掛けるか守るか
警察の大半とイナズマ団の大半とで睨み合いが続いていた。乗客達もいつイナズマ団が銃で撃ってくるのかが怖くて固まったままでしゃがみこむしかなかった。
このイナズマ団のボスのような男は銃撃戦になった時にこの乗客達がいつ撃たれるか、どんなことになるのかが面白くなってきて余裕な表情を見せるかのように笑みを見せていた。
「おい、警察の皆さんよ。もし銃撃戦になってきたらこの客人らはどんなことになってしまうか想像がつくだろう?客人らこんなに怖がってるもんな?一つでも動いたら銃で撃たれるからな。どうするつもりでいるのかな?名古屋港まで後もう少しで着くが、俺達をどうやって捕まえるのか計算できてるのか?」
完全にイナズマ団の方が余裕を見せている。警察は客人を避難させたくてもイナズマ団に囲まれているし、その上船の出口にもイナズマ団が塞いでいる為銃で発砲しようとしてもしづらい状況だ。乗客をまきこんでイナズマ団と戦おうとすると客人に傷をつけてしまう恐れもある。最悪な場合、命に関わることになれば一大事だ。
ヴィジョン教授が開発した大学生が構えている盾で警察の傘代わりに守ってくれてはいるのはいいのだが、乗客達全員を守る盾がここにはない為まず乗客達の安全を守りたくてもこの人数全員を守るのはかなり限度があり、かなり厳しい状況だ。
「お前は、十一番目のイナズマ団じゃないな?本物のボスはどこにいる?」的場はすでに見抜いていた。この男に銃を構えたまま直接聞いた。
「…黒井様のことか?さあ、どこにいるやら。ボスからはその事を伏せておくようにと言われたんでね。自力で探すしかないようですねえ。警察の皆さんの仕事というのはこれらの乗客全員を船から脱出させること、爆弾を止めること、そして、ボスを捕まえるという三つの課題をやり遂げることですかな?さあ、この三つをやり遂げられますか?でも我々の数はこんなにいる。それに遠くからでも撃てるライフル銃がありますから十分撃たれるという状況の中でどうやって防ぎきれるか計算してるのですか?」
的場警部はこの状況をどう打破すればいいか作戦を考えていた。大学生達の盾を乗客達を守るようにするか…。
しかし、警察全員は盾なしでイナズマ団と戦わなければならないことになる。…それでも…やるしかない。
「君たち大学生達にお願いがある。君たちが乗客達を盾で守ってくれ。イナズマ団と戦うには盾なしで戦うことになるが、それでもそうするしかない」的場警部は計算を急いでいたが、そのアイデアしか思い浮かばなかった。
「的場警部!?…」
「警察の皆は…盾なしで戦うぞ。大学生の全員は乗客達を囲んで守ってくれ…」
「でも、まだこの人数です。一つでも動いてしまえば…」
「それでも、何か秘策を考えるんだ。ヴィジョン先生から、またその弟子の人に教わってないのか?訓練してきたんだろ?知恵を回すんだ」
三回生の男子が的場警部に話しかけると的場は大学生全員にそう指示した。
この大人数の乗客達をたったこの人数で守らなければならなくなるなら一体どうやってイナズマ団の銃撃から守ればいいのか、それに味方の人数を増やそうとスマホでラインをしているのがバレるとイナズマ団は銃を撃ってくるのは必須だ。これではイナズマ団の思う壺になってしまってくる。
…仕方ない…的場警部の言う通りにするしかない。
まず先に動いたのは、準司だった。瀬戸川と道村の側を通り過ぎ、乗客達の側の近くに行き盾で守った。
「準司!?」
「…三田原君?」
「瀬戸川さん、道村さん、ここは的場警部の言う通りにしましょう。そうするしか乗客全員を守れないかと。二人の側から離れるのは大変申し訳ないですが、命を守るのが先だと思います」準司も必死だった。葵と将吾も準司を止めたがこの状況を見ると確かに準司の言う通りだ。
自分達も勇気を出さなければ…。
「二人の皆さんもすみません。私も動きます…」
「葵…分かった。警察の皆さん。僕も動きます。守れなくてすみません…」
「私達は覚悟あるから大丈夫よ。確かに警部の言う通りね。一人でも多く守って!」葵と将吾も動き出すと道村は覚悟を決め拳銃を構えた。
「分かりました!」葵と将吾も準司と同じように乗客達の側に立って盾で構えた。
イナズマ団のこの男は準司を眺めていた。あのガキの名前、何て言ったんだ?
…確か…三田原君って言ってたよな?…まさか…あのガキが?
「フハハハハ!…ここにあの有名な三田原準司がいるっていうのか?すごい獲物じゃないか?黒井様や神威様から何て褒美を言ってくれるんだろうか。面白いじゃないか?三田原準司よ、あんたは本当にイナズマ団の中でとても有名なんだよ。俺達に会いに来てくれたのか?いいじゃないか。てめえさえ持ち帰れば俺達の報酬はすごい量で返ってくる。じゃあ早速だが、三田原、君から殺してあげるさ。おい、てめえら。まずはあの三田原っていう奴に狙いを定めろ!…」
「準司!?」
「準司!?嘘だろ?」
警察全員とここにいる盾の使い全員や、乗客達も準司に狙いを定められていることに衝撃の声が走った。
二階にもいたライフル銃を構えているイナズマ団全員も準司に狙いを定めている。
準司は周りを直ぐ様察知した。まだこんなにいるなど予想を遥かに超えていた。
準司は盾をすぐに構えて一周三六〇度周りを見渡した。いつどこから撃ってきてもおかしくない状況だ。
…あの訓練だ。あの時の訓練を思い出すんだ。およそ一ヶ月前まであの訓練もしていたじゃないか。
盾の舞…六の技を発揮させる為に必要な体力も使うあの舞を披露すればいい。
ただ、問題は一つ…それまでの技を使ってきたかにかかっている。それらの技を使いきった時、その後の盾の舞と六の技を繰り出せば何とかイナズマ団の攻撃を弾き返せる。
だから、まずはこの技から使えばいい。
「フハハハハ。どうだ?小僧、やっぱりこの人数だから怖いのか?そうだ、そうだよな?これだけの人数に戦えるわけがないよなあ?撃たれた後は確かに痛いかもしれん。でも手加減を加えてあげるからさ、優しく殺してあげるよ」このボスの挑発でイナズマ団全員がゲラゲラ嘲笑い出した。一階のフロアが広いからかすごく波になって響いている。
「さあ、もう時間だ。警察も助けてあげられないのか?可哀想だな、大学生が死んだとなったら警察全員も責任が問われるんじゃないのか?警察のプライドも危うくなるぞ?…」
「三田原君。盾で守りきれないなら警察と一緒に組んだ方がいい。元の場所に戻ってくれ」的場警部は銃を構えたまま後ろを振り向いて準司に言い渡した。
しかし、準司は少しは怖くなっていても立ち直った。
「警部さん、僕は大丈夫ですよ。ある秘策を考えてますので…」
「何?秘策?…」
「はい!」的場警部はどういうことか、固まったままなのでその距離からしか聞くことができなかった。
準司は二の技の水風車の技を使って銃撃から弾き返す作戦に出た。
しかし、ここで準司は何故か緊張感が強くなってきた。さっきまでの気持ちは幻だったのか。イナズマ団に勝とうとやる気があったのに何故かこの現実の恐ろしさをやっと知ったのか、だんだん顔色が青くなってきた。
それでも、何とか技をひねり出そうとした。
「どうした?動きもしないのか?じゃあ、早速片付けるか。てめえら、撃っちまえ!」
もう駄目だ。耐えようという気がない。
イナズマ団は一斉に銃を撃った。
が、その時だった。
炎がイナズマ団の銃の玉を弾き返し、真っ黒になった。
「おい、三田原!無事か?」
この声は…。
「ひ、灯田原さん!」炎の盾頭、灯田原剛が準司の側を横切った。




