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第54話 実戦テスト①

再び宝殿達のシーンに。

 銀色のサソリとロブスターを何体か倒し

たあと、回廊の空気が、少しだけ変わった。


「……静かすぎないか」


 牛久が、槍の柄を軽く床に突く。

 さっきまで聞こえていた、カサカサという小さな足音が、ぴたりと止んでいた。


「サソリもロブスターも、音で分かりやすかったのにな」


 延徳がぼそりとつぶやく。


 宝殿は一歩下がった位置から、前方を見つめた。


石柱が並ぶ回廊の先に、少し広くなった空間がある。


「……開けた場所、だね」


「嫌な予感しかしねぇ」


 二階堂が、メイスを肩から下ろして構え直した。


 広間の入口で、五人は自然と足を緩める。

 牛久と延徳が左右に開き、宝殿と川端が中央後ろ、二階堂が少し前に出た位置。


「行くぞ。いつも通り」


 川端の声に、それぞれが短くうなずいた。


 広間に足を踏み入れた瞬間、空気の温度が一段階下がった気がした。


 壁際には、古びた銀色の鎧がいくつも並んでいる。

 人型、大小の様々な剣を構えた兵士の姿。

 だが、どれもひび割れ、ところどころ欠けていた。


「全部、ただの飾り……か?」


 二階堂がメイスの先で、手前の鎧を軽くつつく。

 鈍い石の感触だけが返ってくる。


「動くやつが混じってるパターンだと思ってたけどな」


 牛久が、周囲をぐるりと見渡す。


 そのときだった。


 ギィ……と、金属が擦れる低い音が、広間の奥から響いた。


「来たな」


 川端が、すぐに声を引き締める。


 奥の影から、何かが一歩、前に出た。


 中身は見えない。

 だが、確かに自分の足で、石畳を踏みしめている。


「……中身、入ってんのか、あれ」


 二階堂が眉をひそめる。


「分からん。ただ、“打って確かめる”にはちょうどいい相手だな」


 延徳が、ハルバードの刃をわずかに傾けた。


 動く鎧は、両刃の剣を腰の位置で構えたまま、ゆっくりとこちらに向かってくる。

 さっきまでのサソリやロブスターとは違う、重たいリズム。


「射程はこっちが上。先に触るのは槍とハルバードだね」


 宝殿が短く言う。


「二階堂は突っ込みすぎるなよ。

 一発目の手応え見てから、殴りに行け」


「分かってるっての」


 言いながらも、二階堂の握るメイスには、ほんの少しだけ力がこもる。


「牛久、最初の一撃頼む」


 川端の合図に、牛久が一歩前へ。


「了解」


 鎧との距離が、五メートル。

 相手が剣をわずかに上げた瞬間、牛久の槍が先に伸びた。


「──はっ!」


 狙いは、胸元のプレートとプレートの隙間。


 だが、槍の穂先は、重たい金属音を立てて弾かれた。


 手に伝わる反動に、牛久が目を細める。


 続けざま、延徳のハルバードが横から飛び込んだ。


 狙いは膝関節。


 ガン、と鈍い音。

 動く鎧の片足が、わずかによろめく。


「関節部は通る。完全な鉄塊じゃあねぇ!」


「じゃ、オレの出番だな」


 二階堂が、一歩踏み込んだ。


「待て、まだ──」


 川端の制止が終わる前に、鎧の剣が振り下ろされる。


 重たい一撃。

 二階堂はギリギリで避けようとするも、叩きつけ、押し込むような攻撃にバランスを崩され、別の鎧からの攻撃を受けてしまう。


「痛ってぇな……このっ!」


お返しとばかりに、二階堂がメイスを鎧の脇腹に思い切り叩き込む。


 ガンッ。


 今までの敵とは桁違いの手応え。

 だが、打ち込んだ感触は、確かにあった。


「……ヒビは入ったな」


 延徳が、目を細めて呟く。


 鎧の脇腹の一部が、わずかにへこんでいる。


「打撃は効く。

 ただ、適当に殴ってるだけだと、こっちのスタミナが先に切れる」


 川端が、すぐさま状況をまとめる。


「関節と、打撃の通りやすいとこに絞る。

 牛久は膝と足首。延徳は腕と首元。

 二階堂は、俺らが止めたところにだけ叩き込め」


「おう。最初からそう言えよ」


二階堂がニヤリと笑い、メイスを構え直した。


 動く鎧が、再び剣を構える。

 今度は、わずかに踏み込みが増している。


「宝殿」


 川端が、後ろを見ずに声をかける。


「二階堂に回復くれ」


「分かった。『クリエイト・ポーション』」


 宝殿が短く詠唱し、二階堂の身体に、淡い光を流し込む。


 ダメージが回復し、二階堂が肩を軽く回す。


「──第二ラウンドな」


 川端の一言とともに、五人は再び動き出した。

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