↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
造花の魔王  作者: 黒しろんぬ
幕間
111/124

幕間.砕けることのない意思は永遠の輝き

 どれくらいの年月、そうしていたのか。

 気付けば主が変わっていた。どうやら私は目の前の男に強奪されたらしい。名を、ゼファリオン・ヴォルシュタインと言う。

 ただあるがまま、私はそれを受け入れる。

 しかし、このゼファリオンと言う男はそれを許さなかった。

 

 なぜ、そんなにも虚無なのか問われた。問い詰められた。答えの出ない感情を数百年と出力できないからこうなっていると言うのに、ゼファリオンは私に答えを求めた。


「それは、私がそういう生き物だからです」


「いやちげぇだろ、どう見ても幸薄男やもめだろ」


「……はい?」


 ゼファリオンの言葉が理解できなかった。


「男やもめ、とは?」


「要するにお前は愛する女に先立たれて、未練たらたらで立ち直れねぇで虚無になってんだな。……他の奴と違って貴族から受けた仕打ちなんて屁でもねぇのか」

 

 竜種には伴侶を失って悲しむという感情がない。だから未亡人などという概念は当てはまらない。そう説明しようとしたが、ゼファリオンは私の言葉を待たずに大笑いしながら私の背中をバンバンと叩いた。


「強ぇな、お前は」


「……竜種の強さは、名前の因果によるものです。私の名がそうである以上、強度があるのは当然です」


「ちげぇよ」


 ゼファリオンはあっさりと切り捨てた。


「因果で強い竜なら腐るほど見てきた。お前みたいな強さじゃなかった。怒りもねぇ、欲もねぇ、なのに何で折れない? 守るモンがいたからだろ――名前の意味じゃなく、お前自身がそれを選んで磨いてきたんだろ、その強さを」


「……私は、そういった感情とは程遠いので、分かりません」


「そのわりに、ずっと何かを探してんじゃねェか」


 何か――そう言われて、ずっと胸の奥に沈んでいたあの約束を思い出した。

 

「理由は聞かねェよ。いいか、俺は道具なんぞいらねェ。俺の隣に立つなら、てめェの意思で立て。泣きたいなら泣け。怒りたいなら怒れ。……出力の仕方が分からねェなら、俺が教えてやる」


 出力の仕方。その言葉が、空洞だった胸の奥に奇妙な反響を生んだ。私にはそもそも出力する感情がないはずだ。だというのに、なぜか彼のその言葉にだけは――反論できなかった。

 彼は破天荒で、傲慢で、人間と竜の境界線など気にも留めない男だった。


 この日から、私の生活は一変した。


 ゼファリオンは、王になると言い出した。

 私や***と呼ばれる黒竜、そして彼が貴族から強奪した数匹の竜を引き連れて。

 道中、彼は王の軍勢を相手に暴れ回り、その背中で「どうだ、すげェだろ」と笑ってみせた。

 しかし、共に歩んだ竜たちの多くは、王都へ辿り着く前に命を落とした。

 激しい戦いで傷ついたからではない。彼らは長年貴族の道具として扱われ続けた結果、すでに心が摩耗しきっていたのだ。

 命じられるままにすり減った彼らは、ただ糸が切れたように静かに歩みを止め、石のように崩れ落ちて死んでいった。


「……また一匹、逝きやがったか」


 ゼファリオンは倒れた竜の前に立ち、ひどく悔しそうに顔を歪めていた。

 ふと――頭に過ぎったのはカリナとの約束だった。あの子は――どこにいるのだろう。貴族の元で傷ついたりしていないだろうか。


 結局、王城へ辿り着き、王家を滅ぼしたのは、ほぼゼファリオン一人の力だった。私とロボはただ、その圧倒的な背中に付き従っていたに過ぎない。

 彼が新しい王として血塗られた玉座に就いてからも、私の日常は彼に振り回され続けた。

 ***が王の象徴として命定改名を自ら受けたのもこの頃だった。


 ゼファリオンが玉座に就いた直後――私はようやく、あの子を探すための行動を起こそうとした。

 女王の巣で産まれた竜が誰に下賜されたかなど、王家の厳重な管理下にある。一介の貴族や、ましてや道具である竜が閲覧できる情報ではなかった。

 だが、ゼファリオンが古い王家を滅ぼし、新たな王となった今なら、その禁書庫にも足を踏み入れることができる。

 二百年越しの希望を抱き、私は王城の資料室へ向かった。

 しかし、私がそこへ辿り着いた時、資料室にあった旧王家の情報の類は全て――ゼファリオンによって離宮の強酸池に投げ込まれた後だった。

 慌てて離宮の地下へ行ってみると、強酸池の中にぶくぶくと泡を立てて羊皮紙が分解されていた。

 ゼファリオン曰く、部屋が手狭になったから増やそうと思って掃除をした――らしい。

 私はただ呆然と、泡になっていく記録を見つめることしかできなかった。


 どこの誰に引き取られたのか、カリナにどんな名前を与えられたのか。

 手がかりは、完全に絶たれてしまった。


 さらに追い打ちをかけるように、私をこの場に縛り付ける出来事が起きた。

 ゼファリオンの妻が、一人息子であるレヴォネスを産み落とし、そのまま命を落としたのだ。

 愛する妻を失ったゼファリオンは荒れたが、何より問題だったのは、彼が育児という繊細な作業において絶望的なまでに無能だったことだ。


 赤ん坊の泣き声にパニックになる屈強な王。

 新米の簒奪王家には子育てを任せられる信頼できる使用人もいなかった。

 結局、見かねた私とロボが、代わりにその小さな命の世話を焼く羽目になった。

 ロボは「なんで俺が人間のガキの世話なんか……!」と悪態をつきながらも付き合い、私はと言えば、朴念仁なりになぜか赤ん坊をあやすのだけは妙に得意だった。


 思えば、ゼファリオンと共に王都を奪った道中では、我々は王の暴れっぷりをただ眺めていただけで、お互いに肩を並べて戦った記憶は少ない。

 だというのに、終わりの見えない夜泣きに三日三晩耐え、離乳食の温度ひとつで互いの角を折る勢いでぶつかり合っているうちに、奇妙な連帯感が生まれていた。

 人より強力な力を持つ我々が、たかが数キロの人間の赤ん坊に振り回され、ボロボロになりながら同じ地獄を共有している。いつしか私とロボは、揺り籠の前で本物の戦友と呼べる関係になっていた。


 皮肉なことだった。自分の子を探す術を失った直後に、赤の他人の子を育てることになるとは。

 しかし、その温もりを抱いている間だけは、かつてカリナが私に託そうとした命の重さを、少しだけ理解できたような気がしたのだ。

 レヴォネスをあやしながら、私は自分の掌の大きさを改めて自覚した。この腕は、こんなにも小さな命を守るためにあるのかと。……同時に、一つの冷たい考えが脳裏をよぎった。カリナが遺したあの子は――私の知らない冷たい石畳の上で、ただの道具として、貴族に従わされているのだろうか。……そう考えた瞬間、私の胸の奥が、かつてないほど激しく軋んだのだ。

 私は、城を抜け出して決闘場に何度も足を運んだ。

 泥を啜り、誇りを砕かれ、主人の顔色を窺って剣(ちから)を振るう数多の竜の中に、あの子が混じっていないか確かめるために。

 きっと、炎を使うと思った。

 カリナは炎に包まれた卵だと言っていた。

 だから炎を使う竜種を必死になって探したが――自分の子だと思える竜種を見つけることは、ついにできなかった。


 数十年後、成長したレヴォネスに子が――ゼファリオンの孫が生まれた。

 人の名付けは、私にとっては新鮮だった。竜種は卵の中にいる時に母が名付ける。生まれながらに因果が決まっている生き物。その名前の意味は母ですら知らない事が多いと言う。

 一方で人間は、自らの名を子に分け与えることもあると言うのだ。

 因果に縛られることのない自由な生き物である事の証明のようだった。

 母の名を分けてもらい、アシュレイと名付けられたその小さな人の子に、私は拙い言葉で、ゼファリオンから聞いた武勇伝を語り聞かせた。

 アシュレイは目を輝かせてそれを聞き、私はその姿に、かつてカリナが読んでくれた甘味の手順書を静かに聞いていた日々の温もりを、思い出すことができた。

 ただ、レイアはあまり竜種に子育てを任せることを好まなかった。理由は、竜種は人間をあまりにも甘やかしすぎるから、らしい。

 その頃になると私は、自分が少しだけ感情の出力の仕方を覚えかけていることに気づいていた。


 私は、自分の子さえ見つけられない無能な父だ。せめてこの手の中にいるゼファリオンの子らを完璧に守り抜かなければ、私はカリナに合わせる顔がない。

 レヴォネスを、そしてその後に生まれたアシュレイを、我が子を投影するように慈しんだ。それは、自分の無力さから目を逸らすための、必死な身代わりだったのかもしれない。


 アシュレイの誕生から三年後、彼に弟が生まれた。

 のちにゼファレスと名乗ることになるその赤子を、ゼファリオンはアシュレイ同様に大層可愛がっていたが――王の命の灯火は、長くは続かなかった。

 アシュレイが六歳、彼が三歳になった年。破天荒で強き王であったゼファリオンは、あっけなくこの世を去った。


 悲しむという機能を持たない私ですら、その大きく騒がしい背中がもうどこにもないことに、胸の奥がぽっかりと空洞になったような喪失感を覚えた。


 やがて彼が六歳になった頃、ゼファリオンと全く同じ火傷のような痣が浮き上がり始めていた。それも左腕だけではなく、右腕、左脚。右脚に。

 レヴォネスには決して発現しなかった、恐るべき呪いの刻印。

 レヴォネスは彼こそが真の継承者だと狂喜したが、彼らの母であるレイアは、その痣を見て酷く怯えていたのを覚えている。


 さらに悲劇は続く。

 ゼファリオンの死から七年後。アシュレイが十三歳、彼が十歳の時――レイアが病で命を落としたのだ。

 若すぎる母の死に、彼らはひどく塞ぎ込んだ。

 レヴォネスは悲しみから執務に没頭し、子らから目を逸らした。

 愛する者を失い、抜け殻のようになる苦しみを、私は知っている。

 かつてカリナを失った過去を持つ私は、あの子の中に渦巻く暗い喪失の淵に、何か言葉をかけてやれないかと思った。

 ゼファリオンが私にしてくれたように、不器用でも寄り添えば、彼の虚無を少しでも埋められるかもしれないと考えたのだ。

 レヴォネスは――大丈夫だろう。彼に必要なのは癒やしではなく時間だ。でも、子らはそうはいかない。

 ロボはアシュレイを、私はあの子を。二人で話し合い、そう決めた。


 しかし、彼は私に心を開いてはくれなかった。


 掛ける言葉も見つからないまま、それでも十歳の彼に手を伸ばしたのがいけなかったのだろうか。

 彼の中に、私は救えなかったはずの我が子の幻影を見ていた。


「……触るな」


 琥珀色の瞳が、ひどく揺れていた。

 ここで彼から手を引くことは、どこかにいる我が子を再び見捨てることと同じだと、本能が叫んでいた。


「僕に、そんなものは必要ない。……情など、愛など、何ひとついらない……っ」


 それは拒絶という名の悲鳴だった。

 私には言葉が足りなかった。

 そんなことはない、と言える気概がなかった。

 自分でもどうしたらいいかわからないほどのやり場のない感情を抱えて壊れてしまいそうな――彼の気持ちが痛いほどにわかってしまったから、何も言えなかった。

 恐らく、どんな言葉を掛けたとしてもこの子の傷は癒えることはない。

 だから、せめて傍にいられればと。そう思った。


 ――しかし。


「……消えろ、お前なんて……消えてしまえ……っ!」


 泣いてもいい、と。ゼファリオンなら、きっとそう言って彼の頭を乱暴に撫でただろうか。

 なのに、私にはその、たった一言が言葉にならなかった。

 抱きしめて、その小さな震えを受け止めてやることすら、私には躊躇われた。もし、彼がそれを望んでいなかったら――そう考えると、身体が動かなかった。

 その、出力できない感情を――ゼファリオンのように上手く吐き出させてあげることが私には出来なかった。


「《■■■■■■》その名は我が王血により葬る――」


 その言葉が彼の口から紡がれた瞬間、彼の全身に金色の粒子が纏わりつく。

 同時に、彼の左腕に刻まれたあの火傷の痣が、じりじりと異常な熱と光を放ち始めた。

 身体が動かなかった。

 あぁ、これは――ゼファリオンがロボに対して行った命定改名(ミューテ・ノメン)だ。


「――だめだ、それを使えば腕が……」


 私の言葉は届かなかった。


「この命により、汝の名は今より――《デッドアッシュ》と定まる――」


 この世のすべてを憎しみで燃やし尽くすような業火の怒り。しかしその瞳の奥にいるのはただの怯えた子どもだった。

 あぁ、そうか。

 彼は私を憎んだのではない。ただ、私に寄りかかってしまうのが恐ろしかったのだ。

 引きちぎられていく因果と記憶の中で、私は彼への怒りや恨みを感じていなかった。


 どうすればよかったんだろう。

 どうすれば君をその業火から救ってやれたんだろう。

 最後に残ったのは、カリナとの約束でも、自分の名前でもなかった。

 この、目の前で壊れそうな子供だけは、何があっても守り抜け、という、執念にも似た祈りだけだった。


 ◆ ◆ ◆


 それは夢だった。

 瓦礫の山となった広間の中心に、玉座だけが静かに残されていた。

 赤い髪の少女が今にも泣き出しそうな表情でこちらを見上げている。

 誰かの名前を呼んでいる。それはよく知っている名前で、私の名前ではなくて――でも、この瞬間だけは私なのだと分かる。

 角がひどく脆くなっている感覚がある。

 なるほど――カリナでも、我が子でもなく――彼女が私の終わりにいる少女なのか。

 原初の夢。これが私の名の因果が定まる瞬間。終わりの夢。


「二千年間、ずっとこの瞬間を待っていたよ。君がルシア。僕を愛してくれた、僕が愛したヴァレットの終わりの少女」


 それは私の口から発せられたものであり、私ではない誰かの言葉。


 しかし、不思議だった。

 夢の中で私の心は空の一番高いところのように静かだった。


 ああ――なんて眩しい光だ。

 もう思い残すこと一つないほどに、満たされていた。

 もうずっと長いこと休まず歩いてきたように疲れきっていた。

 ここで終われるなら、それはなんて幸せなことだろうと思った。


 ◆ ◆ ◆


 ――そして、現在。

 久しぶりに意識が戻ってくる。私は何か――そうだ、あの子に近付くものを遠ざけようとしていた。

 せめて、あの子の脅威になるものを遠ざけようと――ずっと、意識のないまま。

 

 目の前に現れたのはこの世のすべてを焼き尽くさん勢いの炎だった。


「やめろ。……その子に、お前の炎が、触れる」


 そう、後ろにいるメスを守らねば――メスを傷つけてはならない。

 しかし――業火の中で、そのメスを庇うようにして立ち塞がる影に、私の思考のすべてが奪われた。

 赤銀の髪を揺らし、尾に宝石のような鱗を煌めかせたひとりの火竜が立っていた。

 一目見た瞬間、この子だと理解した。


「……オレの炎は、ルシアを焼かねぇよ。あんたに言われるまでもねぇ」


 蒼い炎。少女を守るために展開された厄災。

 火竜の瞳には、この世全ての理不尽に向けられた絶対的な怒りが宿っていた。

 私には持てなかった器官。理不尽な運命を切り開き、世界を焼き尽くすための力。

 少女を守るためだけの蒼い炎の熱波が頬を叩いた瞬間、私の中に狂ったまま固縛されていた虚無が、静かに溶け出していくのを感じた。


 ――あぁ。きっとこの熱だ。

 カリナが私に呪いとして遺した熱。

 三百年もの間、私が喪失だと思い込み、処理できずに抱え続けていた空洞の正体は、この温かさだったのか。


(……あぁ。やっと見つけた)


 見つけ出すまでに随分と長い時間が掛かってしまった。カリナは怒るだろうか。


 しかし――私はこの子に何から伝えたらいいのだろう。

 その言葉が今も見つからなかった。

 

 この子は今、一人の少女のために、星をも焼き尽くすほどの怒りを燃やしている。

 見つけたんだろう。

 私には見つけられなかった、ただ一つの掛け替えのないものを。


「……えっ、なに?」


 怪訝そうな顔で我が子が問う。

 言葉は見つからなかった。どんな言葉も、カリナが本当に伝えたかった言葉の意味にならない気がした。

 敵意がない証明に腕を広げる。


「…………よう、やく、みつけた」


 私がようやく絞り出したのは、そんな飾り気のない事実だけだった。

 気の利いた言葉一つ言ってやれない私には、これくらいしか伝えられない。

 それでも、その言葉を聞いた火竜は、驚きに目を見開いて固まった。


「……え?」


 私はそれに答える代わりに、彼の纏う極大の蒼い炎へと自ら歩み寄った。

 あの日、カリナがたった一人で耐えた燃える卵の熱。

 それが今は、こんなにも美しく、強く、そして誰かを守るための優しい炎になっている。


(……カリナ。君が恐れ、それでも命を懸けて残した炎は……こんなにも温かい)


 その熱を浴びながら、私は彼の背後に立つ少女――私の終わりの少女を見た。

 彼女がいる限り、この子がかつての私のように、一人きりの虚無に落ちることはないだろう。


 私は燃え盛る火竜の身体を、その熱を確かめるように、不器用に抱きしめた。

 君が会いたいと願った熱は今もここで息づいている。


「君が生まれてくるのを、母さんは誰よりも楽しみにしていた」


 やっと見つけ出せたのに、気の利いた言葉ひとつ掛けてやれない。私はいつだって言葉が足りていない。

 カリナの時も、あの子の時も、そしてお前の時も。


 私の身体から、急速に力が抜け落ちていくのが分かった。

 ここが私の終わりじゃない。

 それでも、少しだけ休みたかった。

 きっともう夢を見ることはないだろう。少しだけ、長く眠れそうだ。


 君が呪いだと言って私にこの子を探すように命じてから三百年。

 感情を持たない鉱石だと、ずっと自分を誤認していた。


 あぁ――今になってようやく分かった。


 私はカリナを――君を、心から愛していた。

 

 君といた時間は星の瞬きほど僅かな時間だったとしても。

 君を想い生きた三百年は空虚などではなく。

 君が私に遺してくれた、何よりも幸福な呪いだったのだと。


 ――決して砕けることのない、私だけの永遠の輝きだったのだと、今ならちゃんと言葉にできる。


 君ほどきれいな生きものを、私は知らない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。