脱出の開始
警察の瀬戸川が的場警部に電話をしている時に、準司は時限爆弾の方を見てヴィジョン教授から話を聞いた灯田原のラインに書かれてあった内容を思い出していた。
やっぱりヴィジョン教授は只者じゃなかったと痛感していた。勘なのか、それとも計算なのか…。一体どういったヒントで分かったのかは分からないがイナズマ団がこの船に爆弾を仕掛けている事、爆発する時間が証拠もないのに当てられた事などとりあえず天才を通り越しているかのような秀才だと分かる。いや、ひょっとしたら鬼才と呼ばれていたりしているのかもしれない。
瀬戸川が電話している時間が長引いている。おそらく的場警部が反対を言っているのだろう。大学生のために二人がイナズマ団の監視から立ち去るのは自分の忠告に逆らっているのと同じだと的場警部は怒っているのかもしれない。それでも瀬戸川は何とか説得している様子だがお互いが譲り合う様子じゃなさそうだ。
すると瀬戸川はある提案を出した。
「的場警部、これならどうでしょう?黒田さんと鈴原さんの二人と交代するというのは…」
そしてそこから話が長引いたが的場警部はようやく納得したようだ。黒田と鈴原という瀬戸川と同じ的場警部の部下である警察と交代するという形で何とか理解してくれたようだ。
「伏竜さん、私と同じ的場警部の部下である黒田と鈴原をここに来るまで待っていてほしいと的場警部から言われましたのでこのまま待っていてください。二人がここに着いてから私達二人とここにいる四人とで次のやることに向かいますので」瀬戸川は伏竜を何とか説得した。
「そうですか、分かりました。私もこいつらイナズマ団を監視しておきますのでさっき言った乗客の脱出と残りのイナズマ団の捕獲、他に爆弾が船内にあるかの仕事を手伝ってください…」
「分かりました。私もそのつもりでいます」伏竜の圧を感じながら瀬戸川は理解した。
「お前らの班のリーダーは、三田原なのか?」伏竜の口の悪さでちょっとびくっとした。
「いいえ、私です」皆藤が返事した。
「その盾の色は、炎の使い手か?…」
「はい…炎の使い手です。それにこの四人の中で私だけが上級生なので」皆藤は説明した。
「君の名前は?」伏竜は水の使い手なので他の使い手の人達の名前など把握していなかった。
「皆藤澪と申します…」
「分かった。君がリーダーなら引き続きこの二人の警察の人達に従って今俺が言ったことに集中してください…」
「分かりました。有り難うございます」
そしてようやく上からガタガタと足音が聞こえた。ようやく場所が分かっていたのか、ここにいることをこの二人の警察が把握していた。
「あっ、黒田さん、鈴原君!こっちです!」瀬戸川は手を上げてこっちだと目印を立ててあげた。
「…瀬戸川さん、それに道村さんもここにいたのですか?こんな地下通路があったなんて知らなかったですよ…ってこれ…あれ?あっ!イナズマ団!?それにあれ…カウントダウン?まさかこれが…」黒田が瀬戸川に聞いた。
「はい…こやつらのイナズマ団が仕掛けた感電式時限爆弾だそうです」瀬戸川が説明した。
「話は聞きましたよ。的場警部が警察全員に地下に大型の時限爆弾が見つかったと聞きましたので…」黒田も事情詳しく説明した。
「こんなでかい爆弾をここに設置したというなら、ここで組み立てたのですか?」鈴原が聞いた。
「そうみたい。うまいこと隠れてここでイナズマ団の連中があの爆弾を作ってあんなふうに吊り下げて設置したみたい」道村は鈴原と恋仲になっていることを隠して自分から説明した。
「…あのカウントダウンの赤い数字が…まさか…」鈴原はもうこれでどういうことなのか把握できた。
「そうらしいの。あれがゼロになったら爆発する」道村は説明した。
「あの爆弾を止める方法は?」鈴原は聞いた。
「それが…ないらしいの」道村は再び絶望している。
「嘘だろ?じゃあこの船をまさか…」黒田も衝撃が走った。
「止められないなら、この船を捨てるしかないみたいです」道村は続けて事情を説明した。
「そ…そんな…」黒田はそう呟いた。
「…せっかくのデビューした日だというのに、そんな、まさか…」
「黒田さん、確かにせっかくデビューした大型クルーズ船を捨てるなど悔しいのは分かります。この爆弾が完全に止められるなら捨てられずに済んだのに…僕だって悔しいです…」瀬戸川も爆弾をもう一度見て悔しさが沸き起こってきた。イナズマ団の考えて作った計画のせいで豪華客船に最悪なことになってしまうなど反社会勢力を抑えられなかったという事実になれば今後が危ない。
「お話し中申し訳ないですが、私の大学生四人を引き続き次の任務に行かせてあげてくれませんか?私は引き続きこのイナズマ団の連行の手伝いをさせていただきますので。もう時間も詰まってきているかと」伏竜が区切りのいい所で警察の人達に声かけをした。ただ何もびくともせず警察に真っ直ぐ前を向いて圧をかけていた。
「そうですね。黒田さんと鈴原さんが到着したので、この大学生達とまた次の任務に行かせていただきます。それじゃあ黒田さんと鈴原さん、この地下のことはお願いします。ただあの爆弾になるべく近づかないようにだけ気をつけてイナズマ団を監視してください」瀬戸川はそう説明してお願いしてもらった。
「分かりました。引き続き瀬戸川さん達も気をつけて行動してください」黒田が気をつけてあげた。
「有り難うございます。ではまた会えることを祈ってます」では行きましょうと瀬戸川が小声で言ってから再び六人で地下から一階に小走りで向かっていった。
長い迷路みたいな道を辿りながらやっと一階にたどり着いた。ますます乗客の人達がすごい人数で行き来している中で六人は地下一階の入口の手前で止まった。
ものすごく賑やかに遊んでいるのが分かるが、このばかでかい船の中の全部の階や部屋に見つけにくい場所などを手間なく探すとなると時間内に全て不審物を取り除かなくてはならないとなるとここからも大変だ。
「じゃあまだ探しきれていない場所に向かって不審物があるかを探そう。この船が爆発するまで早く見つけないと、じゃあ行こう」瀬戸川がそう皆に言って走ろうとしたその時、爆音で『キーンコーンカーンコーン!』とアナウンスの音楽が鳴った。
…もしかしてこの流れは…。
「本日は『ヴィクトリア・プリンセス号』にご乗車頂きまして、誠に有り難うございます。この旅客船にご堪能なされている時にお詫びのご報告をさせていただきます。…この船に不審物である爆弾が仕掛けられている事が判明致しました。恐れながら爆弾の処理を図っている最中でありますが、爆弾を止めることが困難になってしまっています。その為、只今から皆様へお願いしてもらうことをご報告させていただきます」
聞いたことのある男性の声だ。操縦席にいたあの船長の声だ。迷いのないはっきりとした凛とした声で皆に聞こえるような大きい声でアナウンスしている。
「次の名古屋港で乗客の皆様全員はこの船から降りられるように準備をお急ぎいただきますようお願いいたします。降りられる際はお忘れ物がないようお気をつけください。また、安全第一に出口を誘導致しますので一階のフロアにてこの船から到着の時間まで準備が整っていられますようにお願いいたします。大変申し訳ありませんが、何卒宜しくお願いします」繰り返しますとまたアナウンスをしていると、乗客の皆は動きが止まった。
「えっ?今なんて言ったの?」とか「これ冗談の話でしょ?」とか「訓練か何かじゃないの?」とか皆は騒ぎ立て始めた。
準司達はここからが正念場なんじゃないかと段々緊張感が高まり始めた。




