーのほとんどをマスターしていたのだが、ひとつだけ覚えられないものがあった。それが《百腕神顕(ひゃくわんしんけん)》。


 どういったスキルか分からないし、スキルの説明を読んでいる暇もない。俺は天に身を任せ、即座に発動した。


「来い……! 《百腕神顕(ひゃくわんしんけん)》ッ!」


 全身が()ぜ、六本の腕がさらに増殖する。十二、二十四、四十八、そして百。腕が奔流(ほんりゅう)のように生え、背からは影の翼が広がる。さらに三つの顔は増え、無数の眼が紅蓮(ぐれん)に輝いた。


「……これが俺の本当の姿——ヘカトンケイルだ」


 アシュラは仮の姿だったらしい。真にピンチになったときだけ使える、最後の権能(けんのう)


 ティターンが一瞬だけ後退(あとずさ)る。


「なに……ッ!? まだそんな力を残していたというのか……!?」


 視界は明瞭(めいりょう)。負ける気がしない。


「さぁ、続きをやろうぜ、ティターン!」


 そして俺は百腕(ひゃくわん)の嵐を黒炎の巨神へと叩き込んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ