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ドラゴンマスクより「私・鈴(りん)」  作者: 美憂


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どこでサッカーしたっていい

息子はいつまで経っても息子で、

いつまで経っても成長は見える。

でも、大人になってからの成長は「当たり前」じゃない。


Jリーガーの息子が、ちょっとJリーガーらしくなってきた。

ちょっとってのは言葉通り「ちょっと」なんだけど、彼のじじばばからすると「すごい!」らしい。

ただ、残念なのは常に我が家がサポートし続けている、あのチームの選手ではないと言うことだ。

息子についての唯一の残念ポイントと言える。

うちは、あのチームのユニフォームしか買わなかった。

試合の日はテレビの前。

負ければ夕飯は静か。

勝てばスーパーの半額のお寿司でもごちそう。

だから、

違うユニフォームを着ている息子を見るのは、

まだ少し慣れない。


野球選手もサッカー選手も「好きなチーム」以外に入るってどんな気持ちなんだろう。プロになれるだけですごいわけだから、どこでもプロになるには変わらないって思えばいいんだけど、我が家の場合、本人だけはそう思ってる。


息子は、ユースを受ける年に第一希望のクラブからは不合格をもらった。それが我が家の第一志望のクラブだったわけで。本人は高校サッカーをやりたかったらしいので、他のクラブを受けるまでもなく、高校サッカーを選択した。

家族も他のクラブには興味もないため、高校から推薦入学の話をもらった時は高校生になれたことに大喜びだった。私もじじばばも高校サッカーを知らないので、高校名を聞いて「おー」と笑って拍手したものの「入学金、授業料免除」への拍手が8割だった。なんだか高校サッカー界隈では有名校らしく、のちに全国大会に連れて行ってもらった時には、家族全員、高校サッカーに魅了されていた。本人が行きたい学校に行けるなら、それでいい。君は知らんだろうが、うちはそんなに貧乏ではないんだよ。君の父の一家が私に残してくれたものは、全て、息子よ、君に使おうと思ってたんだから。遠慮なく海外留学してくれてもいいんだぞと思っていたんだけどね。でも、決して私からは言わなかった。言ってやらなかった。決めるのは自分だからね。

そんな私の脳内計画とは、関係なく、我が息子は大学もサッカー推薦で行くと言い出す。


推薦で大学。

……

なんて親孝行。

いや。

とことんエコな息子。

結婚資金にお金は取っておけばいいかと思ったけど、浮いた話もありゃしない。

サッカーバカは、血統書付きだからね。


そんな我が息子が、J3に降格した時、彼は控えのゴールキーパーだった。

イマイチな位置であることはわかる。

でも、自分で決めてプロを続けてるんだから、親がどうこう言うことじゃない。どこまでプロとして続けるかは本人次第だ。


そんな中、私が密かにサッカーを始めると息子が(本人はこっそりしてるようだが)ドラゴンマスクなんてだっさい名前で、いろいろ助けてくれた。

本当に感謝してる。

サッカーを楽しむには、体のメンテナンスや生活を正す必要があることも教えてくれた。

私のサッカーに寄り添ってくれた。

高校の時、公園で初めてサッカーを教えてくれたのは、あの子のとうちゃんだった。それを思い出した。


プロでやっていくことは簡単じゃない。

自分だって、自分のことで精一杯だろうに。

あいつも怪我のリハビリの中、私にサッカーを教えてくれたんだ。

話はそれたけど・・・

そのドラゴンマスクこと我が息子のクラブが1年でJ2に昇格した。その間、スタメンで試合に出ることも増えていった。


ここ数年、自分がサッカーをすることで精一杯だったけど、気がついたら息子が日本代表に近づいていたのだ。J1に昇格すれば、可能性も見えてくると、じじばばは興奮していた。

あざだらけで頑張っている娘には目もくれないで。


応援って力になるよね。

ドラゴンマスクには感謝してる。

私は、

ドラゴンマスクがどこでサッカーをやろうと応援する。

そう思っていた。

……

あの電話が鳴るまでは。

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