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アンチテーゼ/アンライブ  作者: 名無名無
第二章 霧の街のミステリー
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自分のためか・他人のためか ギルドの迫る選択

「その上で言います。今後、この作戦に参加するかしないか。あなた方には判断し、この場で決めていただきます!」


 周りの冒険者やら、作戦に参加する実力者たちが騒ぐ中、アンナたちも例外では無かった。


 アンナは心の中で「なんで?」と意味が分からず困惑してしまう。


 相棒のデリバーは「なんだと?」と、心の声を漏らして眉を寄せて、より一層深く腕を組み込んだ。


「どういう意味だー!」「早く説明しろ!」と、突如として下された選択肢によって多くの人たちが喚き出す。


 当然だ。無論、突然選択を迫ることにも不満はあるだろうが、彼らからすれば街の状況改善のために調査に行き、しばらくはなんの成果も掴めなかった。


 なのにある日突然、どこも休暇を言い渡され、そして急に召集されたのだ。


 皆が不満を抱き、ギルドの慌ただしさを「まとまりがない」だの「対応が遅い・後手に回っている」などといった評価を抱いている。


 最初はやる気があっても、時間が経てば人間の思いは変わる。ギルドの慌ただしさが、この作戦に参加する者たちを翻弄してしまい、不満が広がるのは当然といえよう。


「落ち着いて! 今から伝えますので、静かに!」


 職員たちが声を大にして宥めて、やっと皆が黙る。


 彼らが聞く姿勢を見せたことで、やっと職員さんが口を開き、資料を提示したり、分からないことには質疑応答を重ねたりと真摯に対応した。



 この数日間の調査で得た情報の共有。


 まずは各々の班で目立ったことが無かったこと。少し不審に思われた箇所。そこから情報共有していった。


 続いて、ロウ班に起こったことを、順を追って丁寧に解説する。



「銃の魔術を扱っていた実力者。元旅人のロウさんが、ある魔物と対峙しました。通りすがりのハンターが犠牲になったのち、彼らはなんとか討伐に成功したものの......」


 チラッと職員さんがこちらを見る。アンナやマイルスのことに気がついていたようで、どう表していいか分からないが、複雑な思いを抱いている表情でこちらを見ている。


 マイルスを見ると、相変わらず窓の外を見ているだけだ。


「大丈夫ですよ」と何が大丈夫なのか分からないが、とりあえず彼を安堵させるように頷き返す。


 職員さんに思いが伝わったのか分からないが、彼も頷き返して、その後の展開について説明してくれた。


「......突如、敵の襲撃に。何者かの攻撃を受け、ロウさんが死亡しました」


「なんやて!?」「ロウさんが......」


 ロウの死亡を初めて知った人々が驚愕し、再び辺りが騒がしくなる。


 やはりロウはこの街でもそこそこ有名だったようで、この騒ぎ様から彼を知る人々が多いのも頷ける。


「アンナ。大丈夫か」


「ああ、うん......。気持ちは割り切ってる。心配はいらないよ」


 腕を組んで彼らをじっと見つめながら、デリバーの心配を受け取る。無論、言われるまでもなく気持ちの整理はできている。


 それはマイルスも同じだろう。以前と雰囲気が変わってしまったが、身内の死を経験することで人間は必ず何かを思い変わっていく。


 深く傷ついた心が治癒するまではもう少しかかりそうだが、心配はいらないだろう。


(だといいけど......)


 しかし先ほどから一切目立った動きを見せないことが気になり、自然とマイルスの様子を見る。


「皆さんお静かに! 皆さんもご存知の通り、銃の魔術という技術を極めていらっしゃった方が亡くなるほど、この作戦は危険なものになりました! ですので参加の是非を問う機会を設けています!」


「参加を続行する方はここに残ってください! 拒否される方は......」


「なるほど。そういう訳か」と一人納得するデリバー。


「お前はどうする?」とアンナを見て、是非を聞き出そうとしていたが、当のアンナはマイルスを見たまま動きを止めて固まっていた。


「アンナ?」


 デリバーが不思議に思って彼女の肩をポンと叩く。

 そのやりとりの最中、多くの人々が既にギルドを出て行った。


「......マイルス、まさか」


 左ではギルドの職員と実力者たちが揉めて、退出してと忙しい中、右側では妙な反応を示しながらマイルスを凝視するアンナ。


 彼女が何を見ているのか。その視線の先を見て、アンナの気持ちを理解したデリバーだった。


「......こりゃ、悪い方に行っちまったな」



 さっきまで窓の外を見ていたマイルスが、気づけばギルドの様子を伺っていた。


 そこまではなんら問題なかったのだが、職員たちを見つめるマイルスの顔は明らかに様子がおかしかった。


 その表情は静かな怒りに満ちており、目を見開いて奥歯を噛み締めている影響で首に筋が浮かんでいた。



 ふらりと椅子から降りて、アンナの横を素通りするマイルス。


「ま、待て——」と手を差し伸ばすが、アンナの右手をパシィとはたいて、真っ直ぐとどこかへ向かっていった。


 手を払われ、そして一番なってほしく無かった。そんな状況になってしまったために、今アンナが何を考え、どうして手が震えているのか即座に理解し「落ち着け!」とその手を握って落ち着かせる。


「な、なんで......」


「......まあ、そうなる可能性はあったからな(復讐か......)」


 今、アンナとマイルスを二人にさせると必ず揉めてしまう。


 それを避けるため、マイルスに向かっていこうとするアンナの体を引き留め、しばらく様子を見守ることにした。


「は、離してくれ!」


「だめだ。行ったら蹴飛ばされるかもしれんぞ」


「アイツは冷静じゃないっ。そうなった責任はウチにある、だから——」


「復讐の獣になりつつある人間の手綱を握るか? その責任は、今よりずっと重いぞ」


「っ......」


 言葉で諭される。

 言いたいことは分かる。デリバー曰く「余計な口出しをすると、今より悪化するかもしれない」と言いたいのだろう。


 マイルスは明らかに、内心では激情に駆られていた。それが表に出るのも時間の問題だ。


 それを止めようと、責任感からか飛び出そうとした。しかし、デリバーに行く手を阻まれた。


「でもやっぱり——」


「ああもう、落ち着くのはお前もだっ」


 それでもと、進もうとするアンナを取り押さえるデリバー。


 腕を掴むだけじゃどうしようもないので、仕方なしに片手で腰に手を回しガッチリとホールドする。


 そのまま持ち上げて、抵抗する力を奪うべく左肩にアンナを担いだ。


「うおっ!? 持ち上げっ!?」


「少しこのまま見てろ」


 このまま動けないのはわかっていたアンナは、言われた通り仕方なしにマイルスが何をするのか、その様子を目で追うことにした。

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