三拍子
「肉は国産の地鶏、部位にもよるが、このネギまは一本120円だ。 ネギまの相場は高いとこだと200円、安くても150円ってとこだろう」
言われた通り、120円という価格はかなり安い。
デパートの総菜コーナーに入っている焼き鳥チェーンでも、120円は割引セールの時くらいだろう。
「じゃあ、味を見てくれ」
ノリのオヤジに促され、俺と元課長がそれぞれネギまのタレを口にする。
口の中で甘辛のタレが炸裂する。
そして、噛めば噛むほど味が出る、弾力感のある肉。
葱は外はサク、中はトロとしており、苦味などは一切ない。
「旨ぇっ」
俺は、一瞬で串を一本平らげた。
横にいた元課長は、ああ、うまい、と言いながら、噛みしめるように焼き鳥を食べていた。
「なっ、旨ぇだろ? 俺も昔はタレが好きだったんだが、近頃はちょっとくどくてな。 最近は塩ばっか食べてるが、こっちもいけるぜ」
あっという間に全ての串を食べ終えると、ノリのオヤジが真剣そうな顔つきでこちらを見た。
「さぁて、こっからが本題だ。 2人とも、ここで働く気はあるかい?」
(……そういうことか)
ノリのオヤジが俺たちをここに連れてきた理由が分かった。
人手が欲しいから、ここに連れてきたんだ。
上島課長は、焼き鳥屋をやりたいと言っていた。
だが、店を出す前にどこかで修行するのがセオリーだろう。
課長にとっては、これはいい話なんじゃないか?
「……私は、是非、ここで働きたい。 いや、働かせて欲しい!」
課長は迷わずそう言った。
良かったですね、と声を掛けようとした時、背後から声がした。
そこにいたのは、照成さんだ。
「こちらが欲しいのは、どちらかと言えば若い人手です」
照成さんは俺の方を見てそう言ったが、俺は焼き鳥屋志望ではない。
「でも、俺、焼き鳥屋……」
「ならばチャンスを頂きたい。 どちらか一人と言うのなら、戦って勝った方、というのはどうでしょう?」
突然、課長が立ち上がり、そんな言葉を口に出した。




