第33話 資源の活用
「いったん、ここで体勢立て直すぞ」
蟻の死骸をどかし、比較的マシな足場を選んで、短い休憩が始まった。
「刺されたとこ、ヤバそうなのは?」
湊が見回すと、あちこちから「ちょっとヒリヒリするだけ」「大丈夫」という声が返ってくる。
とはいえ、その「ちょっと」が積もれば命取りになるのは、もう全員が理解していた。
「回復枠、無駄撃ちはできないから、本当にやばいとこだけ見せて」
そう言って順番にパナシーアをかざしながら、湊は視線を下げる。
とはいえ、その「ちょっと」が積もれば命取りになるのは、もう全員が理解していた。
「回復枠、無駄撃ちはできないから、本当にやばいとこだけ見せて」
そう言って順番にパナシーアの薬瓶をかざしながら、湊は視線を下げる。
自分のジャージの太ももあたりや、その周りに見事な穴が空いていた。
「……っ」
慌てて裾を引っ張って隠すが、布自体がところどころ薄くなっていて、あまり意味はない。
少し動けば、またどこかが破れそうだ。
「東金、そのジャージ、思ったよりやられてね?」
後ろからひょいと覗きこんだ声に、湊は肩を跳ねさせた。
振り向くと、加島がニヤニヤした顔で立っている。
「見んな。というか、見えんな」
「見えてるというより、“見えそう”なんだよなあ、これが」
加島は楽しそうにジャージの裾を指さした。
「スライムって服も溶かすのかよ……しかもピンポイントでえげつねえとこ」
「笑い事じゃないからな?」
「これは……今こそあの衣装達を有効活用するトコだろ」
「あ? 何言ってんのお前」
「だってさあ、お前、もう見た目ほぼ女子だし。サイズ的にも、多分一番合うの東金だろ。動きやすさ的にもさ」
加島は真顔と冗談の中間くらいの表情で続ける。
「ジャージはスライムにやられた。替えの男子制服は数が足りない。
だったら、余ってる資源を有効活用しようぜ、って話」
「資源って言うな」
湊は即座に突っ込んだが、周囲から上がった苦笑混じりの空気が、それを完全な冗談として流しきれない。
「……まあ、冗談半分だけどさ」
「半分は本気なんだな」
加島は肩をすくめる。
「食料も服も、もう余裕ないのは事実だろ。
誰が何を着るか、何をどこまで削るか、ちゃんと決めないとマジで詰むぞ、この階層」
その現実だけは、誰も否定できなかった。




