ポジション
わかってる。
私はチームのレベルに合わなくなっている。
年齢的なものもあるが、基本的なフィジカルもテクニックも反応も劣っている。
それは、今までと同じ練習を続けるだけでは埋まらない。
瑠と合わせることで今まで補ってきたけど、中心選手が変われば、戦術は変わる。瑠を失った私は、今、蒼に合わせることができない。蒼のプレイを十分に活かせない。
でも、サッカーはやりたい。
このチームが好きなんだ。
だから、自分からは言わない。
律に言わせたい。「うちのチームには、いらない」と。
「鈴、次の試合はリザーブスタートな」
ついにきたか。
「了解」
大人だからね。平然は装える。
「嫌だって言えよ。キャプテンだろ?」
そりゃ、「やだー絶対やだー」っが本音。
スタメンではない。けど「いらない」とは言われてない。
私のプレイなら「クローザー」ってことか。
それって勝ってなかったら
…試合に出られない。
「勝ってなかったら出さないよ」
律がきっぱり言った。
うん。
勝ってる試合を、私が閉める。
そういうことね。
「わかってるって。そんなことに蒼はしないよ」
「そうだよな。鈴のためなら蒼は頑張っちゃうよな」
違う。違うよ、律。
蒼はね、誰のためとかじゃないんだよ。
「自分が得点したい」「自分の点で勝ちたい」なんだよ。
そこが瑠に似てるんだ。
蒼に楽しくサッカーさせたい。
だから、私だってチームのために犠牲になんてならない。
きっちり、失点0にしてやる。
私が守って勝たせるんだ。
律にデートに誘われた。
着いたのが病院だったので、ギョッとしたよ。
それもこんなに大きな大学病院。
監督律は、今、倒れたら困る。
説明もないまま着いて行くと病院の中には入らず
中庭に到着。
そこは、ゴールのあるサッカーグランドだった。
緑が豊富で散歩をしている老人もいる。
老人。。。多いな。
おい。着替えてるよ。
なになに?
ボールでた。
蹴り出した!
うまい!
え?何?このおじいさんたち!
「おじいさんたちがボール蹴り出した!」
「すげーだろ」
「すごい。うまい」
「すっごい楽しそうだよなー」
「なんかさー、いいね」
「そうなんだよ。でも、おばあさんがいないんだよ。この感動の景色に」
「うん」
律が言いたいことはわかった。
私、サッカー続けていいんだね。
その後、律から相談された今後の計画がとんでもなかった。
長年やってきたパートは辞めることになった。
私には忙しく働く時間が必要だったんだよね。
喪失感と闘うために。
新しい職場は、律のギリギリ会社の社員。
福利厚生でピッチおかわり自由。
ただし、「強く、速く、遠くに蹴る」の課題つき。
サッカーコーチ資格取得支援あり。
好条件のこのお仕事は、WE参入に必要なスタッフになるらしい。
律は、ただのバカじゃない。
「まだ、上手くなるかな」
「何言ってんの。鈴は今のところ伸び代しかないでしょ」
あはは。そりゃそうだ。
目指すは、あのおじいちゃんチーム。
O-50日本代表とか狙うのもいいな。
その頃には、あのグラウンドにも
おばあさんが増えてるかもしれない。
まずは、自分を鍛えてスタメンに返り咲く!




