通告
パソコンの前には、女社長の島田玉緒がいた。
戦力外通告なら、メールで済ませればいい。
なら、これは何の面談だ?
訳も分からず、ニコニコと不気味な笑みを浮かべる玉緒社長の質問に答える。
「馬宮君、あなたの企画した不死身靴下、あれは中々面白いわよね」
「……はい、あの靴下は二重構造になっていて、通常ならすり減るハズの箇所がスライドすることにより、摩耗を減らしています」
どうやら、俺の企画がこの玉緒にはウケがいいらしい。
子供のようにはしゃぎながら、玉緒が続ける。
「この技術はね、私の考えてる次の事業にとっても役に立つと思ってるの。 だから、馬宮君、あなたを企画開発部の課長に任命するわ」
「……クビ、ですか。 え、か? 今、何て……」
「もうっ、な~にベタなリアクションしてんのよ! 課長に任命するって言ってるの! 良かったわね、年収も大幅アップよ」
ちょっと待て、クビの心配をしていたら、突然課長に任命された。
主任になれると浮かれていたのに、課長に引き抜かれるとは昨日までの俺なら想像すらしてない。
「わっ、私に務まるかどうか……」
「いーのよ! 私だって最近まで芸人だったんだし、とにかく、これから一緒に頑張りましょ」
確かに、この人に至っては芸人から社長になっている。
しかし、俺が課長と言うことは、今の課長はどうなるんだ?
俺の思惑を読んだように、玉緒社長からこう命令された。
「今の上島さんには、あなたから降格を説明しといてネ! それか、早期退職してもらうか、どっちでもいいから。 一ヶ月後には新体制で動き始めるから、それまでによろしく」
「……分かりました」
最悪の命令が下ってしまった。
俺は翌日出社だった為、会社に顔を出し、上島課長も出社していた。
事を知らない課長は、会社の体制が変わり、慌ただしい様子で各方面に連絡を取っていた。
(今は話すタイミングが無いな…… 在宅ワークでいつ会えるかも分かんねーし、今日、帰りに言うか……)
夕方、俺は課長に話をし、例のドトールコーヒーで落ち合うこととなった。




