化け物への一歩
準司は鉄球の衝撃で盾で受け止めてから少し後ろへ下がったが、それでも粘り続けた。
鉄球三つも飛んできたのに一人で受け止めたのを皆が見て「えっ!?」と驚いていた。
イナズマ団達も準司が受け止めたのを見て衝撃が走った。
「な、何!?盾で全部受け止めただと?…おのれえ、これで終わりにできるかと思ったら予想外だったとは。あのおみやげ小僧め、一体何者だ?」黒井も黙れないぐらい冷静さがなくなった。代わりにイライラが止まらなくなってきた。
「伏竜さん、あの子がなぜ鉄球三つも受け止められたのか?聞かせてもらってもいいか?」灯田原はあの衝撃を見て自然と伏竜に聞いた。
「ん?いや、分からないなあ。そんな大した教え方をしたわけでもないぜ。彼自身が気合いと根性で何とか防げただけかもな。俺は基本から応用までと『盾の舞』をできるように教えたけどたぶんその技を使い切れたんじゃないかな?彼に聞いた方が早いがあくまで俺の憶測の話、その『盾の舞』を体で覚えていたんだと思う。そうじゃなければあの衝撃で三田原は遠くまで吹っ飛ばされていたところだったからな。それ以外の理由があるとしたら、彼自身のオリジナルのやり方にあるしか言いようがない。ただ、その彼のオリジナルとは何なのかは俺でも今のところ分からないけど、間違いなくあの子は普通の子じゃない。超越した化け物の一つに数えられてもおかしくない」伏竜が灯田原にそう説明すると灯田原も準司のことを改めて見直したかのような気持ちになった。
確かに伏竜の言う通り、あの子は普通じゃない。イナズマ団と互角に渡り合える化け物の一人に数えられてもいい。盾頭全員も化け物だが、準司ももう少し努力を積み重ねたらこの機を境に化け物クラスの仲間入りになれるかもしれない。
準司はもうそろそろ鉄球三つを受け止めるのは限界に達していた。こうなったらこっちが仕返す出番だ。あの技で一気に吹っ飛ばせるだろうか。
準司はおもいっきり盾で受け止めているその間に、水の舞の技を繰り出した。
「水の舞、『滝の渦潮』!」準司の盾の中から渦を巻いた水がまき散らしてきた。そして準司の周りを大量の水で渦を巻いた。するとその時、その周りに凄まじい風が吹き荒れてきておもいっきり一周三六〇度水風が吹き飛んだ。
すごい勢いの水風だったのでイナズマ団だけじゃなく仲間達まですごく冷たい風がいきわたり皆全員腕で顔を防いだ。
三つの鉄球もおもいっきり吹き飛ばされ、イナズマ団の方に逆に飛んできて鉄球を持っていたイナズマ団を始め周りのイナズマ団も鉄球に顔だけでなく体全体にぶつかりおもいっきり鼻血を出した。
そして、準司の技がボスの黒井まで飛んできて鉄球が吹っ飛んできた衝撃とともに部下達にぶつかりおもいっきり体全体にぶつかった。
後もう一息で黒井は船から落ちそうになり海に投げ出されるのかというぐらい飛ばされたが、ギリギリのところで何とか船の上で倒れた。
準司はそれを見て一時はどうなるのかと焦った。海に投げ出されずに済んでよかった。
もし海に投げ出されていたらそれこそまた逃げられるかもしれなかったし、命の危険もあったから警察に引き渡されなければならないのに意外なことになってしまえば本末転倒になるところだった。
そこは何とか止めれた。
イナズマ団はまだ立ち直れていなかった。痛たたたあとぶつかった衝撃で激痛が止まっていなさそうだった。
警察達もあれなら今すぐ捕まえられるだろうと的場警部も判断した。
「よし、あのイナズマ団があんな状態になった。皆、今すぐ捕まえるぞ!…」
「はい!」そして警察達が倒れているイナズマ団全員を捕まえようとしたその時、ボスの黒井はゆっくりと立ち上がりながら話し始めた。
「捕まえるだと?…おい、お前ら。俺らがこのガキにやられたからという理由で捕まえられると思ってるってわけか?…見ろよ。これ、何だと思う?」まさか黒井が立ち上がるとは分からなかった警察達はその場で立ち止まった。…あのスイッチのボタン…まさか…。
「まさか…お前。そのボタンは」的場警部は黒井に尋ねた。
「そうだ。まさか他の仲間が捕まったから、爆発するのは午前0時になってからだと思っていたのか?このことはあのヴィジョンという大学教授も予想していなかったか?あの超とつくぐらいの天才科学者がまさか、このことを予測していなかったとでも言うのかな?」黒井は心底勝ったと思っていた。
準司達は予想していなかったが、ヴィジョン教授のことをようやく頭によぎった。どうだろう?そこまで計算しているのだろうか?そこについては、本人から何も聞いていない。盾頭の二人でさえ聞いているのだろうか?
準司も顔が真っ青になった。やっとここまで追い詰めることができたというのに、まさかここで予想外なことになるとは…。
この展開、地下でイナズマ団と戦って捕まえた時にボスみたいなあの男がボタンを押して大型爆弾が起動し始めて大爆発までのカウントダウンが始まったのだ。
そしてこの本物のボスが握っているあのボタンのスイッチを押してしまえばもう終わりだ。
あのスイッチこそ、時間など関係なく一瞬で大爆発してしまう危険なスイッチだ。
「さあ、お前達の役目と人生はもうここで終わりだ。そしてイナズマ団はその前に逃げる。この任務を果たせば俺はあの方に上級幹部の昇格を与えてくださる。これで俺も上級幹部の仲間入りになれる。この歴史的な出来事はなんと嬉しいことか。…しかし残念だったなお前達。警察でも勝てなかったというニュースが流れれば国中はまた悲しくなるかな?でもな、この国はいつか必ず俺たちのものにしてやるからな。ひとまず喜べよ。やっぱり強圧的な支配が必要なんだよ。この国にはそれがないんだよ、その強圧な支配がないからいろんな訳の分からない気持ち悪い奴らが出てくるんだよ。それを何としても排除してやる。そしてこの国を良き正しき道に戻す。それが俺たちの目標だ。さあ、このボタンを押そうじゃないか…」
黒井が押そうとしたその時だった。
誰かがバーンと銃を撃ち、黒井の持っているスイッチに命中した。するとそのスイッチは海に落ちた。
黒井は急いで後ろを振り向いて「くそお!誰だ!?」ともう一度こっちに振り向くと的場警部が銃をずっと黒井に構えていた。あの銃を撃ったのは的場警部だった。
「そうか。あんたの野望はそんな野望を持っていたのか。いい話を聞かせてもらったよ。黒井和希、お前のその目標というものは残念ながら叶わないかもしれないな。よく見てみな」
すると的場警部はスーツの中ごとを黒井に見せた。盗聴器をつけていた。
「な、何!?…き、貴様あああ、いつからそれをつけていた!?」黒井は今までサイコパスに気持ち悪く笑っていた様子から急に怒りの顔に変わりだした。
「いつから?だいぶ前からだよ。お前の暴走を止めるのが警察の仕事だからな。お前達イナズマ団もずいぶんと警察をすごく舐めてんだな?それは十分に体中に感じられたな。お前は十分、完璧な犯罪者だ」的場警部はびくともせず銃を構えながら黒井を逃がさないように今度こそ捕まえる熱意を体中熱くなってきた。
「ちなみに黒井和希。俺からもいいものを見せてやるよ。これ、何だと思う?」灯田原も的場警部と同じように腰に掛けてある小さい鞄の中から取り出した。
「これはな、あるすごい天才科学者と通話できる機械だけど、分かるかな?…」
「うううううっ、まさか、ヴィジョンという奴と話をしているのか!?」黒井はイライラが大きくなってきた。
「まあ、そうだな。これ、ヴィジョン教授が開発した通信機なんだよ。今お前が話した内容をヴィジョン教授にも今聞いてたぞ。しかもこれ、録音することもできるんだぜ?これを警察に持っていけばイナズマ団という犯罪組織の中身が少しだけだがやっと見えたということが分かったというわけだ。だからお前がどこに逃げようとしてもこの声が聞こえただけで重要な手がかりになったというわけだ…」
「ふざけるな!」黒井はついに壊れ始めた。
「せっかくのチャンスだったというところにまさかお前らにはめられるとは…おのれええ…」
次こそ捕まえられると思っていたという時に何故か黒井は顔を下を向いてしばらく立ち止まった。
黒井は何故か何も動かない。警察も大学の弟子達も「ん?」と何か様子が変だと感じられた。
あのイナズマ団ボス、何してんだ?…
しばらくすると、だんだん黒井は笑みを浮かべ、ついに馬鹿笑いをし始めた。
あの爆笑は何を意味するのか。皆誰もがそう思っていたその時、向こうの遠い所から夜の時間だったので黒い色をしていたので分からなかったが、ヘリが飛んでいる音が聞こえてきた。
「スイッチが海に落ちてしまったのは仕方がない。だったら、俺だけが逃げればまだギリセーフだ。警察に捕まることもない。残念だったな、船の上にいるお前達」
まさか、あのヘリに乗って逃げるということか。
警察達は焦って黒井に向かって銃を発砲した。
しかし黒井の腕と足に命中しても、黒井は馬鹿笑いしながらヘリが来るのを待っていた。




