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【完結】最弱レイドボス『アシュラ』に転生した俺、討伐対象になったけど人類を滅ぼす気はないんだが?  作者: 一終一(にのまえしゅういち)
第4部 古代生体兵器編

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第37話 キャラ被り

 ナビビの報告に玉座の間が一瞬でざわめきに飲み込まれた。


「新しいダンジョン、ね。最近の地震の原因はやはりこれだったか」


「はい! それも……門のような形をした奇妙なダンジョンです! まるで異界へ通じる入口のようで……」


 門の形? なんか嫌な予感が、と思った瞬間。


「門!? 門と言ったか!?」


 大げさに反応したのは怪盗ハデスだった。なんで人語で喋ってないのに門という単語だけは聞き取れるんだよ。


「つ、遂に新たな理想郷へのゲートが開いたのか……!」


 ハデスはすごいウキウキしていた。コイツ門の形してたらなんでもいいのかよ。


「ナビビ、他に情報はないか?」


「ボク達にはこれ以上の情報は得られませんッ! ガイア様なら分析してくれると思いますッ!」


 クッ、肝心(かんじん)な時にいねぇな。仕方ない朝まで待つか。


「ナビビ、ダンジョンに大きな動きがあったら知らせてくれ」


「はいッ! 夜勤(やきん)がんばりますッ!」


 敬礼(けいれい)をして飛んでいった。


 夜は長く、そして意外と静かに過ぎた。


 プスプス族は温泉の番を口実に湯に浸かり、ナビビ族は交代制で巡回(じゅんかい)に出ていた。俺は玉座の上で腕を組み、じっと瞑想(めいそう)するフリをしながら寝ていた……が、正直、あまり寝れなかった。


 ——そして朝。


 ふわりと光が差し込み、(あわ)い緑の粒子が舞い降りる。


「おはようございます、アシュラ様」


 翡翠(ひすい)色の髪を揺らし、精霊ガイアが出勤してきた。残業は断固拒否のくせに始業時間にはきっちり現れる律儀(りちぎ)さよ。


「おう、ガイア。待ってたぞ。例の門型のダンジョン、どう思う?」


「はい、夜のうちに観測しました。結論から申し上げますと……中にレイドボスが生まれています。名称ケルベロス。三つ首の犬魔獣です」


「ケルベロスだと……!?」


 ギリシャ神話においては冥界(めいかい)の番犬。


 そしてMMORPGティタノマキアにおいては、サービス終了発表前のエンドコンテンツレイドボスだった。サ終発表後に新ボス“ティターン”が実装されたため、実質ラスボス一歩手前の存在。


「ケルベロスは三つ首を持ち、異界の門を守護する存在。極めて強力な個体です」


 あ、三つ首といえば。


「おい、キャラ被りじゃねぇか! 三つ首枠は俺で十分だろ!」


「アシュラ様は三つの顔ですので、厳密には別枠かと」


「同じだろ! 世間から見りゃ“顔が三つもある化け物”で一緒だろ!」


 そこで、はたと気づく。


 【浄光(じょうこう)(つち)】の聖典に書かれていた三つ首魔獣って俺のことじゃなくてケルベロスのことだったんじゃないか?


 だとしたら色々と繋がる。


 聖典の原典は自動書記だった。そしてMMORPGというのは事あるごとにアップデートしていくもの。つまり聖典に書かれていたことはケルベロス実装に(ともな)い、ストーリー性を持たせるための加筆……!


 ティタノマキアめ、面倒なシステムを残してくれたな……! だからサ終するんだよ……!


 俺が八つ当たり的なことを考えていると、玉座の間の扉が勢いよく開かれる。


 白い法衣をまとった一団がゾロゾロとなだれ込んできた。二つの派閥の一つである聖環(せいかん)派の方だ。


「聖女様、新たな“三つ首魔獣”が現れました」


 チッ、情報が早いな。こいつらガイアより優秀なんじゃないか?


「そ、それは……!」


 ステュクは何かを察したように青ざめる。


 そして聖環派の一人がとんでもないことを口にした。


「聖典の一節(いっせつ)の通り、その身を生け(にえ)(ささ)げ、ケルベロスを(しず)めるのです!」


 クッ、そう来たか……!


 やはり三つ首魔獣はケルベロスのことで間違いなさそうだ。だがどうする。


 俺がなにも言葉を(つむ)げないでいると、ステュクが覚悟を決めた表情を浮かべた。


 白衣の一団の視線を一身に浴びながら、彼女は静かに歩み出る。


「……分かりました。わたくしが行きます」


 玉座の間に一瞬、ざわめきが走った。


「ステュク!? お前、何を言っている!」


 俺は思わず声を張り上げる。だが彼女は微笑(ほほえ)んで首を振った。


「これは聖女の(つと)めです。生け(にえ)としてケルベロスの前に立ち、命を差し出すことで人々を救うのなら……それがわたくしの役割です」


 冗談じゃねぇ。こんなガキみたいな聖女を犬のエサにするだと? 俺の胸の奥で、言いようのない苛立(いらだ)ちが広がる。


「それにわたくしには聖騎士団がついていますから、彼らと共に(あらが)ってみます」


 俺からしたらこの聖騎士団がやっかいだ。コイツらのせいでステュクをこの場に(とど)めておくことが難しい。


 なぜなら戦いになれば勝てるか分からないし、揉めている場合でもないからだ。


 かといって、コイツらがケルベロスに勝てるとも思えない。


「では聖女様。時間がありません。すぐに準備に取り掛かりましょう」


 彼らの声が玉座の間に響いた瞬間、俺はかつてないほどの(あせ)りを感じていた。


 このままではステュクが——死ぬ。

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