串
個室に案内されると、俺はやや吹き出し気味に、駅員のオヤジに聞いた。
「失礼かもですが、全っ然…… 似てないですね」
オヤジはおしぼりで手を拭きながら、何てことのないように言う。
「そう言われるのは慣れっこだ。 兄貴は秀才で大学も良いとこを出てる。 元々研究者だったが30で脱サラして焼き鳥屋を始めたんだ。 結婚もしてるし、俺とは真逆の兄貴だよ」
「すっ、すいません……」
無表情で坦々と話すオヤジは逆に怖い。
(兄貴と比較されんのがコンプレックスだったか)
すると、いつの間にか現れていたオヤジの兄が注文を取りに来ていた。
「注文は?」
「とりあえずネギま6本、もも6本。 両方、タレと塩半分ずつで頼むよ」
「生は?」
俺は上島元課長の方を向いた。
飲みたそうな顔ではあったが、多分、昼間から飲んでたと思われるため、俺は断った。
串が届く間、駅員のオヤジが話をする。
「自己紹介がまだだったな。 俺の名前は良波則だ。 年は42で、兄貴は照成、年は43だ」
(ノリのオヤジと、照成さん、か)
今度は、上島元課長が会釈しながら言う。
「上島隆平です。 年齢は50で、恥ずかしながら現在無職です」
自虐ネタを披露し、俺が慌ててフォローする。
「あっ、いや、最近まで俺の上司でした。 色々あって今はアレですが…… あ、俺、馬宮卓郎です。 32です」
自己紹介を終えると同時に、焼き鳥が運ばれてくる。
「お待ちどうさま。 ネギま6本、もも6本、どちらもタレと塩半分ずつです」
確かに、出てくるスピードはかなり速い。
それぞれの串には、香ばしい焦げの香りがついて、きつね色のタレがまんべんなく塗られている。
オヤジは早速串を一本手に取り、解説を始めた。




