決着
川幅は倍以上になっていた。
もうじき、林道清花が向こう岸の通りを歩いてくるだろう。
俺は深呼吸をした。
(ふーっ……)
そして、弓を構える。
弓を射るのも、ラブレターを渡すのも、気持ちが大事だ。
無理に、射法八節に囚われる必要は無い。
しかし、一つ一つの動作を思い描いて弓を引く内、俺は射法八節の全てを満たす動きが自然と出来ていた。
(足踏み、胴造り、弓構え、打起し、引分け、会)
そして、弓を放つ形が完成し、タイミングを待つ。
林道清花が向こうから歩いて来る。
俺は、「離れ」で矢を放ち、「残心」で射法八節を締めくくった。
矢は弧を描き、川を跨いで林道清花の足元に刺さった。
矢にはラブレターが括り付けられている。
林道清花は矢を引き抜くと、その文書を読み始めた。
その日の夜、俺と課長は「角玲我」に集まり、メガネ兄から結果を聞くこととなった。
店が閉店した夜8時、店内に棒立ちしていると、メガネ兄が俺たちの前にやって来た。
そして、
「2人とも、合格です」
俺はその答えに、思わずツッコミを入れた。
「えっ、2人ともって…… 俺か課長か、店員になれるのはどちらかなんじゃ……」
メガネ兄も、苦笑して返事をする。
「試験官の林道清花氏が、決められない、と。 どちらも最高の答えを提示してくれたと、電話越しで絶賛していました。 だから、私の答えはあなた方2人を雇う、というものになりました」
(だったら、こんなくそ面倒なことやらすなよ……)
課長も思わず吹き出し、こちらを見た。
「勝負は引き分け、か」
すると、間髪入れずにメガネ兄が言った。
「いや、本当の勝負はこれからですよ」
「……?」




