隠れ家
18:00になると、俺たちは駅員のオヤジに連れられ、街に繰り出した。
この、いかにも飲むのが好きそうなオヤジは、先頭を歩きながら自分の焼き鳥論を語り始めた。
「焼き鳥には重要な3つの要素がある。 早い、旨い、安い、だ。 今なら、店が空いてる、も入ってくるかもな」
「……揚げ足を取るようで悪いですが、空いてるってのは、大して美味しくないから空いてるんじゃ」
やや後方から俺はそんな質問をした。
オヤジが続ける。
「案外、そうでもねぇのよ。 これから行く店は俺の兄貴が運営してんだが、一定以上混まないようにSNSなんかで紹介するのを禁止にしてんだ。 味は行けば分かる」
(まさか、客がいなさすぎて客引きやってるとかじゃねーよな……)
何回か角を曲がり、現在地がどこだか分からなくなった時、オヤジが立ち止まった。
「この雑居ビルの5階だ」
上島元課長が首を捻る。
「看板が出てないが」
「だから、知る人ぞ知る焼き鳥屋なんだよ」
オヤジの後に続いてエレベーターに入る。
5階に到着すると、開け放たれたドアと、メニューの書かれた自立式の黒板が置かれている。
そこに書かれていた店舗名は「角玲我」
そのまんまのネーミングだ。
(一体、どんな奴が店長なんだ?)
駅員のオヤジの兄貴っつー位だ。
おそらく、このオヤジを2周りくらいでかくしたおっさんが現れるに違いない。
そう思ってドアを潜ると、カウンターの中にはメガネの細身の男性がいた。
「兄貴、連れてきたぜ」
「ああ、なら奥の個室にご案内してくれ」
俺と課長は顔を見合わせた。
(全然似てねぇ!)




