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なれの果て

「恐ろしい経営手腕だよ、全く……」


 そう言いながら、上島課長はヤケになったかのように、黒々とした液体を口に入れた。


「ふっ、アルコールが入ってりゃあ、少しは気が紛れたかもな」


「……はい」


 俺はあまり課長を刺激しないよう、ただひたすら相づちを打った。

俺は、課長に平社員に降格するか、早期退職するか、選択する旨を伝えた。

最初は目を見開いていたが、小さく、クソッ、といい、その後、タバコを口にくわえ、大きく息を吐き出した。


「最初にあの娘を見たときに思った。 こいつは先代の社長に似ている、と。 俺が入社した頃、先代の社長はまだ現役で、容赦ない人事配置に定評があった。 そして、会社を軌道に乗せるには、そんな的確な人事の配置が必要だ。 アイツは自分の事業に必要な人間を選んで配置した。 ……ただそれだけだ」


 それから小一時間程度、課長は自分が今までしてきた功績を口にした。

そして最後に、自分はやり切った、これからは第二の人生を考えていきたい、と言った。


「俺は仕事終わりに飲みに行くのが大好きだった。 今はこんなマズいコーヒーしか飲めないが、コロナが落ち着く頃には、俺は自分の店を出して、お前たちに焼き鳥をご馳走してやる」  


「焼き鳥、ですか。 俺、好物です」


「……じゃあな、馬宮」


「ありがとう、ございましたっ」


 俺はその場で深くお辞儀をした。

俺を評価して主任の話を持ちかけてくれたのはこの人だ。

主任の話は頓挫して、今度は立場が逆転してしまったが、恩があることには変わりない。

こうして、その日は幕を下ろした。







 それから半年、目まぐるしい日々の中、俺は仕事を終え、会社の最寄りの改札を通過しようとした時だった。

駅員と女性と、誰かが揉めている様子を目の当たりにした。

女性は20代半、といった具合で、金髪にスーツ姿。

甲高い声でこう叫んだ。


「キメェんだよっ、このオヤジ! 出禁にしろっつってんだよ!」


 そのオヤジ、と呼ばれた男もまくし立てる。


「んだとォ、バッキャローめっ! 肩がぶつかって、スミマセン、も言えねェのかァッ!」


 完全に酔っぱらっている。

どちらも口が悪いため、とてもじゃないが聞いていられない。

 

「……って、オイ、マジかよっ」


 俺は慌ててその数人に駆け寄った。


「上島さん、アンタ、何してんだよ!」


「……! う、馬宮……」


 そこにいたのはかつての恩師だった。

ベロベロに酔って、足腰は砕け、よれたスーツ姿。

俺は、察してしまった。


(この人、家族に会社に行くと言って、昼間から飲んでたんだ……)

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