屋台戦艦
その日から、俺と課長は角玲我に泊まり込み、新メニューの開発をすることになった。
店は臨時休業とし、厨房で様々な味のサンプルを試す。
ちなみに、メガネ兄は、実際に出す屋台の準備があると、この近辺にある自宅のガレージに篭もっているらしい。
課長はフライパンでウインナーを焼き、それを串に刺して試食している。
「旨いんだがなぁ」
課長は仕事以外のこととなると、とんでもない方向音痴なことをやり出すな……
しかも、普段は料理をやらないんだろう。
新メニュー作りは戦わずして俺の勝ち、か。
そうこうしている内に、俺の方はメニューの形が出来つつあった。
鶏肉のももの部位を串に刺し、それを金網に乗せ、炭火でじっくり焼く。
油がしたたり、食欲を促す。
(そろそろいいか)
焼けた串を器に乗せると、その上に用意していた味噌田楽を塗っていく。
味噌には砕いたナッツが混ぜてあり、これが風味と食感をプラスする。
また、鶏肉のももを選んだ理由は、ジューシーだから、という理由だ。
ささみも考えたが、やはりパサつきがあり、焼き鳥の旨みはももと比べたら劣る。
試しに一口食べると、甘い味噌の味ともも肉の油が混ざり合い、とても美味だ。
課長が隣から覗き見してくる。
「こったもん作ってるなぁ~。 お前、料理人の方が向いてるんじゃないのか?」
「もも肉の味噌田楽和え、です。 一品はこれでいいと思います」
結局、課長の方はかなり悪戦苦闘し、俺も一緒に考えることとなった。
結果、出来たのが鳥の挽肉にチーズ、大葉をミックスしたつくねだ。
仕上げにこの店オリジナルの醤油ダレをつけて完成。
こうして、2品目も完成した。
時刻は土曜の昼で、食材を買う時間もあり、徹夜したかいもあってか、何とか間に合った。
メガネ兄に新メニューをラインし、オッケーが取れると、屋台を見に来てくれ、と言われた。
返信に自宅の住所が記載されており、俺と課長はそこへ向かった。
家の前に到着すると、そこにあるガレージからメガネ兄が顔を出した。
「こっちも丁度終わったとこだ」
ガレージの中に案内されると、俺はその完成した屋台を見て、マジかよ、と思わず呟いた。
「戦車だろ、これ……」
メガネ兄は首を振る。
「戦車じゃない、屋台戦艦だ」
その屋台は、何故か先端に大砲のようなものが括り付けられていた。




