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ドラゴンマスクより「私・鈴(りん)」  作者: 美憂


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13/17

向き合う

人生は面白い。

なんて楽しんでる場合じゃない。

大ピンチだ。


うちのチームは、今季でキャプテンを失うことになった。

オーナーはWEリーグ参戦を目指すと目標を決めた直後の出来事にも、親のように背中を押して泣きながらキャプテンを送り出した後、ことの重大さに気がついたらしい。

「りーん!やばいって〜」

オーナー用とか言って買ったゲーミングチェアーにエビぞって、律なりの本気の「困った」を訴えてくる。

「やばいねー」

キャプテン瑠は間違いなくチームの柱で、チーム自体の存続に関わるやばさを私も改めて実感し始めた。律と大して変わらない鈍さ。

帰ってきてくれ〜とは言えないし、言ったところで帰ってくる瑠ではない。

ここは、律が「社長室」と呼んでるサッカー教室の事務所。

「なんとかしなくちゃならないから、考えよーぜ」の会議なんだけど、私と律じゃ「やばい」しか出てこない。

……

「じゃ、見に行こう。」

と私は言ってみた。

「へ?」

「私、女子サッカー見たことないんだよ」

「……え?」

「いや、お前、今さら?」(笑)

そうなんだ。

私は女子サッカーは実は見てこなかった。

Jリーグはずっと見てきたけど、好きなチームに女子部門ができたことを知っても試合は見なかった。

鏡を見る感じで、怖かったんだよね。

女子のサッカーと男子のサッカーの違いを見るのが。

自分にはあんなすごいプレイはできないってくらいの憧れがあったから、「やる」ってことに私自身、抵抗があった。

「見るの怖かったんだよね」というと

「そっか」と、律は笑った。

律の提案で高校サッカーをみることにした。

あえて「女子」とは言わないけどね。

寒いなー。

土のグラウンド。マウンドまである。

私たちと条件が違うのは、ベンチの人数だ。

試合に出られない選手がたくさんいる。

あんな中で、みんなレギュラーを狙ってるんだ。

私みたいに、誘われてすぐに試合に出られるなんて当たり前じゃないんだ。

あの中に瑠もいたんだな。瑠だけじゃない。今のチームメイトも高校大学までサッカー部にいたんだ。私にはリスペクトが足りなかった。

だから、

私にイライラするのは当然だ。

あの頃の私に言ってやりたい。

球拾い、スパイク磨きからやれって。声出ししろって。

笛が鳴る。

思ったより速い。

思ったより強い。

……

あ。

私、何怖がってたんだろう。

女子サッカー見くびってた。


ボールを見る。

でも、

途中で気付いた。

違う。

私が見たいのはボールじゃない。

人を見にきたんだ。


オフザボールの動き。

この子、

よく見てる。

声出してチームに教えてる。

この子、

何度もスプリントしてる。

この子、

取られても最後まで諦めない。

悔しそうな顔。

そこには

小さな瑠が、あちこちにいた。

瑠の代わりはいない。

でも、

瑠みたいに夢中な子はいる。

「宝の山だね」

「と、思うだろ?」

「違うの?」

「宝は既に持ち去られてる」

あの子たちは、もう決まってるってことか。

「俺たちが狙うのは・・・」人差し指を向けて言った。

「あっちだ」ベンチを指差した。

「何をみるの?ベンチじゃわかんないじゃん」

「いや、鈴ならわかるよ。瑠をみつけるんだから」

「プレイ見なきゃ、わかんないでしょ」

「うん。それが見られるんだよなー」

あ、そっか。

「長い時間じゃないから見逃すなよ」

「了解」

ハーフタイムだ。

どちらのチームもベンチから控えの選手が出てきてボールを蹴り始める。

この時間に誰がどんな準備をするのか。

控えでもギラギラした瑠のような熱を持ってる子。

いる。

「私が出たら、必ずゴールしてやる!」

「私を使え!」

アップを見てても伝わってくる。

アップって、こんなに性格出るんだ。

「あの子」

「赤の25番?1年生だな。うん。いい」


私はメモをとった。

なぜ、いいと思ったのか。

長くサッカーを見てきた直感を信じてピックアップした。

試合後、名刺を持って監督に挨拶に行く。

名刺は律が作ってくれた。私はスカウト担当の肩書もくれた。


「プロ契約の選手を探しています。25番の選手と話をさせてください」

私たちがスカウトするのは、まだ、進路の決まっていない1年生。だが、監督は怪訝な顔をする。控えとはいえ大事な生徒だ。胡散臭い奴らは近づけられないよね。

そこで律が切り札を出す。

「今年、このチームに入団が決まったこの子、うちのチームからスカウトされたんです」

スマホの画面を見せた。


新しいチームのHPに瑠の引き攣った笑顔とプロフィールが載っていた。


最初見た時は、チームみんなで大笑いをした。でも、これは効く。「彼女の代わりのストライカーを探してるんです」

「彼女は・・・うちの時期エースです」

「そうですよね。私たちもそう思ってます。でも、うちにくれば、即エースです」

・・・・・

「保護者に名刺だけでも、お取り継ぎください」

名刺を渡した。


「鈴、お前、強気だなw」

いやードキドキしたよ。私、スーパーのレジ打ちしかしてこなかったんだもん。

駆け引きなんてディフェンス以外にやったことない。

でも、サッカーを続けたい。試合がしたい。勝ちたい。


試合終了後のピッチ。

負けたチーム。

一人の子が

ピッチを整備してる。

誰にも言われず。

気になる。サッカーを大事にしてるのが伝わる。

リスペクトが伝わる。

悔しさが伝わる。

「帰る?」

と律が聞く。

あの子。

「え?」

「話してくる!」

「おい!」

走り出しちゃった。

私も、私自身を止められない。

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