縄張り
金の装飾に、屋根の左右にシャチホコが施されたやたら豪華な屋台だ。
その向こう側から、ヒョウのコートを身に纏った男がこちらに向かって来た。
「お前たちも大会の参加者かーイ」
「……あ、はい」
俺が返事をすると、男は人差し指でこちらを指さし、声を張り上げた。
「優勝するのはこの、キンキラタコ焼き、ゴールデンボール、だっつーの。 お前らは大人しく家に帰れっつーはなシ!」
男は金髪のパンチパーマに、ヒゲを生やして黒縁の眼鏡を掛けているが、その奥の目はやたらと血走っている。
「関わらない方がいいな」
課長が小声で俺に耳打ちする。
男がギャーギャー騒いでいるうちに、時刻は19:00を回り、夜空に花火が打ち上がった。
「スタートの合図だ!」
俺はリヤカーの持ち手に力をこめた。
俺たちの屋台は歌舞歌舞町の通りを進み、これから出来るだけ人の集まりそうな場所を目指す。
すると、
「おっせぇんだよ!」
金の屋台がこちらに体当たりし、その衝撃で一瞬スピードが遅れる。
(しまった!)
出遅れれば良い場所を占拠されてしまう。
スタートは一分一秒を競い、ほんの僅かなミスが命取りになりかねない。
金の屋台が先頭を進む。
後ろを押していた課長が言った。
「もっと押すぞ!」
俺は頷いた。
「はい!」
前の屋台を抜き去るべく、スピードを上げようとした時だった。
銃声の様な音が鳴り響いたかと思うと、金の屋台が突然停車し、叫び声がした。
「おめぇら、誰の許可得て屋台出しとんじゃ、バカタレが!」
前から現れたのは、自動小銃らしきブツを構えたボウズの男、そして、顎がややしゃくれた切れ目の男。
ボウズが喋る。
「ここはヨシ○トの縄張りじゃあ! お前ら、ヨシ○トに許可取ってんのか、アアン?」
金の屋台を引いていた男が、たじろき説明する。
「ここはいつからヨシ○トさんの縄張りになったんですか? 歌舞歌舞はずっと、城崎組のモンだと思ってましたが……」
シャクレ顎が叫ぶ。
「お前らホストのお頭はな、コロナで営業不振で力を失ったんじゃ。 だから今は、ここら一帯、ヨシ○トの縄張りなんじゃ!」
ヨシ○ト興業の本社が歌舞歌舞町にあることは有名である。
この大会はホストの元締めである城崎組が仕切っていたが、どうやら直前で事情が変わったようだった。




