第44話 終焉をもたらすもの
ケルベロスを退け、スローライフを楽しめたのも束の間、今度はMMORPGのラスボスであるティターンが現れた。いや、正確には声が聞こえた段階だ。
しかも俺を“強者を求めしもの”認定してきて戦おうとしている。
『強者を求めしものアシュラよ。余と戦え』
またティターンの声が聞こえた。うるせぇな。ちょっと音量しぼれよ。近所迷惑だろ。
「ガイア、ティターンのダンジョンの位置はでたか?」
「はい。西側の平原に火山型ダンジョンを観測」
「よし、アガペーを呼べ。ティターンのダンジョンが大きくなる前に叩く」
が、その時。またまたティターンの声。
『アシュラよ。来ぬというならば……大地ごと焼き払い、貴様を引きずり出してやろう』
いや、ちょっと待てよバカ。
「敵ダンジョンに高エネルギーを観測!」
ガイアの焦った声が響く。
「なんだ!? 映像はないのか!?」
「我らに任せてワン! 分身体と視覚共有するワン!」
ケルベロスが発言した直後、六つの瞳が光り、映写機のように壁へ映像が投影された。
見ると、火山ダンジョンから溶岩が流れ出ていた。
「な……嘘だろ!?」
映し出された光景に俺は思わず頭を抱えた。溶岩が川のように平原を覆い、街道へと迫っている。あのままじゃ人間の町が丸焼けだ。
「ティターンの野郎、ただの脅しじゃすまされねぇぞ……!」
ケルベロスの三つ首が同時に吠える。
「人間の街が危ないワン!」
「早く止めないとワン!」
「熱いのは嫌ワン!」
うるせぇ、分かってるよ!
「ガイア! 火山周辺の人間を俺のダンジョンに避難させてくれ!」
「了解しました。観光誘致のために各地に飛ばしているナビビ達に鳥を飛ばしておきます。それからケルベロス様もお手伝いお願いできますか?」
「もちろんですワン! 分身体を使って避難を呼びかけるワン!」
と言った直後、体を光らせて分身体と交信し始めた。
「助かる。後は溶岩自体をどうにかしないとならないが、ガイア、何か案はあるか?」
「全方位に高速で流れているため対応は極めて困難です。申し訳ありませんが現状最適と言える対応はございません……」
チッ……やはり本体を叩くしかない。ティターンを倒すしか。
そのとき、透き通る声が響いた。
「わたくしにお任せください」
入口の方を見ると、金の髪を揺らして立つ聖女ステュク。琥珀色の瞳が真っ直ぐにこちらを見つめていた。
「ステュク、どうする気だ?」
ガイアを通して訊ねる。
「ヴァルトラント聖王国に救援を要請します。わたくしの国は雪に覆われた北の地。氷雪魔法を得意とする者が大勢います。彼らならば、炎の奔流を抑えられるはずです」
なるほど……! それなら!
「すぐに頼む!」
「ワシも行こう」
続いて姿を現したのは茶ヒゲを蓄えた老人。ステュクの祖父、エクレシオンだ。
「ワシが声をかければ、邪滅派の連中も簡単に腰を上げるじゃろう」
「お祖父様……! ありがとうございます!」
「ふんっ! 勘違いするなよ! これは聖女のためじゃない! 聖王国と浄光の槌のためじゃからな! わ、忘れるでないぞ!」
出た、ツンデレジジイ。裏では孫にデレデレだが、表ではツンツンするのは継続らしい。
俺がニヤつくのを堪えていると、さらに新手の声が飛んできた。
「話は聞かせてもらった。我々も協力しよう」
現れたのは金髪の男。クロノス王国第一王子、セイドだ。相変わらず絵になるイケメン。
「セイド!? なぜここに!」
「たまたま近くを通ったんだ。アシュラ、君と少し話そうと思ったら……この有様さ。それよりもだ、クロノス王国も力を貸そう。ギルドの者達を総動員すれば避難も早いはず」
「……助かる!」
「だが、問題はその先だ」
セイドの視線が鋭く俺を射抜く。
「アシュラ。君はどうするつもりだ?」
わかってる。逃げ道なんてない。
「決まってる。挑まれた以上、俺がティターンと戦う」
六本の腕を組み直し、俺は皆に向かって力強く頷いた。




