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ドラゴンマスクより「私・鈴(りん)」  作者: 美憂


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15/17

存在

瑠、遠くにいっちゃったなー。

ダンマク持ってきたけど、ここからじゃ見えないだろうな。


チャレンジカップのチケットは簡単にとれた。

対アメリカの好カード。代表戦なのにいっぱいにならないんだ。

このがっかりな状況を昔の女子サッカー観てなかった愚かな自分に伝えたい。

「女子サッカーに向き合え!」って。

瑠のプレイに蒼がときめいたように、観ればわかるはずだったんだ。

私が「サッカーをする側になりたい」と思った時、公園でリフティングする私をドラゴンマスクは肯定的に受け止めてくれた。

「おばさんがリフティングしてる」と笑わなかった。

律は私にサッカーを教えてくれた。

昔、ドラゴンマスクの父も。


だからきっと、いつか、女子サッカーで国立がいっぱいになるという未来を信じたい。

瑠が出るかどうかはわからないけど、ベンチにいるなら出場に賭けてみたい。

リザーブ紹介に瑠はいた!

画像をドラゴンマスク(息子)に送る。


「瑠さん、出るかな?みんなに見てもらいたいな、瑠さんのゴール」

「さすが。NO,1サポーター蒼。ゴールする前提なんだw」

「瑠さんは、ぜ〜ったいゴールする!」

「お前さぁ、瑠のことになると毎回それだな」

「だってするもん」

「根拠は?」

「パッション!」

「あいつはドログバだからな」律が意外にも緊張してる。

「ドログバって南国のフルーツ?」

・・・蒼の時代の選手じゃないかw・・・

「人だよ。人。ただの人じゃないけどね」

律、答えが雑・・・私はこう付け加えた。

「ここぞって試合で点を決めちゃう選手だよ。」

と、結構カッコつけて言ったら、もう、蒼はスマホで検索してた。

「すごー!男、瑠さんだー!」

・・・逆だって・・・

ホイッスル。始まった。

アメリカは女子サッカーの人気は高い。そして、強い。

チャレンジカップでもベストメンバーを揃えてる。

日本は守ってカウンター狙いだ。

「苦しい展開だなー。高橋ハナが3人いればいいのに」

律、eFootballだってそんなことできないでしょ・・・

それより、この展開でゴールできるのは

「瑠さん出せばいいのに!」

そう、贔屓目じゃなく瑠だ。

「いや、まだだ。俺なら前半には使わない。残り15分。スパーサブで使う」

「得点されたら?」

「0−1?瑠なら」

うん。瑠なら、2点取り返す。

やられたらやり返す。それが瑠だ。

ビハインドの瑠が1番怖い。


合宿中の怪我でFWの追加招集が発表された時、瑠は私たちの試合を見にきていた。家に置いてきたスマホには、とんでもない量の着信と留守電とLINEとメッセージが入っていた。急いで支度をして合宿に合流した時には、同じチームの同僚に背中をバンバン叩かれながら大笑いで歓迎されたらしい。でも、そのビハインドをひっくり返してベンチに入った。

すごいな、瑠。

どんどん、上の景色へ行っちゃう。


「出るぞ」さらに緊張した律が言う。


律は試合なんか碌に見てなかった。ベンチの動きをずっと見てたのだ。

―選手の交代をお知らせします。背番号7番に変わって背番号14番」

瑠だ!

クールにピッチに入ってきたけど、ものすごいやる気が伝わる。

漫画だったら3mくらい立ち昇るオーラだ。


るぅ!るぅ!るぅ!レーザービーム!

るぅ!るぅ!るぅ!レーザービーム!


瑠のチームのサポータが来ている。。

瑠にボールが入った。

速い。ドリブルで仕掛けた。

瑠得意のカットイン。

ゴール前に3人いる。

パス。

誰もがそう思う。

でも、瑠が選ぶのは・・・

思い切り左足を振る。強い弾道のボールは


ゴーーーーーーーーーール!


やったー!

瑠が青いユニにもみくちゃにされている。

見て!これが瑠だ!


るぅ!るぅ!るぅ!レーザービーム!

るぅ!るぅ!るぅ!レーザービーム!


日本代表サポーターを巻き込んだコール。

当然、律は号泣。なんだか蒼も号泣。


るぅ!るぅ!るぅ!レーザービーム!

るぅ!るぅ!るぅ!レーザービーム!


コールは続く。


私はまだ泣かない。

瑠のあの不器用な試合後のインタビューを聞くまでは。


でも、ちっちゃな声でつぶやいた。


「彼女とサッカーしてた」


ささやかな自慢は、コールの渦にきえてった。

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