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【完結】最弱レイドボス『アシュラ』に転生した俺、討伐対象になったけど人類を滅ぼす気はないんだが?  作者: 一終一(にのまえしゅういち)
第4部 古代生体兵器編

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第39話 ケルベロス攻略1・門番

 小型化スキルを覚えた俺は、三人の愉快(ゆかい)な仲間たちとともにケルベロスのダンジョンへと向かっていた。


 東の森は昼間だというのに光が届きにくく、鬱蒼(うっそう)とした木々が俺たちの行く手を(ふさ)ぐ。風もないのに枝葉(えだは)がざわつき、不気味な気配が(ただよ)っていた。


「来るわよ」


 アガペーが蛇髪を逆立てて警告した次の瞬間、(しげ)みをかき分けて狼の群れが飛び出してきた。


 その名は骸狼(がいろう)。骨がところどころ()き出しになった狼型モンスターだ。腐臭(ふしゅう)をまき散らしながら十数体が一斉に飛びかかってくる。


「任せるのじゃ!」


 エクレシオンの聖槌(せいつち)(うな)りを上げ、一撃で三体の骸狼(がいろう)を粉砕する。だが砕けた骨が再び組み上がり、形を取り戻して立ち上がった。


「なぬぅ!?」


「打撃に耐性を持っています……わたくしに任せてください! 《浄罪の聖炎(セイクリッド・フレア)》!」


 ステュクが必死に詠唱し、光の炎を放つ。白い炎が群れを包み込み、骸狼(がいろう)たちが耳障りな遠吠えを上げて崩れ落ちた。


「負けてらんねぇな」


 俺も六本の腕を伸ばし、剣で斬撃を叩き込む。


 しかし、あまりダメージが入っていない。小型化による弱体化の影響だろう。


「王子様、支援するわ! 《蛇影(じゃえい)誓約(せいやく)》!」


 アガペーの支援スキルにより、俺の能力が上がる。


 そのバフを受けたまま骸狼(がいろう)を何度か斬ると、頭蓋(ずがい)が砕けて骨が粉塵(ふんじん)となり、ようやく沈黙した。


「やりましたね!」


 ステュクを中心にみな喜んでいる。


 少数精鋭というには不安があったが、結構いいパーティーじゃないか。


 ただ、一個だけ難点がある。それは言葉が通じないことだ。


「禁断の花嫁よ、面白い技を使うのう」


「なにジジイ。口説(くど)いてるのかしら? 私は王子様のものなんだけど」


「お二人とも仲良しさんで良かったですぅ」


 あべこべな会話を聞いて俺は肩をすくめた。まぁ逆にこの方が上手くやれそうな気がするな。


 ちなみに通訳のガイアは留守番だ。戦闘精霊ではないから役に立たないというのもあるが、どうせ17時には退勤するので長期ダンジョン攻略には使えないのである。付け加えると魔導スクリーンは内線のようなもので、外では使えないから連絡も取れない。正直、使い勝手悪いよな!


 それはさておき、俺たち四人は先へと進む。


 その後、何度かの襲撃を退(しりぞ)けながら移動するうちに森の奥へとたどり着く。


「これがケルベロスの巣か」


 (こけ)(おお)われた巨大な石造りの門。二本の柱には牙を()く犬の浮き()りがびっしりと刻まれ、アーチ部分には(くさり)模様が連なっている。静かにそびえているだけなのに、見ていると心臓を掴まれるような圧があった。


「ただの入口じゃないわね。結界が張ってある。近くに門番がいるはずよ」


 アガペーが蛇髪を揺らしながら(にら)みつける。尾の先が小刻みに震えているのは彼女なりの緊張の(あかし)だろう。


「ふむ……聖典にこんな一節(いっせつ)がある。試練の門を越えし者、真の敵に(いた)る、とな。……ワシらを待っておるというわけじゃな」


 もうそのポンコツ聖典の話はいいよ。早く破り捨てようぜ。


 刹那(せつな)、エクレシオンが低く(うな)り、聖槌(せいつち)()に手をかける。


「ぬぅ、来るぞ……!」


 その言葉に呼応するように、門の前の地面がひび割れ、二頭の石像が出現した。両方とも禍々(まがまが)しい顔をした犬型で、異様に大きく、眼孔(がんこう)に赤黒い光を宿していた。石の牙を鳴らし、俺たちを(にら)みつけてくる。


石獣(せきじゅう)ツインガルド。名前以外は不明ね」


 アガペーが言った。彼女の瞳が赤く発光している。敵のステータスを見れるスキルを使用しているようだ。


「アシュラ様……」


 ステュクが俺を見上げてくる。その目には不安と、強さが混ざっていた。


「行くぞ」


 俺は短く言い放ち、仲間と共に石の門番へと立ち向かう。


 石獣(せきじゅう)ツインガルドは石でできているはずなのに、関節は(きし)みながらもなめらかに動いている。


「ガルル……!」


 石の裂け目から響くような低い声が森を震わせた。


「バウ!」


 二頭が同時に吠えた。轟音(ごうおん)とともに衝撃波が走り、地面の(こけ)ごと木の根が(えぐ)り取られる。


「くっ、散開せよ!」


 エクレシオンの号令で俺たちは左右に飛び退()いた。


 直後、石の尾が地を()ぎ払う。太い木々が何本もなぎ倒され、破片が雨のように降り注いだ。


「クッ……あれを受けたら危険よ!」


 アガペーが尻尾をかわしながら蛇髪を伸ばし、石獣(せきじゅう)の首に(から)みつかせる。しかし石の硬さに蛇の牙は通らない。逆に頭を振り払われ、アガペーの体が宙を舞った。


「きゃっ!」


「アガペー!」


 俺は咄嗟(とっさ)に六本の腕を伸ばして受け止める。腕が(しび)れるほどの衝撃が走った。


「大丈夫か?」


 そう言って彼女を下ろした。


「はい! ありがとう王子様……!」


 目がハートになっている。


 今はラブコメしてる場合じゃないぞ、と内心で思いつつ俺は敵へ向き直る。


 すると、エクレシオンが聖槌(せいつち)を振り下ろす最中だった。


「《神光撃(しんこうげき)》!」


 光に包まれた一撃が石獣(せきじゅう)の前脚を砕き、地面にめり込ませた。


 負けじと石獣(せきじゅう)が口を開く。今度は赤黒い火花が口腔(こうくう)に溜まり、熱線のような光が一直線に放たれた。


「お祖父(じい)様っ! 《聖盾結界(せいじゅんけっかい)》!」


 ステュクの声と同時、ジジイの周囲に光の(まく)が展開する。防御結界だ。熱線が膜に直撃し、耳をつんざくような音を立てて弾け散る。


「助かる!」


 と言って、エクレシオンはバックステップで後退する。


 入れ替わるように俺が熱線により発生した黒煙(こくえん)を引きながらスキルを唱える。


「《修羅車(しゅらぐるま)》!」


 体を折り畳み、車輪のように回転して突進。石獣(せきじゅう)の胴体に叩き込む。火花が散り、ひび割れが走った。


 だが石獣(せきじゅう)は倒れない。二頭が一斉に()え、口から発射された石の破片が弾丸のように飛び交う。


「ひぃっ!」


 ステュクの悲鳴。


「ステュク!」


 俺はスキルを解除。盾を召喚して仲間をかばった。防ぎきれなかった破片が体に突き刺さるが、小型化した体でも耐えきれる程度のダメージだった。


「弱点は赤い(かく)よ!」


 アガペーが叫ぶ。蛇髪の一匹が石獣(せきじゅう)の胸の奥に、赤黒い光の(かたまり)を見つけたのだ。


「なら、叩き割る!」


 俺は盾を消し、敵へと()ける。アガペーの蛇髪と、エクレシオンの聖槌(せいつち)から放たれる光弾がその(すき)(おぎな)う。


 俺は踏み込み、渾身(こんしん)の一撃を敵の胸部へ叩き込む。


 ひときわ大きな轟音(ごうおん)とともに、石獣(せきじゅう)ツインガルドの一頭は胸を裂かれて砕け散る。赤黒い光はふっと消え、残ったのはただの崩れた石像。


 だがその瞬間、残ったもう一体の光が増し、赤黒さが深紅(しんく)に変わった。


「ひゃっ、強化された……!?」


 ステュクが小さな悲鳴を上げる。


 一匹を失った代わりに、残った方が力を取り込んだのだ。動きが倍速に近い速さになり、尾の一撃は先ほどの比ではない。


「《神光撃(しんこうげき)》を当てる隙がない……!」


 エクレシオンが歯噛(はが)みする。


「私が止めるわ。《蛇帝(じゃてい)抱擁(ほうよう)》!」


 アガペーの蛇髪が一斉に伸び、石獣(せきじゅう)の脚を(から)め取った。


「今だ、行くぞ!」


 俺が拳を叩き込み、エクレシオンが聖槌(せいつち)で胸を砕く。すかさずステュクが詠唱を重ねる。


「《浄罪の聖炎(セイクリッド・フレア)》!」


 白炎が胸の亀裂(きれつ)に流れ込み、(かく)を焼き尽くした。


 こうして石獣(せきじゅう)ツインガルドの二体目も絶叫(ぜっきょう)とともに砕け散り、森に静寂(せいじゃく)が戻った。


「ふぅ、なんとかなったな」


 やがて、門が重々(おもおも)しい音を立てて開いていく。


「これで……ようやく進めるわね」


 アガペーが(ひたい)の汗を(ぬぐ)いながら(つぶや)いた。


「突入する。油断するな」


 俺の言葉を察した仲間達は(うなず)き合い、暗き門の中へと踏み込んだ。

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