本番
「射法八節 星道流星群!」
俺の放った矢は、虹色の光を帯びて、白の的を粉々に粉砕した。
堀越が叫ぶ。
「馬宮さん、天才過ぎます!」
「だろぉ? はっはっは」
「しゃほ~はっせつ~、ムニャムニャ……」
ベッドからずり落ち、目が覚める。
今日は、林道清花に告白する日だった。
一方、課長の上島の方でも、昨夜、動きがあった。
都内にある高級ホテルの最上階。
今日は雨が降ったものの、眼下に移る夜景は健在だった。
上島隆平と林道清花は、このホテルの一角でフレンチのフルコースを堪能していた。
「デザートも素晴らしかったわ」
林道清花がフルコースのラストを締めくくるブルーベリーのババロアを完食する。
すると、テーブルの下に忍ばせていた花束を手にし、上島がそれを差し出す。
「林道清花さん、良ければ、私とお付き合いしてくれないか?」
上島は手慣れた様子で、そんなセリフを口にした。
林道清花はありがとう、と花束を受け取ったが、返事は明日まで待って欲しい、と言った。
「気になる人がいるの」
物思いにふけった様子で窓を見る。
「……馬宮君、か」
「……ええ」
ふぅ、とため息をつく上島。
一言、林道清花に尋ねた。
「というか、受験の時期にこんなことしてて、良いのかい?」
林道清花は上島の方を向くと、真顔で言った。
「だって、楽しいんだもん」
「……」
金曜日の夕方の帰宅時間を見計らい、俺はとある場所を目指していた。
それは、林道清花の下校ルートの荒狂川だ。
距離が取れて見通しがいいのは、このポイントしかない。
川幅は約30メートル。
俺は昨日、堀越に射法八節を教わったが、結局マスター出来たのはその内の半分だった。
堀越は、半分でも30メートルなら届かせることは可能、と言っていた。
しかし、事態は急変していた。
「嘘だろ……」
昨日の夜降った雨で、川は増水していた。




